SION

SION

人が嬉しいと
自分も嬉しくなっちゃう

SIONさんには孤高なイメージがありますが、自分を引っ張ってくれる存在はいましたか?

山口で一緒だった歌唄いが東京に住んでいて、上京前に“俺も東京に行こうと思うんだけど、ひと晩泊めてもらえますか?”って訊いたら、とりあえず中野まで来いって言うから向かったの。中野駅からバスに乗って、哲学堂公園っていうのがあるんだけど、その人が“ここが後楽園球場だよ”って言うから“おぉ~、ここでジャイアンツがやるんだ!”って(笑)、草野球がやるくらいの大きさだからそんなわけないんだけど、その時は夜で照明も点いてるから信じちゃって(笑)。結局ふた晩くらい泊めてもらった。でも、特に誰ともつながりはないかな? 飲みに行くのも、どこかをブラつくのもひとり。デビューしてツアーをするようになると打ち上げがあるんだけど、今はないけど当時は必ず最後はどこかでひとりで飲んで、ひとりで帰ってくる。なんか暗いんだよね。

孤独に感じることはないんですか?

人より少ないからなのか、人より何かが多いからこうしているのか…アルバムを作ったら誰かにレコメンドを書いてもらったり、誰かと対談をしてって言われてきたんだけど、全部嫌だったんだよね。申し訳ないけど、なんか悪く感じて。16、7年前だったかスタジオで福山雅治がリハーサルかなんかをやってたようで、そこに前に福山を担当してたプロデューサーが顔を出したら、福山が“今SIONさんレーベルないんだよね。俺、何でもやるから一緒にやってあげてよ”って言ってくれたことがあって。福山、いい奴でしょ? それでシングル(2005年6月発表の「たまには自分を褒めてやろう」)を一緒にやって、『東京ノクターン』(2005年6月発表)っていう気に入っているアルバムもできた。そう、孤独ではないですよ。リハか本番でしか会わないけどいい音仲間もいるし、楽しい呑み仲間もいるし、そして猫がいる!(笑) っていうか、ほとんどの人は基本的に暗いんじゃないんかなぁ?

でも、「諦めを覚える前の子供みたいに」(2015年3月発表のアルバム『俺の空は此処にある』収録曲)で《人の事はどうだっていいと言いながら/人がいるから今日までこれたかな》と歌っているみたいに、SIONさんは人のことを嫌っているわけではないんですよね。

そうだね。人のことが好きだから嫌なところを見たくないのもあるけど。最近は住宅街に引っ越して、“お前は住宅街に住んじゃいけねえ!”とか言われたんだけど(笑)、外で子供たちがキャッキャ言いながら遊んでいる声が聴こえてくると嬉しくなっちゃうんだよな。ハァ〜って救われる。大きいカッパを着た兄弟が手をつないでいるのとか、よっぽど腹が減っているのか、駅のホームでOLさんが立ったまま、でも美味しそうにおにぎりを食べているのとか、人が嬉しいと自分も嬉しくなっちゃうんだよ。そういう日はいい気持ちで帰る。人が好き、人が嫌い、ひとりが好き、ひとりが嫌い…っていろいろ歌っていて俺は面倒くさい人だから、できるだけひとりでいようと思うけど。

デビューシングル「俺の声」は1986年6月に発表されていて、私は1995年生まれなのでリリースからは時間が経ってから拝聴したのですが…

暗かった?(笑)

デビュー曲は最初に自分の存在を知ってもらう作品ですが、その時から苦労が滲むような、そのままの自分を露わにする曲をリリースしている人がいるのかと驚きました。

当時の周りの人がこれがいいって言ったからね(笑)。でも、それはトム・ウェイツのデビューアルバムにも似ているかもしれないね。“デビューアルバムなのに“クロージング・タイム”ってタイトルなんて”って。

SIONさんにとってのメジャーデビューはどんな出来事でしたか?

めちゃめちゃ嬉しかった。最初は音楽のために上京したはずなのにバイトと遊びばっかりで、ふと“俺って何しに東京に来たんだろう?”と気づいて、レコード屋さんからレコード会社の住所を教えてもらって、曲を聴いてほしいって売り込みに回ったのが1981年くらいの時だったんだけど、それから一年後に声をかけてくれた人がいたんだよ。普通はテープを渡しても“聴いておく”って言いながらポイッと捨てられちゃうことが多いんだけど、その人はテープを持って会議室に連れて行ってくれてさ。それをラジカセで聴いていたら、途中で電話がかかってきたんだよ。“なんだ、こいつも聴いてくれねぇや”って思ったんだけど、その人は電話が終わったらテープを巻き戻したの。で、“ストックは何曲あるの?”って訊かれて、“50曲くらい”と答えたら、“もう他に行かないでね”と言われて。すごく嬉しかったね。それでデビュー前からラジオ番組をやらせてもらったけど、あれは大不評だった(笑)。もともとアイドルがやっていた時間に入ったから、“何でこの時間にお前みたいな汚ねえ声のひとり言を聞かなきゃなんないんだよ”って苦情の葉書が届いたり(笑)。飼っていた金魚が死んで、埋めようと思ったけど東京には土がないって話をして、まだレコードになっていない自分の曲をかける…っていうだけの番組だったんだけど、確かに“知るかそんなこと!”ってなるよね(笑)。でも、デビュー前からそんな経験もさせてもらってラッキーでしたよ。

OKMusic編集部

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