Editor's Talk Session

Editor's Talk Session

【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
未曾有のコロナ危機、
ライヴハウスは何をすべきか?

できる人たちができることを
一生懸命にやるしかない

石田
若者の意見はどう?
千々和
私はライヴハウスがきっかけで音楽が好きになったので、今の“行けない”という状況になって、改めて自分がライヴハウスが好きなんだって実感してるんですね。そういう人ってたくさんいると思うんですよ。でも、今後1年くらいライヴハウスに行けなくなって無料配信が中心になり、サブスクを解禁してなかったアーティストが解禁すると、それこそ音楽が無料で楽しめるものになる…選択肢として有料のものもあってほしいと思うんですけど、やっぱり一般的に広がるのは無料のものになるんですよね。
二位
有料にできるかどうかには難しさもあって、例えばうちの場合は系列内のホールクラスのバンドに生配信出演してもらえれば、すごく注目されると思うんですよ。だけど、それはもう社内の問題だけじゃなくて、レコード会社が絡んでくることだし、マネージャー的にももっとクオリティーの高い映像を観せたいってなってくると思うんです。でも、篠たちのバンドは個人でやってて、そこそこ人気があるわけじゃない。それこそ家内制手工業みたいな動きでやってるんだけど、今後はチャンスが生まれてくると思う。言ってしまえば、大きな組織は動きにくくなるから、この状況は若い人はチャンスなんですよ。いろいろな契約もあって、“今ならこういうことをやれば面白い”というアイデアがあってもできないジレンマがあったりするよね。でも、そういうものに縛られていない若者にはチャンスがあるというか、この状況下だからこその新しいやり方なりを見つけてほしいと思う。で、それを一緒になってやりたいですね。
烏丸
なのに、この状況によってバンドの解散やメンバー脱退が増えてるっていうのはすごくショックです。
二位
これからも増えるでしょうね。俺ら世代で言うと、忌野清志郎さんやパンクロックの人たちって命懸けで音楽をやってたから辞める選択肢は絶対にないだろうけど、そこまでじゃない人たちは…
篠塚
この状況なら、辞めてしまう人もいるでしょうね。
二位
その気持ちも分かるんだけどね。
篠塚
ライヴができない、人と会うことも自粛されているからメンバーとスタジオで音を出すこともできない、レコード会社の人たちも自宅勤務でプロモーションがままならない…ってなってきたら、どう考えても、音楽という文化全体が縮小傾向にあるってことじゃないですか。でも、さっき烏丸さんが言ったみたいに、音楽ってこういう時に必要なものだと僕は思うんですよ。音楽って衣食住に関係ないものだから、今のような有事の時は必要ないと思う人もいるかもしれない、けど、メンタルな部分の、心の拠りどころになれたりすると思うんですよね。実際に僕はそうだった…僕はいじめられっ子だったから友達もいなくて、クラスの子の枠に入れなかった。まぁ、入りたくもなかったけど。そんな自分を救ってくれたのがロックとかパンクだったんです。だから、苦しい時に必要な音楽もあると思うんです。音楽は人の心に作用する…心を豊かにする。何が言いたいかって言うと、メンタルヘルスを舐めるなってことなんです。心ってめちゃくちゃ大切で、心が壊れると生きていけなくなる。
二位
そうなんだけど、音楽が好きだから心が動くわけで、音楽に興味のない人の心は動かないんだよ。音楽に興味のない友達に、俺がめちゃめちゃ感動した曲を聴かせても何とも思わなくて、そういう人って音楽よりもディズニーランドやスポーツ観戦のほうがワクワクする。でも、そういう人たちの日常の中には絶対に音楽があって…携帯の着信音だったり、それこそディズニーランドでも音楽は流れてる。それだけ音楽って訴えかける要素がいくらでもあるのに、音楽に興味がないって人がいるわけよ。俺はそこを動かしたい! そのためにはもっと大きな視野で、たくさんの人に興味を持ってもらうことが大事で、“YouTuberの映像をいっぱい観たけど、意外と音楽コンテンツも面白いね”ってなってくれないことには、無料だろうが有料だろうが未来がない。
篠塚
そうなんですけど、すでに音楽の文化自体は縮小し始めているのに、自粛しなきゃ感染させてしてしまう現状で、面白くする以前に音楽が活動ができないじゃないですか。まずは、“新しいかたちで、どうやって音楽をやるか?”だと思うんです。ライヴハウスもバンドも自粛する中で...
二位
あっ、うちも休業するよ。来週からね。ただ、期間は宣言はしない。宣言したほうが他人からの援助みたいなものは得られやすいと思うんだけど、“どうしてもやらせてほしい!”と言われたら店を開けたいと思ってる。でも、店を開けないってなると、今度は暇な従業員をどうするかってことが問題になるじゃないですか。例えば、“みんなで掃除するか!”ってなっても、それも悩むんですよ。電車に乗って店に来て、店を掃除したけど、その間に感染したらどうするのかってなるし。全員自宅待機にするのか、どうするのかって考えてる。でも、そんなミニマムなことじゃなくて、もっと視野を広げて物事を考えないと、音楽というコンテンツに未来がなくなる。それを一番懸念しているんですよ。そういう意味では、面白いものを作ることでチャンスを広げていくことが大事というか。それもうちの店だけじゃダメで、周りのライヴハウスもみんな面白くなって、下北沢全体が面白くなって、東京が面白くなって、“なんか、今、ロックシーンが面白いよね”って思われないとダメなんだと思う。
篠塚
それってライヴなりをやることが前提じゃないですか。それができない子たち…自粛を選択したバンドはどうすればいいんですか?
二位
いや、ライヴじゃなくてもできるはず。自粛? 家にいても何かできるでしょう。それなら攻めじゃないかな? それを今、みんなが探しているんだと思うよね。そして、どんな時代だって闘いに出る人と、防空壕にこもるような人の両方が必要で、両方いないと未来につながっていかないから否定はしないよ。そんな中で自分はアイデアを出して行動するほうを選ぶ。仲間たちとすったもんだしながら面白いものを競争しながら作ってて、コロナが終息した時に“やっぱり音楽っていいね”と思われるものになってたらいいなって。そもそも日本の社会風潮というか、大きなお金が動くところを守るために小さなところを締める図式って間違っていると思ってて。小さいところほど行動力や新しいアイディアがあるはずなのに、それさえ上から抑えられてしまうのであれば完全に立ち向かいたいですね。
篠塚
室さんはどう思ってます?
小さいライヴハウスとか、まだお客さんがあんまり付いてないバンドのほうが、この危機を打破しやすいと思いますね。そういうところから新しいものが生まれると思う。それこそ20歳そこそこのバンドが下北沢で強引にライヴをやったってところから火がついたり。それをうちの店でできるかって言ったら、状況的にできないですからね。だから、できる人たちができることを一生懸命にやるしかないのかなって。

OKMusic編集部

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