臼井孝のヒット曲探検隊~アーティスト別 ベストヒット20

臼井孝のヒット曲探検隊~アーティスト別 ベストヒット20

臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20
Vol.1 西野カナ

今回から始まった『臼井孝のヒット曲探検隊』。ここでは、総合的な見地から、アーティストごとのヒット曲を探してみたい。

ヒット曲の探し方には、1970年代~1980年代の『ザ・ベストテン』のように「レコードやCD/有線放送/ラジオ/はがきリクエスト」といった売上げとリクエストをミックスしたものや、2010年以降注目されている『ビルボード・ジャパン』のように楽曲のセールス、動画再生、Twitter、ラジオのオンエア、パソコンへの取りこみ等、様々なヒット要素を考慮したものなど考え方は多様だが、ここでは楽曲に対するモチベーションが高いと考える3要素に絞って、シンプルにヒット曲を見つけてみたい。これによりCDが爆発的に売れた1990年代も、ダウンロード文化が浸透した2000年代後半以降も、そして、今なお歌い継がれているという2010年代のカラオケヒットの現状も総合的に見てみようと考えている。ちなみに、それぞれの順位は以下のように決定した。
■CDセールス
オリコン調べの累計売上枚数
■ダウンロード
日本レコード協会が発表したシングル・ダウンロードのヒット認定の数字に、同点の場合はレコチョク年間ランキングを加味
■カラオケ
2016年の1年間の歌唱回数

各要素のTOP20に入った楽曲に、それぞれ「1位=20点、2位=19点、3位=18点、…、20位=1点」とポイントを加算し、3要素の合計で総合ヒットを見てみたい。
※2016年末時点でのランキングの為、2017年にヒットが出た場合は、その分が入らなくなるが、ヒット・アーティストの場合、区切るのは非常に難しいので、その点はご了承願いたい。

記念すべき第1回目は
西野カナをフィーチャー!

日本の音楽シーンでは、いつの時代も代表する女性ボーカリストが存在するが、2010年代の筆頭格と言えば、やはり西野カナだろう。彼女は1989年生まれの三重県出身で、2008年2月にシングル「I」でデビュー。当時は海外進出を目指していたようで、CDに先駆け日米同時の配信デビューし、ややハードなポップロック路線、そして同年秋にはシンディ・ローパーのジャパン・ツアーの前座を務めるなど、和製“アヴリル・ラヴィーン”風に展開したものの、CDシングルが週間TOP50にも入らず苦戦した。


しかし、翌年3月リリースの「遠くても feat.WISE」から一変、“切ない女性ボーカル×男性ラッパー”という前年の青山テルマが「そばにいるね feat. SoulJa」で開拓した男女コラボ路線を踏襲し、ダウンロードでは初の週間TOP10級のヒットとなった。続くシングル「君に会いたくなるから」や1stアルバム『LOVE one.』のリード曲となった「君の声を feat.VERBAL(m-flo)」にて、その繊細な歌声とキュートなルックスを武器に、切ないラブソング路線を確立。初期シングル6作を収録した同アルバムは、累計20万枚を超えるヒットとなった。
ここから彼女の快進撃が始まり、切ない恋心や女の子同士の友情など、等身大路線を追求し、翌2010年の「会いたくて 会いたくて」ではレコチョク年間ランキングの1位に躍り出た頃から、“ケータイ世代の歌姫”と呼ばれるようになり、ダウンロードではミリオンヒットを連発。2011年にはラテン風のシングル「Esperanza」、2012年にはチアガール風のパワーポップ路線の「GO FOR IT!!」など、さらに作風を広げていった。


2013年にはソニーのお家芸(?)となっている2枚同時発売形式のベスト盤『Love Collection ~pink~』『Love Collection ~mint~』を発表、セールスも同年代の女性ソロの中ではトップクラスだったものの2作の各売上げは30数万枚と、2010年の2ndアルバム『to LOVE』の70万枚超をピークに、やや落ち着いてきていた。


しかし、2014年にシングル「Darling」を発表し、彼女の第二章が始まったと言えるだろう。ここから翌年の「もしも運命の人がいるのなら」、「トリセツ」、さらに2016年の「あなたの好きなところ」と、従来の切なさではなくコミカルなテイストを盛り込んだ等身大路線の歌詞で、共感を得つつも共感されない層からも敵対視されない絶対的な存在となった。2016年の「あなたに好きなところ」が第58回日本レコード大賞を受賞したのは、累計3万枚余りの単独の作品評価ではなく、ここ数年の音楽市場への影響力の高さだと筆者はみている。


さらに、2017年には、平成生まれの女性ソロアーティストとしては初となる東京・大阪でのドーム公演を成功させる(「平成生まれ」「女性」「ソロ」という制約は、えらく細かいなぁというツッコミがあるかもしれないが、それだけ「00年代以降デビュー」の「女性ソロ」がヒット受難の時代に入っている、というふうに捉えていただきたい)。また、同年11月発売の7thアルバム『LOVE it』では、ここ数年のコミカルな作風に加え、演奏もメッセージもシンプルなラブ・バラードの「手をつなぐ理由」や、洋楽ガール・ポップのファンをも取りこめそうな「Girls」など、さらに作風が広がっている。


2018年にはデビューまる10年となる西野だが、女の子が女性へと変化していくど真ん中の時期にいったいどういった楽曲が支持を集めているのだろうか。

OKMusic編集部

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