「臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20」
ネオ・フォーク系のパイオニア、
ゆずのヒットを探る
人気が急増し、
定期的な路上LIVEを終了させることに
1990年代の前半から半ばに向けて、小室哲哉プロデュースによるダンスミュージックや、ビーイングによるタイアップの要請に強烈にマッチングしたキャッチーなJ-POPが大きなブームとなりやがて一段落しようとしていた頃、それらとは異なるナチュラルな魅力を持つ彼らが1998年にブレイクしたのはいわば必然だったと言えよう。
ゆずは210代後半から20代ならではの恋愛や夢への葛藤をテーマにした歌詞や、アンプラグドな演奏や若さあふれるメロディー、そして何より路上で鍛えた説得力のあるボーカルやハーモニーで、それまでとは異なる音楽性が一気に注目された。その後19(ジューク)やコブクロ、さらにはソロでも森山直太朗がブレイクしていったのは、ゆずが最初にネオ・フォーク系のトビラを開いたことが大きいだろう。
1998年のブレイク以降、1999年にはシングル5枚を発売するなど、アイドル顔負けの怒涛のリリースで攻め(この頃の北川の声の涸れ方が可哀想になるほど如実)、2001年には二人だけで東京ドーム公演を成功させるまでに。ミニアルバムやLIVEアルバムも発売するなど、LIVEや手作り感を大事にするバンドであることもアピールしつつ、それらとは対照的に、地上波TVへの出演は殆どなかった。実際、この頃は、雑誌やFM、衛星波の音楽チャンネルなど、音楽ファンが好む媒体しか露出はなかったように思う。
商業性と音楽性の絶妙なバランスで、
さらに幅広い層に人気が浸透
また同じ頃、2004年の「桜木町」や「栄光の架橋」では松任谷正隆をアレンジャーに迎えたり、2007年のシングル「春風」では葉加瀬太郎がバイオリンで参加したりと、様々な音楽プロデューサーやミュージシャンとのコラボレーションも活発となる。そのラインナップは小田和正、松任谷由実、キマグレン、蔦谷好位置、前山田健一、GReeeeN、更には坂本九の「見上げてごらん夜の星を」をカバーするなど、実に幅広い。これは、彼らの音楽が元々それだけ親しみやすいということが大きいのではないだろうか。
そんな商業性と音楽性の絶妙なバランスで、2010年代になるとさらに幅広い層に人気が浸透。実際、その認知度×関心度の高さを表すタレントパワーランキングにてサザンオールスターズやMr.Childrenと並ぶハイスコアとなった。つまり、2010年代に国民的アーティストとなったと考えられる。
そうして2017年にはデビュー20周年を記念したベストアルバムや全国ドームツアーを実現、同年末にはNHK紅白田合戦にて大トリを担当するまでに成長。しかし、たとえLIVEがどれだけ大規模になっても、大型特番で多くの視聴者が注目していても、二人の手作り感のあるパフォーマンスを大事にしているように思える。これだけ時代やCDシングルの購入のされ方が変わろうとも、2ndシングル「少年」から2017年の4曲入りEP『4LOVE』まで45作連続でオリコンTOP10入りを果たしているのも、熱心なファンの支持がある証拠の一つと言えよう。