「臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20」
ラブソングとエールソング、
どちらが人気!?
ドリカムのベストヒットを探る!
アルバムアーティストとしての
意気込みを感じさせる
シングルとアルバムの同時デビュー
ソウルやファンクといった洋楽のエッセンスを取り込んだポップミュージックや吉田美和の華やかな歌声はFMラジオや音楽誌で好評を得てきたが、世間一般に知られるようになったのは1990年2月発売の5thシングル「笑顔の行方」から。同作は中山美穂主演のドラマ『卒業』の主題歌として、就職や恋愛で揺れ動く若い女性の心理と見事にシンクロし、ロングヒット。これにより、以降の新作シングルやアルバムはヒットを連発し、旧作のアルバムも再チャートインするように。
特に、前年11月に発売された2ndアルバム『LOVE GOES ON…』は初登場13位から徐々にセールスが下降していたが、ドラマ開始とともに再浮上、終盤に差し掛かった90年3月に8位まで上昇、その後1996年6月まで累計229週もTOP100入りするという驚異的なロングセラーとなる。本作には「うれしい!たのしい!大好き!」と「未来予想図II」が同時に収録され、まだシングル以外の楽曲をダウンロードなどで購入できず、中古やオークションも今ほど活発ではなかった時期ならではの驚異的な記録と言えるだろう(ちなみに、2010年代以降はCDではなく、配信チャートにてロングヒットは多数出ており、現に2015年に発売されたオールタイムベスト『DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム』は、レコチョクやiTUnesでの配信チャートには発売開始以来TOP100内をキープするほどのロングヒットとなっている)。
カラオケ向けのJ-POP系から
コアな音楽ファンが求めるような楽曲へ
その後、1995年7月の18thシングル「LOVE LOVE LOVE」で自己最高となる250万枚級のメガヒットを記録するも海外進出を意識し始めたのか、徐々に楽曲はカラオケ向けというよりも(いや、それまでも歌うのは難しかったのだが、キャッチーでポップゆえ上手く歌えた場合、大きな達成感があった)、よりコアな音楽ファンが求めるような作風に変わっていった。
彼らが築いた「女性ソロボーカル+2人の男性による演奏」といういわゆる“ドリカム編成”のアーティストが、globeやEvery Little Thing、さらにはバラエティー番組発でポケットビスケッツなど、相次いで登場していったが、その中でEvery Little Thingが1997年~1999年、もっとも勢いに乗って活躍できたのは、この時期のドリカムが遠ざかりつつあったポップな要素を上手く取り込んだことも大きいのではないだろうか。
海外での展開を視野に入れ
ヴァージンレコード・アメリカに移籍
しかし、2004年にユニバーサルミュージックに移籍してからは、「やさしいキスをして」「何度でも」「ア・イ・シ・テ・ルのサイン~わたしたちの未来予想図~」など明らかに大衆を意識したJ-POP路線の楽曲が増え、以前のカラオケヒットに加え、普及し始めた着うたでのヒットも出るようになった。実際、中村のインタビューからも「めざせサザン!」「EXILEがライバル」といった発言が飛び出すようになった。
2015年には3枚組のベストアルバム『DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム』を発売し、CDと配信とで合計100万枚分をゆうに超え、2010年代のベテランアーティストによる“オールタイムベスト”の代表作となった。