Editor's Talk Session

Editor's Talk Session

【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
『POWER TO JAPAN 2021』に見る
ロックの現場主義者の想い

音楽に関するさまざなテーマを掲げて、編集部員がトークセッションを繰り広げる本企画。第25回目は2011年の東日本大震災時に制作されたチャリティーソング「POWER TO JAPAN」を10年の歳月を経てリメイクした『POWER TO JAPAN 2021』にスポットを当て、同プロジェクトを立ち上げたHEREから尾形回帰(Vo)と、参加アーティストからアルカラの稲村太佑(Vo&Gu)とSaToMansion(以下、サトマン)の佐藤和夫(Vo&Gu)を迎え、リメイクした想いや楽曲制作のエピソードなどを語ってもらった。
【座談会参加者】
    • ■尾形回帰(HERE)
    • ハイテンションという名の“熱狂”を追い求めるロックバンド・HEREのVo。2021年に『POWER TO JAPAN 2021』を発売。ソロプロジェクト尾形回帰+現象としても活動中。
    • ■稲村太佑(アルカラ)
    • 2022年で結成20周年を迎えるアルカラのVo&Gu。地元・神戸では主催サーキットフェス『ネコフェス -KUDAKENEKO ROCK FESTIVAL』を毎年開催している。
    • ■佐藤和夫(SaToMansion)
    • 岩手県出身、実の四兄弟バンド・SaToMansionのVo&Guであり作詞作曲を担当。2021年上演の舞台『ROOKIES』のテーマ曲やNHK盛岡放送局のEDテーマなど、楽曲提供も精力的に行なう。
    • ■石田博嗣
    • 大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP's&OKMusicに関わるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。
    • ■千々和香苗
    • 学生の頃からライヴハウスで自主企画を行ない、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP's&OKMusicにて奮闘中。
    • ■岩田知大
    • 音楽雑誌の編集、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP's&OKMusicの編集者へ。元バンドマンでアニメ好きの大阪人。

10年で新たな仲間も増えたから、
一緒に始めたいと思った

千々和
“ロックの現場主義”を掲げるHEREがコロナ禍を受けて立ち上げた『POWER TO JAPAN 2021』は、2011年の東日本大震災の復興支援として制作した「POWER TO JAPAN」を10年振りにリメイクし、そのCD+DVDの売り上げを『Music Cross Aid ライブエンタメ従事者支援基金』に寄付するというプロジェクトですが、まずはコロナ禍に入ってからそれぞれのバンドがどのような影響を受けているのかについて教えてください。
尾形
この3人にも共通して言えることだと思いますが、ライヴが思うようにできなくなったことが一番大きな影響だと思います。コロナ禍に入って気分的に落ち込んだ人もいるし、僕も数日悩みましたが、もともとスーパーポジティブ人間なので、“今できることをやっていこう!”と配信の勉強をしたり、楽器や歌の練習をしこたましたりと、頭を切り替えて乗り越えてきました。あと、通信販売を頑張ったりね(笑)。そのおかげで通販がうまくなりましたよ。
佐藤
僕たちも基本的には尾形さんと似たところがありますね。バンドのモチベーションにも影響したのは『ARABAKI ROCK FEST.20th×21』への出演が決まっていたけど、開催中止になったことでした。ファンの方の力も借りて投票式オーディションを勝ち進んだ結果、出演が決定して“よっしゃ! 決まった!”となったのに、すぐコロナ禍に入ってしまって。2020年は延期だったけど、2021年は中止になったから出演できず、他のライヴもなくなってしまったから、モチベーションが下がってしまったんです。周りのバンドマンも辞めてしまったりして、仲間がバタバタと倒れていくのを見て僕もネガティブになっていたけど、そんな中でHEREが『ハイテンションフェス2021』(2021年2月@duo MUSIC EXCHANGE、TSUTAYA O-Crest)を開催しているのを見て元気をもらいました。
尾形
あのフェスもいろいろな人に協力してもらいましたね。開催直前に出演者に意思確認をしたんですけど、太佑さんだったり、サトマンだったり、みんな思っていた以上にやる気満々でいてくれたんです。それが開催を決意できた力になりました。
千々和
会場の雰囲気もとても良かったです。
尾形
バンド同士が対バンすることも久しぶりでしたからね。ロックバンドはコロナ禍に入ってからワンマンライヴが多くなっていたけど、対バンにはお互いのステージを観て刺激を受けて、よりいいライヴができるようになるという相乗効果みたいなものがあるんですよ。2020年はそんな相乗効果を受ける場が本当に少なかったので、そういう意味でもみんなが集まって熱量を共有したい想いがあっての開催だったんです。なので、『POWER TO JAPAN 2021』の根本にあるものは『ハイテンションフェス2021』と同じですね。“人と一緒に何かを作り上げたい”という想いがありました。
千々和
アルカラはコロナ禍の活動に関していかがでしたか?
稲村
尾形くんが配信をやったりと新しいことに挑戦していたのと同じで、いろいろと勉強するきっかけになりました。全員にとって共通の出来事だったので、嫌な言い方に聞こえてしまうかもですが、本当にバンドがやりたいのかをコロナ禍に入ることで見極められたと思います。“ライヴができないから仕方ないな”と思うんじゃなくて、尾形くんや佐藤くんも含めてもがいている奴らが今ここにいるのでね。コロナ禍の時期があるからこそ次に向かえる。
石田
もがくというのは“バンドをやっていくぞ”“音楽をやり続けるぞ”という想いの裏返しですもんね。バンド側がライヴができなくなった時にどうするかということで配信を始めたと思いますが、それを受け止める側のファンやリスナーも音に飢えていたでしょうし。
尾形
そういう意味では、それぞれの個性が出ましたよね、サバイブの仕方という面でも。みんながどうしていいか分からないからこそ、それぞれやり方が違うっていう。でも、それは本来あるべき姿なのかもしれないとも思ったりして。
石田
現状を打破するために行動を起こすことが大事でしたしね。
千々和
“2021 ver.”としてリメイクされた「POWER TO JAPAN」という楽曲は、もともと東日本大震災の時に生まれた曲ですが、当時はどんなことを思っていましたか?
尾形
2011年に作った時も“どうしていいか分からないけど、何かやらなきゃいけない! 音楽で何かしたい!”という状況の中で、周りに同じような考えを持った方がたくさんいたんですよ。“だったら、俺が旗を振るからみんなでひとつのことをやろうよ!”というところからこの曲を作りました。ただ、曲として約10分とボリュームもあるし、すごく壮大な曲になったから、ライヴで歌う機会も少なくて…。楽曲のパワーに当時のHEREは負けていたんじゃないかという印象もあったんです。その結果、ライヴでもあまり演奏することがなくなってしまい、いつかこの曲をリメイクしたいと毎年言っていたけど全然実現できずで。その想いもある中で、コロナ禍の状況が楽曲と結びついて、このタイミングしかないと思いました。少しアレンジをして発表することは決まっていたんですけど、悲しいことに10年前にレコーディングに参加してくれた人たちがほとんど卒業してしまっていて(苦笑)。今回のレコーディングで10年前と変わらないのは、キーボードで参加してくれたハジメタルだけなんです。でも、この10年で新たな仲間もたくさん増えたので、その仲間たちと一緒にプロジェクトを始めたいと思ってスタートさせました。
石田
10年前の『POWER TO JAPAN』をおふたりは見ていたんですか?
佐藤
僕は以前のバンドをやっていて、当時はHEREと絡んではいなかったですね。
尾形
完全に知らない状態だったと思います。太佑さんはちょうど出会ったくらいでした。
稲村
そうそう。だから、まだ参加するというほど友達にはなっていなかった。
石田
“HEREが何かやってるぞ”くらいは知っている感じ?
稲村
それはもちろん知っていましたし、その時から思っていましたが、HEREはゼロイチで挑戦するタイプの人やなと。どこにでもいるバンドやと思っていたら、どこにもいないバンドだと知りましたね。音楽の表現もそうですが、活動のアピールの仕方もカッコ良いのかカッコ悪いのかも分からんけど、“なんかいいな!”という感覚でした。でも、それを本気で面白いと思ってやっているから唯一無二になっていくし、僕はそういうのがバンドやと思うんですよね。
石田
まず“自分たちでやってやろう!”という気持ちがあるんでしょうね。
稲村
そうですね。だから、HEREが何かをやる時にはだいたい誘ってくれるんですよ。一緒に対バンの日があったら、前々日くらいに尾形くんから電話がかかってきて“太佑さん、バイオリンを弾いてくださいよ”みたいなところから始まってね。彼は人使いが荒いんです(笑)。
(笑)。
石田
尾形さんはすごくバイタリティーがあるから仲間意識も強いだろうし、いろんな人を巻き込んでいくんでしょうね。メイキング映像の中で参加アーティストの佐藤ノアさんがこのプロジェクトを『週刊少年ジャンプ』みたいと言っていたけど、尾形さん自身が『週刊少年ジャンプ』に掲載される漫画の主人公みたいだし。逆境に立ち向かっていくようなね。だから、いろんな人を引き込んでいくのも分かりますよ。
佐藤
確かに『週刊少年ジャンプ』のキャラクターみたい。
尾形
“追い込み漁”って言われてます(笑)。
稲村
そうそう。“うん”って言うしかないところまで追い込んでくるから、“引き込む”というよりも“追い込む”ですね(笑)。
尾形
人生はネタ作りですからね。あとで振り返った時に“バカやってたな~”という出来事をできる限り増やしたいと思っているんですよ。
石田
“人生はネタ作り”って名言ですね!
尾形
いや~。失敗しても、うまくいっても、後で思い返した時にみんなで笑い合えたら楽しいと思うので。

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着