Editor's Talk Session

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【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
大型イベント『アニサマ』が
直面したコロナ禍での葛藤

コロナ禍の影響でライヴが無観客の配信形式で行なわれていた昨年。15年の歴史を持つアニソン界のマンモスイベント『Animelo Summer Live』(以下:アニサマ)も新型コロナウイルス感染拡大により延期を余儀なくされた。第20回目の座談会企画では、同イベントのゼネラルプロデューサー&総合演出である齋藤光二氏(株式会社ドワンゴ)と舞台監督の三上修司氏(株式会社PARKLIFE)を招き、『アニサマ』を軸にこの2年間のライヴイベントについて語ってもらった。

※このインタビューは2021年7月5日に実施したものです。
【座談会参加者】
    • ■齋藤光二
    • 世界最大のアニソンフェス『アニサマ』の名物P。2005年の立ち上げから関わり、大きく育てた立役者。通称「さいとーぴー」。ステージ作りへのアツい情熱で、多くのアーティストからも慕われている。
    • ■三上修司
    • 株式会社PARKLIFE代表取締役、舞台監督。『アニサマ』の総合舞台監督。本番の音が止まらないのは三上が止まらないから。『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』等の大型フェスの統括も務める。社名は某名盤より。
    • ■石田博嗣
    • 大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP's&OKMusicに関わるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。
    • ■千々和香苗
    • 学生の頃からライヴハウスで自主企画を行ない、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP's&OKMusicにて奮闘中。
    • ■岩田知大
    • 音楽雑誌の編集、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP's&OKMusicの編集者へ。元バンドマンでアニメ好きの大阪人。

延期という判断をできるだけ
ポジティブに伝えたかった

岩田
2019年に初開催から15周年を迎えた『アニサマ』ですが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響からやむなく延期となりました。すでに出演者などの情報解禁もされていましたし、延期の決断に至るまではどのような流れだったのでしょうか?
齋藤
延期を発表したのが2020年5月28日ですが、それまでに制作チームの中ではずっと議論を交わしていました。2月頃からコロナ禍になり、Perfumeは東京ドーム公演、EXILEは京セラドーム大阪公演を当日に中止発表したり、THE YELLOW MONKEYが4月の東京ドーム公演を中止したりして、“いよいよヤバいな”という不安がありました。夏までには状況が落ち着くだろうという希望を持ちつつも、巷ではマスクさえ入手することが困難となり、ワクチンの“ワ”の字もない状況でしたからね。小さなライヴハウスや劇場でクラスターが発生したりと、みんな疑心暗鬼の渦中にいたと思います。『アニサマ』は開催に向けてチケット販売も開始していたので、アクセルを踏んでいる状態だったんですが、その状態でいきなりブレーキをかけると、いろんな玉突き事故が起こる。単独ライヴとは規模が違いすぎていて、スタッフだけでも数百人いますし、アーティストも毎年60組弱出演するし、3日間の開催だから、それぞれの足並みを揃える調整が本当に大変なんです。
岩田
数ある判断からひとつずつ慎重に考えて進めなければいけないと。
齋藤
はい。“来年に延期します”と関係者に一斉メールで送るわけにもいかないんです。だから、あの時点で判断するのは大変でした。一方で、出演アーティストの追加発表を必死で調整しながら、“この状況で『アニサマ』やるのかよ”という声も真摯に受け止めていました。それでも、ライヴは楽しいものとしてみんなに届けたい、そう思いながらの最終判断を下すまでの期間は身を引き裂かれるような気持ちでしたね。
岩田
想像を絶する想いをされていたんですね。
齋藤
アーティストのラインナップで言うと、第一弾発表はとても大事じゃないですか。でも、そのラインナップ自体にストップがかかりました。アーティスト側から“自分たちのライヴも発表できない中で、『アニサマ』も出すことはできない”という理由もあって。だから、決して小出しにアーティストを発表していたわけではないんです。最終的に我々が延期を発表した時点で総勢60組147名全アーティストを発表することができなかった…セトリはもちろん、綿密に組んでいたステージプランも、一切お届けすることができなかったことがとても悔しかったですね。
岩田
延期を発表した時点で発表されたアーティストもいらっしゃいましたね。
齋藤
『アニサマ』を信じて楽しみにしながらチケットを買ってくれたお客さんに対して、延期という判断をできるだけポジティブに伝えたかったです。少しでも希望を持てるかたちで延期したかったから、そこも含めてブレーキのかけ方を何カ月もの間、毎日考えていました。
石田
実施する方向と延期する方向、両方のプランを考えながらミーティングを繰り返していたんですか?
齋藤
そうですね。今年もそうですが、お客さんの人数に制限がかけられつつ、さいたまスーパーアリーナは埼玉県と連動しているので、我々はそういった会場のレギュレーションに従うのが絶対条件なんです。その中で、チケットの売り方や席の配置、そもそも収支が取れるのかということをAプラン、Bプラン、Cプランといくつも考えました。正直なことを言えば『アニサマ』は今年、開催してもしなくても大赤字です。この状況でやるという決断は、もっと血を流すことになりますが、我々は楽しみに待っている方たちにライヴを届けるのが仕事なので、どれだけ負債額を背負うか、の覚悟になります。
岩田
三上さんは『アニサマ』だけでなく数多くのライヴやイベントに携わっていますが、昨年の状況はいかがでしたか?
三上
2月末に大きな話題となったダイヤモンド・プリンセス号が停泊していた場所の近くにある、パシフィコ横浜でのライヴをラストに3月、4月、5月とほぼ何も仕事がなかったんですよね。3月くらいまではツアーに向けてリハーサルをやったり、ゲネプロまでやっていて、4月と5月は仕方ないけど、夏くらいにはなんとかなるんじゃないかとみんなが少し楽観的にとらえていたと思うんです。でも、4月くらいからいよいよ“ダメっぽいね”という感じになり、鳴る電話、鳴る電話全部が中止や延期の連絡でしたね。6月に1回目の緊急事態宣言が解除されてからは各所でミーティングが開始され…もちろんオンライン会議が多かったですけど、みんな“何かしらしないとダメだよね”ということを考えていたから、配信でもいいのでアーティストからのメッセ―ジをライヴに近い方法で届けられるようにしようということで、リハーサルや打ち合わせをして。で、8月くらいに少し持ち直し始めたと思ったけど、舞台でクラスターが発生して、それでまた中止や延期に追いやられる…昨年はそんなことの繰り返しでした。僕はまだ現場があるほうでしたが、それでも配信が多かったです。
岩田
確かに夏頃が有観客から無観客配信に切り替わっていった時期だったと思います。では、仕事はほぼ配信がメインになっていたと。
三上
そうですね。ただ、3本ほどやって分かったんですが、配信になるとカメラマンの目を通したものを届けなくてはいけなくなるので、ライヴのスタッフの目線だけだとダメなんですよ。だから、映像側の勉強もいっぱいしたし、どういうふうに観えて、どういうふうに伝わるのかを、いろいろトライしながらやっていました。昨年でも合計200本くらいの現場に携わったのですが、配信だけでも100本くらいありましたね。普段接していなかった映像関系の方ともつながれるようになったし、昨年を振り返ると、新しいことに挑戦できた時間でもあったと思います。

OKMusic編集部

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