『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の
“映画の指輪のつくり方”』
- 第四十八回 -
「きっと、うまくいく」の指輪

2017年から本格的に活動を開始したシンガーソングライター〈みねこ美根〉が大好きな映画の世界から作り出す紙粘土細工と指輪の制作過程をお見せします。ミニチュア好きな方、アクセサリーづくりに興味のある方は是非見ていってください。指輪はライブ会場にて展示しております。

動画監督・撮影・編集・演奏・文:みねこ美根

「サイレンサーというあだ名の秀逸さ(2009年「きっと、うまくいく(3Idiots)」)」

 ここ最近、再会が多い。幼馴染や高校の時からの親友、学生の時バイト先で仲良くしてくれた人、高校の時の担任の先生。中高大の同級生や高校の時の先輩後輩にも、直接会わずともSNSで連絡をとったりしていた。みんな私のことを応援してくれていて、本当にありがとう感謝祭、身の引き締まる春。今の自分から逆算すると、学生時代の私は相当ドイヒーな人間なので、そんな私と今でもやり取りしてもらえてありがたやありがたやです。一人じゃないんだな、これまでも一人じゃなかったのかもなぁって感じる瞬間が多い、そんな春です。
 今回紹介するのは、インド映画「きっと、うまくいく」。まずびっくりなのは、上映時間が171分だということ!ながっ!でもこの長さを全く感じさせない素晴らしいストーリー構成に感嘆すること間違いなし。

 ある日、ファルハーンとラージューは、同級生のチャトルに「ランチョーが今日母校にやって来る」と呼び出される。ファルハーンとラージューの親友ランチョーは、大学卒業後消息を絶ち、行方不明だった。ランチョーのことを勝手にライバル視していたチャトルは「10年後に再会して、どちらが成功したか確かめる」という約束をランチョーと交わしていた。10年後であるこの日、ランチョーは現れなかったが、手がかりを得た3人はランチョーの行方を追う。というのがおおまかな全体の流れ。

 この旅の途中、回想として半分以上物語を占めるのが、大学時代の出来事だ。ファルハーン、ラージュー、チャトル、ランチョーの通う大学は超エリート工科大学。入学する者は皆、エンジニアになるため、家族の期待を一身に受けて育ち、大学もまた優秀な成績や就職率を叩き出そうと学生たちに競争を強いる体制をとっていた。そんな中で異端児として登場するのがランチョーだ。
「ここで教えているのは点の取り方だ。競争や訓練は、教育じゃない。」競争社会に疑問を抱き、大好きな学問を突き詰め、反抗心を持ちつつ、明るく自由な青年。「うまーくいーく(=うまくいく=All is Well.)」を合言葉に、ファルハーンやラージューはそんなランチョーに感化され、自分の人生を見つめなおしていく。

 インドならではの独特なミュージカル(音楽もすごく良い)、ボケるシーンの効果音、楽しいドタバタコメディ、という面もありながら、学生の自殺率の高さ、学歴競争、貧富の差、教育とはなんぞや、といった、実際の社会問題に一石を投じる、秀逸な作品!

 それぞれの登場人物の背景に共感する人も多いのではないだろうか。ファルハーンは生まれたときからエンジニアになることを期待され、お金をかけてもらっていたことから、本当はカメラマンになりたいことを言い出せない。ラージューは実家が貧しく、家族の未来を背負っているため、将来の不安から、お守りの指輪を付けまくり、神様に祈ってばかりいた。

 「何のために大学まで行かせたんだ」「大学まで行かせてもらったのに音楽やってるの?私が自分の子供にそんなこと言われたらやめさせるわ」と言われることもあるから、ファルハーンの気持ちも分かるし、占いの本を毎年買ってしまうので、ラージューの気持ちもよく分かる。
 そんな中で、「友よ!うまーくいーく!」と言ってくれるランチョーの言葉に涙が出る。自分のやりたい気持ちが大切なのだ。未来は誰にもわからない、だからこそ信念を貫けと背中を押してくれる。

 3時間近くともなると、どこから話したらよいか分からないが、一番好きなのは「Aal Izz Well」のシーンかな。そのあとの展開にも注目。主演者全員の凄まじい演技にも心を持っていかれる。とにかく見てない人は早く観て!泣いて笑ってとはこのことで、充実した時間は本当に一瞬だってことを体感する。

 ランチョーが反対する学歴社会や競争、教育についても書いてみようとしているのだが、書くのに非常に手こずっている。大学で専攻した教育にはとても関心があるので、学ぶことについてとか、伝えたいことは沢山あるのだが、書いては消して書いては消してを繰り返している、なう。まとまらず話が逸れてしまうので、また機会があれば書くことにする。とにかく、世の子どもたちが自分の人生を豊かにするための学びを得られるように、可能性を潰されないように、自分と愛する人を大切にできるように、まわりの環境に未来を妨げられないように、願う。この映画を最後まで見ると、人生は本当に予期せぬことばかりで、突然の出来事にどう立ち向かうか、これが学んだことを“テストではなく人生に”活かすことなのかなと思う。

 信念をもって、臆病な心に言い聞かせてみよう。「うまーくいーく」。
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モチーフ:大学にある塔、ランチョーが作った感電マシーン、ドローン、ピアのヘルメットと時計、校長のボールペンと鳥の巣、ラージューの指輪、ファルハーンのカメラ、骨壺、結婚式に潜り込むときのピンクのターバン、赤ちゃん
音楽:「Aal Izz Well」「Zoobi Doobi」Shantanu Moitra オルゴール&弾き語りcover.ver
   (訳詞は映画本編参照)
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みねこ美根情報
オフィシャルホームページ:https://powerpop.co.jp/minekomine/
2021年4月21日新曲「さよなら起承転結」各音楽配信サイトで配信開始
配信シングル「さよなら起承転結」

配信シングル「さよなら起承転結」

みねこ美根 プロフィール

ミネコミネ:6歳の時にピアノで初めて作曲、11歳からはギターでの作曲も開始し、現在はピアノとギターを用いてライヴ活動中。2019年1月リリースの配信EP『心火を従えて愈々』で楽曲のクオリティの高さ、世界観が注目を集め始める。同年8月に下北沢GARDENで初のワンマンライヴを開催し、座席チケット、立見チケットともに完売。20年はサウンドプロデュースを手がける誠屋の小名川高弘氏とともに制作した「水面へ」「僕らは飛べるようにできてる」「くわの実」「傷跡」を配信リリース。みねこ美根 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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