Editor's Talk Session

Editor's Talk Session

【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
コロナ禍の中で変化を続ける
楽器店の実情

どういう状況になっても
楽器は必要とされる

岩田
外出自粛期間にはテレビなどでも“楽器ブーム”として楽器を始める方が増えたというニュースが流れていましたが、このブームをどのように見ていましたか?
富田
ありましたねー。その時は通信販売が活発に動いていました。ステイホーム期間を活かして楽器を始めようという方や、昔に楽器をやっていたがまた本格的に始めようという方など、楽器を手にされる方が増えまして。実際にフェンダーの売上が一気に上がったとかもありましたし。入門用のアコースティックギターの数が足りなくなったりもしていましたね。あと、いわゆる配信用の機材も非常に品薄になっていました。ミキサーなど配信用に使うツールが買いたくても品切れ続出という。だから、あの時期は当店だけでなく、関連メーカーさんにしても売れる時期ではあったと思います。ただ、世界的に物が動かない時期ではあって。ニーズはあるのに物が入ってこないというジレンマみたいなものが、特に輸入代理店さん関係は感じていらっしゃったみたいですね。中国の工場で物が作れないみたいな。
烏丸
非常に困った状態になっていましたもんね。
富田
特にデジタル機器が影響を受けていました。国内のニーズが高まっていて、ネット配信をみんなが始めるようになった時期だから購買欲はすごく出ているのに、海外から製品が輸入できないため手に入らないみたいな。
烏丸
私もネット注文した品物がコロナ禍で混乱している中国からなかなか出荷されず、大幅に到着が遅れた事がありました。新型コロナウイルスは全ての現代社会に多大な影響を与えましたが、中古楽器店として、考え方やビジネススタイル、新たな課題、あるいは逆に解決できてしまったことなど、コロナ禍以前と現在では、どんな影響があったと思いますか?
富田
変わっていない部分はあると思いますね。楽器のニーズはコロナ禍以前からありますし、どういう状況になっても楽器は必要とされるということは感じています。ただ、楽器店よりも影響が大きかったと思うのは、当店を利用していただいている練習スタジオやライヴハウスさんですね。ライヴができない、イベントができないということで、練習スタジオやライヴハウス…あと、ミュージシャンをされている方はもちろん、照明や音響の仕事をされている方は我々以上に仕事が激減しているという状況だったので。そういった点で言うと、プロの現場向きの楽器はニーズがすごく減っていました。残念ながら仕事が当面見込めないから楽器や機材を手放すという、買取のほうの需要があったのも事実ですね。プロの現場でのニーズが減っている時期だったし、仕事を辞められる方も出てきていたので、新規で機材を導入できるわけもなかったから購買はほとんどなかったです。
烏丸
確かにプロの現場は大きな影響がありましたからね。
富田
ライヴハウス、練習スタジオなど、ご近所で交流のある方に話を訊くと、配信設備を充実させることを重視していると言っていました。それまでのライヴハウスでのライヴはラインの音をそのまま流すのが主流でしたが、各ライヴハウスがいかに臨場感のある音を配信で届けるかということを意識して機材を集めていて。マイクやミキサーなどにもこだわっていましたね。実際に我々が配信等を観させていただいた時、みなさんその点がすごく良くなっていなと体感しました。試行錯誤で苦労された時間がすごくあったんじゃないかと思います。
岩田
この座談会企画で以前にライヴハウスの方にお話しをうかがった際も配信に力を入れなくてはいけないとおっしゃられていましたね。
富田
我々の話で言うと、お客様が来店できないぶん、お店のことを発信できればと思って動画に力を入れましたからね。最初は手探りで試行錯誤状態でしたけど、当店での動画企画はスタッフ同士が“こんな楽器いいよね”“この楽器が好きだな”というような雑談程度から始まったのですが、そんな動画でも視聴者のみなさんに喜んでいただけたり、お褒めの言葉をいただけたりしまして。我々が思っていることを発信していくことで、期待以上に多くの方が受け入れて望んでくれていることを感じたので、今後も中古楽器専門店という立場で動画を観てくれている方が知りたいことを発信していきたいと思っています。
岩田
YouTubeのアーカイブも観させていただきましたが、コロナ禍に入ってから動画の企画も本数も充実されていますし、商品紹介だけでなく改造ギターコンテストの紹介だったりもあるので、コアユーザーからライトユーザーまで楽しめる企画が揃っていますよね。
富田
改造ギターコンテスト自体は2年に1回開かれる『楽器フェア』のたびに開催している昔からある企画なんですよ。2014年から始めて…2016年は飛びましたが、2018年にやって2020年の『楽器フェア』で展示をする予定だったんですけど、コロナ禍の影響で『楽器フェア』自体が飛んじゃったんです。楽器を発表する場がなくなってしまったので、その時は『ギター・マガジン』さんに協力いただき紹介させてもらいました。あと、2022年は改造エフェクターコンテストというかたちで開催して、『BARKS』さんご協賛のもとでみなさんの改造エフェクターを集めて動画で紹介させていただいたりして。本当にこちらの予想を上回る奇想天外な作品が生まれましたし(笑)、『BARKS』賞などを受賞された方にオンラインで取材を烏丸さんと一緒にしたりして、とても楽しい企画になりました。
烏丸
一見、エフェクターの改造だなんてコアマニア向けの一般性の薄い企画に思われそうですが、実際は良く練られたとても敷居の低い好企画だったので、蓋を開けてみたら驚くような作品がたくさん集まって、とても面白かったですよね(笑)。
富田
すごく面白かったです(笑)。
烏丸
ネットでいろんな人のいろんな想いが集まると、こんなにエンタテインメントになるんだという事実が、TC楽器さんの企画で証明されたと思っています。

OKMusic編集部

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