ライ・クーダーとの出会いにより
世界的にも知られるようになった
ハワイアン&
スラック・キー・ギターの
巨星ギャビー・パヒヌイの傑作

ライ・クーダー、
ハワイアン(ギャビー)のギターに参る

そんな中で、本作も世に出た。ライ・クーダーがハワイアンのミュージシャンとレコーディングした〜うんぬんと雑誌に紹介されていたのだ。よほどのライ・クーダー好きでなければ目に留めないような地味な記事だったと思う。正確に言えば、ギャビー・パヒヌイのハワイアンバンドのレコーディングセッションにライ・クーダーが自分のブレーン(ニック・デ・カロ/ストリングス、ミルト・ホランド/ドラム)とともに参加したというもので、ライたちが参加を願い出て実現したセッションだった。
※そもそものきっかけはライの妻,スーザン・タイトルマンがハワイ旅行の土産に買って帰ったアタ・アイザックとギャビーのレコード『Two Slack Key Guitars』をライが聴いたところ、ひっくり返りそうなくらい驚き、すぐにハワイ行きを計画したというもの。

ライ・クーダーについて触れている余裕がないので割愛させていただくが、ライはアメリカ音楽のルーツ(ブルース、カントリー、フォーク…etc)や近接するボーダーミュージック(テックス・メックス)、それから他国の、特に弦楽器を使った音楽に関心を持つ人で、まず現地におもむいてセッションをする、教えを請うという礼節を重んじるあたりが並のギタリストとは違う。ちょうど、ギャビーと出会ったあたりから、メキシコをはじめ、ハワイや日本(沖縄)、さらにはインド、キューバへと続く彼のフィールドワークが本格化している。

そう、ライがハワイにおもむいて…という雑誌のふれ込みで私はギャビーのことを知ったのだが、同じ頃、ハワイ音楽、ハワイ出身のバンドにスポットライトを当てた番組(ラジオ)がオンエアされ、まずそれを聴いた。紹介されたのはカラパナ、それからセシリオ&カポノという、ハワイアンとメキシカンのデュオだったのだが、音楽的にはどちらかというと彼らはサーフミュージック 、AORに類する音楽として受け止められていた風で、私にはピンとこなかった。先に挙げた75年に発売されたロック名盤群を思い浮かべればわかると思うが、それらに比べるとやっぱりハワイのバンドはゆるいなと思うわけだった。ところが「こういうのもあります…」と、半ばオマケのようにかけられたのがギャビーのアルバムで、「ライ・クーダーが…」という紹介のされかただったと思う。一気に期待感が高まった。で、どの曲がかかったのか覚えていないが、アコースティックによるストリングス主体のバンド・サウンドで、洒落てるなと思った。それが最初の出会いだった。

金銭的な余裕がない当時の私は、結局、その時はレコードを買うところまでには至らず、というよりはライ・クーダーの『チキン・スキン・ミュージック(原題:Chicken Skin Music)』('76)が発売されたので、そちらを優先してしまった。ただ、現在でもライの代表作の一枚であり、異文化圏の音楽とコラボレーションをすることの意味を問いかけてくるこの名盤に、ギャビーらハワイのミュージシャンも参加し、名演を繰り広げている。このアルバムからギャビー、あるいはハワイ音楽に接近していった方もおられるかもしれない。
※アルバム『チキン・スキン・ミュージック』でギャビー・パヒヌイは「黄色いバラ(原題:Yellow Roses)」「クロエ(原題:Chloe)」の2曲でスティールギターを弾いている。2曲ともハワイアンではなく、米国のカントリー(ハンク・スノウ)、古いスウィングジャズを演奏しているところが面白い。ギャビーのスティールギターの上手さがとにかく素晴らしい。今回のメインである『ギャビー・パヒヌイ・ハワイアン・バンド Vol.1』のレコーディング時の合間をぬって録られたものだろうか。

OKMusic編集部

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