秋と言えばバラード! 切ない感情を
    刺激する5曲

    秋の足音がひたひた近づいて来ると、聴きたくなるのはバラードだ。人それぞれ、お気に入りのバラードがひとつやふたつあるだろう。個人的にバラードは物語性と湿り気を感じさせてくれるものが必須条件だ。切ない感情の時、やる気がどうしても起きない時…そっと側に寄り添ってくれる楽曲を求めてしまう。ただし、静かでスローテンポな曲調だけがバラードではない。物語性と湿り気を備えつつ、悲しい気持ちを煽ってくれる楽曲であるなら、曲調の静けさやテンポ感は必須条件ではない。そんな5曲です。

    「ギブス」('00)/椎名林檎

    最近また思い返したかのように、椎名林檎をよく聴いている。特に最初のソロ3作品は懐かしさもあり、手を伸ばす機会が増えた。中でも好きなのは2ndアルバム『勝訴ストリップ』だ。おそらく彼女の音源の中でもダントツで再生回数は多い。もう14年前の作品だ。けれど、ここに描かれた感情は微塵も風化していない。聴く度にドキッとする。作品の根底や上空に、流れ漂う“切なさ”にいつも心を奪われる。とりわけ、「ギブス」は切ない。バラードと呼ぶには激しく、ポップスと言うには濃すぎる感情の高ぶりに胸を締め付けられる。特に冒頭から先制パンチを浴びせる歌詞は強烈だ。《あなたはすぐに写真を撮りたがる あたしは何時も其れを厭がるの だって写真になっちゃえば あたしが古くなるじゃない》という名フレーズに男女問わず失神KOされた。

    「366日」('08)/HY

    旬な話題で言うと、加藤ミリヤがHYの仲宗根泉とコラボしたニューシングル「YOU…feat.仲宗根泉(HY)」が今月発売されたばかりだ。その仲宗根泉は、これまでHYで珠玉のラヴソングを作詞作曲する"バラード職人"として、特に同性の女性ファンから熱い熱い支持を得てきた。「あなた」「Song For…」「NAO」など、女性の本音を掬い取った歌詞とセンチメンタルな曲調はとても評価が高い。そして、この「366日」はTVドラマ・映画『赤い糸』主題歌に抜擢され、お茶の間レベルに浸透した名曲である。365日では到底収まらない女性心を綴った歌詞を含め、仲宗根ワールド全開で、後半のファルセットヴォイスにはゾクッとさせられる。また、鍵盤、サックス、ストリングスも“あなたを一途に思う気持ち”を劇的に盛り上げている。

    「Angel」('87)/AEROSMITH

    ドラッグ漬けの日々で、死に体だったAEROSMITHの復活作となった9thアルバム『PARMANENT VACATION』。BON JOVIなどを手がけるブルース・フェアバーンをプロデューサーに迎え、全米アルバムチャート11位を記録する躍進を見せる。ある意味周到に作られた“ヒット作”という位置付けになるかもしれないが、狙った通りに好セールスを生み出したのだから、恐れ入る。また、外部ソングライターも起用し、先述したBON JOVIの「Livin' On A Prayer」など数多くのヒット曲を生み出したデスモンド・チャイルドとタッグを組んだ曲が「Angel」だ。砂糖をたっぷり振りかけた大甘のバラードだが、心のヒダを搔きむしる哀切なメロディーは絶品。「I Don’t Want To Miss a Thing」(映画『アルマゲドン』)より、「Angel」のほうが好きです。

    「November Rain」('91)/GUNS N' RO
    SES

    デビュー作『APPETITE FOR DESTRUCTION』は文句ナシの代表作であり、「Paradice City」を筆頭に泣く子も黙る名曲がずらり揃っている。ただ、その後に前代未聞の『USE YOUR ILLUSION I』『USE YOUR ILLUSION II』とアルバム2枚に分けて同時リリースされたこの作品の衝撃はまた違う意味で凄かった。当時、“なぜ1枚にまとめなかったのか?”など、音楽専門誌でもいろんな意見が飛び交っていた。けれど、何度聴いても飽きない、エバーグリーンな輝きを放ち続けている。抑えの効かない創造力が湯水のごとく吹き零れているからこそ、デビュー作にはなかった余白が曲調に生まれて、こちらの想像力を刺激して止まない(表題通り!)。『II』収録の「November Rain」は9分近い長尺曲で、曲構成やストーリー、映画のようなMVといい、これほど完璧なバラードはない。超名曲!

    「The Messiah Will Come Again」('72
    )/Roy Buchanan

    あのEric Claptonが絶賛し、Jeff Beckは名曲「悲しみの恋人達」をRoy Buchananに捧げたという逸話を持つ“世界最高の無名ギタリスト”と言えばこの人だ。もともとスタジオ/セッション・ミュージシャン上がりゆえ、豊富な経験に裏打ちされたテクニックは折り紙付き。あらゆるジャンルに精通した表現力は伝説のギタリストの名に値する。その中でも「The Messiah Will Come Again」は、極上のインストゥルメンタル・ナンバーだ。泣き、泣き、泣き、そして、また泣きと言えるギターの音色は思わず勘弁してくれ!と叫びたくなるほど。その咽び泣く名演は惚れ惚れするほどカッコ良い。いや、泣けてしょうがない。こんなに色っぽくて、見てはいけない心の奥底まで曝け出した、繊細なギターフレーズに未だ出会ったことがない。

    著者:荒金良介

    OKMusic編集部

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