SION

SION

自分で歌を書くようになってから
音楽を好きになった

J-ROCK&POPの礎を築き、今なおシーンを牽引し続けているアーティストにスポットを当てる企画『Key Person』。第25回目はデビュー37年目になるSIONが登場。音楽に出会うまでの日々や初めてギターを弾いた日のこと、デビューのきっかけとなったエピソードなど、彼らしく冗談を交えながらも、ありのままの言葉で語ってくれた。
SION プロフィール

シオン:1960年生まれ、山口県出身。85年に自主制作アルバム『新宿の片隅で』で衝撃的にデビューし、86年には『SION』でメジャーデビューを果たす。その独特な歌声、ビジュアル、そして聴き手の心に深く刺さる楽曲の数々は、日本のミュージックシーンにおいて唯一無二の存在。多くのアーティストから敬愛されるミュージシャンズ・ミュージシャンであり、SIONをリスペクトしているミュージシャン、俳優、タレントには枚挙にいとまがない。長年培った充実したライヴパフォーマンスには定評があり、年齢、性別を越えた幅広いファンに支持されている。SION オフィシャルTwitter

拓郎も陽水も弾けなかったけど
自分で歌を書けば弾ける

SIONさんがギターを始めたのは14歳の頃だったそうですが、当時はどんな少年でしたか?

女と酒と…ここに書けないことばっかりだよ。音楽のことなんてまったく考えていなかったよね。おっぱいと喧嘩のことばっかり(笑)。

楽しく過ごしていましたか?

小学校の低学年の時に、初めて家族に“旅行だよ”って言われたんだけど、置いて行かれたんだよね。俺は右手にちょっと不自由があって、“初めての家族旅行だ!”って喜んで行ったところが障害者施設だった。で、俺を置いてお母さんもお姉ちゃんも弟も帰ってしまうという。爺ちゃんが駅のホームに見送りに来て、汽車が出る時に顔をくしゃくしゃにして泣くのを堪えていたんだよね。“なんでだろう?”と思ったけど、あとになって“そっかぁ”と。その施設がしんどくてね、“何だ、これ?”って。そこでの生活に一生懸命に対応しようとしたけど、やっと慣れた頃にまた家に戻されて。俺をそこに置いてきたことに良心が痛んだのかな? またもとに戻ったから、俺は遊びながらもずっと頭の半分では違うことを考えていて…すごく暴れていたけど、何か暗かったと思う。

言いたいことを言う場はなかった?

うん。それに、全部を誰かのせいにしやすい年頃ではあったよね。学校に対しての不満も、大人に対しても。どんなに時代が変わっても、人にはそういう時期があるんだと思う。でも、親に食わせてもらっているのに偉そうなことを言うのはカッコ悪いと思って、わりと早くに独立したんだよ。この世界ってヒモになる人が多いけど、俺はそういうのが昔からダメなんだよね。女の子と行ったら飲み食いも遊びも払うのは当たり前で、お金がない時には“また今度ね”なんて言って誤魔化したり(笑)。

周りの人とのギャップも感じていたんですね。

そうだね。中学2年の時、女の子に“教科書を貸して”と言われて貸したんだけど、俺がいつか“右手が治りますように”って書いていたみたいで、返してもらった時に“これ見られちゃったかも”って恥ずかしくなったから、その子の背中に冷たい手を入れてやった(笑)。40歳の時に一回だけ同窓会に出たんだけど彼女はそれを覚えてたよ(笑)。俺は他の人よりも腕一本分の強さを持っているけど、あるもので生きているというか。ひとりで暮らし始めた16歳の頃から、“あれがない、これがない”じゃなくて、“これがあるじゃん”と思うようになった。“あの手この手”って言うのかな?(笑)。

SIONさんは音楽をやるために上京されましたが、音楽を好きになったきっかけは何だったんですか?

俺の周りにあった音楽はテレビに映っている演歌とかアイドルとかグループサウンズで、親がジャズとかブルースを聴いていたから~なんていう時代でも環境でもなかったからね。学校に吉田拓郎とか井上陽水とか泉谷しげるの歌詞とコードが載っている雑誌を持って来ている人がいて、その雑誌とギターを借りてやろうとするけど弾けない。じゃあ、弾けるコードはあるかとやってみて、なんとか3つばかしあった。拓郎も陽水も弾けなくて悔しかったから、自分がなんとか弾ける3つのコードで歌を書けばええじゃんって。そこから始まった。“俺は俺の歌を書けば弾けるじゃん!”って(笑)。だから、音楽を好きになったのは自分で歌を書くようになってからじゃないかな? 東京に来た頃には好きなミュージシャンを訊かれたら、カッコつけてボブ・ディランとか言ってたけど、拓郎さんも好きだったし(笑)。でも、やっぱトム・ウェイツ、ボブ・ディラン、ニール・ヤングは今でも新しいアルバムが出たら買います。

OKMusic編集部

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