ディスコに参入した大物アーティスト
の極めつけディスコヒット5曲(その
2)

もともとはディスコ向けのアーティストではないが、その流行に目ざとく反応して、ディスコヒットを飛ばした大物アーティストは少なくない。70年代の中頃に登場したフュージョン(当初はクロスオーバーと呼ばれた)は、ファンクと並んでディスコサウンドと親和性が高い音楽だと言える。特に80年代初頭からは12インチシングルがリリースされるようになり、ポップスやロックに混じってフュージョン作品のディスコ用リミックス盤もかなり出回っていたのである。そんなわけで、今回は主にフュージョン界で活躍した大物アーティストを取り上げてみようと思う。

ディスコに参入したジャズ/フュージョ
ン系の大物アーティスト

前回はポップス/ロック系のアーティストでディスコに参入したものを紹介したが、今回はジャズ/フュージョン系の大物アーティストのディスコ作品にスポットを当ててみようと思う。ファンク系のアーティストならディスコへの転向はさほど難しくないが、ジャズのアーティストとなるとどうか。巨人マイルス・デイビスは70年にリリースした『ビッチズ・ブルー』で、ジャズ、ファンク、アフリカ音楽などを融合(クロスオーバー)させ、誰よりも早くフュージョン作品を創り上げたが、あまりにも革命的な音楽で、当時そのサウンドを理解できるものは少なかった。後進のさまざまなアーティストがマイルスの音楽を分解し再構築することで、商業的なフュージョン作品が70年代中頃に多数生まれている。それ以降、ハービー・ハンコックやクインシー・ジョーンズらのようなジャズ界を代表するビッグアーティストがディスコ向けの曲を手がけるようになると音楽的なレベルがグンと上がり、82年にリリースされたマイケル・ジャクソンの『スリラー』でディスコ音楽は頂点を極めることになる。

それでは、ディスコに参入した大物アーティストの極めつけのディスコヒットを5曲セレクトしてみよう。

1.「If You Wanna Boogie…Forget It」
(‘76)/ブレッカー・ブラザーズ

フュージョングループが手がけた最も初期のディスコサウンド。ブレッカーブラザーズは、マイケル・ブレッカーとランディ・ブレッカーの兄弟がリーダーを務める凄腕のメンバーが揃ったグループだ。ベースがウィル・リー、スティーブ・ガッドとクリス・パーカーのツインドラムという豪華なリズムセクションが売りのひとつであった。この曲ではウィル・リーのうねりまくるベースプレイに腰が止まらない人は多いと思う。ブレッカー×2+デイブ・サンボーンによるホーンセクションのキレも半端じゃなくて、タワー・オブ・パワーにも負けていないところがすごい。冒頭のユーモラスなスキャットと骨太のヴォーカルは、当時女性を虜にしたハンサムなウィル・リーが担当している。天が2物も3物も与えた稀なケース。何にしても、ディスコファンには絶対に気に入ってもらえる名曲ではないだろうか。ちょっとテンポが速すぎるのが、ダンス上級者以外には難点かもしれない。彼らの2nd『バック・トゥ・バック』(当時のグループ名はブレッカー・ブラザーズ・バンドであった)に収録、他にも秀逸なダンスナンバーが収められている。

2.「K.Y And The Curve」(’76)/ハ
ーヴィー・メイソン

この曲は何度かテレビCMでも使われているので、ご存知の人も多いと思う。ジョージ・ベンソンをはじめ、多くのフュージョン/ジャズ作品でドラムを叩いている名プレーヤーの2ndソロ『アース・ムーバー』に収録されたオシャレなナンバーだ。ヴォーカルはスキャットのみで華美なストリングスがフィーチャーされており、少しヴァン・マッコイやバリー・ホワイトを思わせるところがにくい。リー・リトナーがリードギター、グレッグ・フィリゲインズがキーボードで参加するなど、豪華なメンバーが集結している。中盤から後半にかけてのメイソンの華麗なドラムプレイが実に素晴らしく、これを聴いていると誰でもがスイングしてしまうのではないだろうか。当時、日本のニューミュージック界にも大きな影響を与えた最先端のシティミュージックがこれ。

3.「Give Me The Night」(‘80)/ジ
ョージ・ベンソン

ジャズギタリストとして不動の地位を築き上げようとしていた時、大ヒットアルバム『ブリージン』(‘76)でフュージョン界に殴り込みをかけ、売れに売れたのがご存知ジョージ・ベンソンだ。そして、この曲でディスコに殴り込みをかけ、ディスコ界も制覇してしまった。クインシー・ジョーンズのプロデュースで制作された同名タイトルのアルバムに収録されており、全米ダンスチャートで2位まで上昇している。クインシーがプロデューサーとしてもっとも売れていた頃の作品で、前年の79年にはマイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』、80年に本作、81年に『The Dude』(「愛のコリーダ」収録)、82年にマイケル・ジャクソン『スリラー』などをプロデュースするなど、数年間にわたりディスコで大ヒットを飛ばし続けるのだから、その手腕はすごすぎる。バックを務めるのはグレッグ・フィリゲインズ、リー・リトナーらお馴染みのメンバーで、ベースはディスコヒットも多いブラザーズ・ジョンソンのルイス・ジョンソン。バックヴォーカルでパティ・オースティンが参加、そして、すでにディスコ界に参入済みのハービー・ハンコックが参加しているのが目玉だろう。ベンソンは他にもディスコヒットは多い。

4.「Go For It」(‘80)/ハービー・
ハンコック

アルバム『モンスター』に収録されたダンスナンバー。ディスコが大流行していたこの頃は、一般リスナー用にも12インチシングルが出始めた頃で、この曲のダンスミックスがリリースされており、ディスコではロングバージョンがかかっていた。ハンコックのディスコ作品は70年代から多く、彼がジャズのプレーヤーだと知らないディスコファンが少なくなかったのも事実である。このナンバーはフレディー・ワシントンのスラップベースがディスコ的な感覚を持っているのは当然だが、ヴォーカル(ウォーターズが参加)に至っては「ジンギスカン」的な軽薄さがあって驚いてしまう。ハンコックはジャズ界の王道を歩んでいたが『ヘッドハンターズ』(‘73)でファンクに挑戦(その時のドラムは、2.のハーヴィー・メイソン)しているのだが、ここではファンク的な要素は殆ど見せず、完全なディスコ作品に特化しているところにハンコックのこだわりというかオタク性が出ていて面白い。そして、83年にはヒップホップを導入したデジタルファンク曲「ロック・イット」でグラミー賞を受賞、ダンスの主流がディスコからクラブへと移行することを予言した。ただ、日本ではバブルがはじける90年代初頭までディスコ人気は続いた。

5.「愛のコリーダ(原題:Ai No Corri
da)」(‘81)/クインシー・ジョーン

イアン・デューリーのバックメン(ブロックヘッズのメンバー)として知られるチャス・ジャンケルの曲をカバーしたクインシー会心のディスコヒット。全米ダンスチャートで5位になっているが、日本ではオリコンの洋楽チャートで12週連続1位という圧倒的な人気を獲得した。この曲が収録されたアルバム『愛のコリーダ(原題:The Dude)』は、ハービー・ハンコック、ルイス・ジョンソン、スティービー・ワンダー、パティ・オースティン、マイケル・ジャクソン、ジェイムス・イングラムなどをゲストに迎えて制作されており、3.と同じようにクインシー人脈で固められている。それにしても、この曲はディスコ作品としては完璧な仕上がりだと言えるぐらいの内容だろう。クインシーのディスコ音楽関連作品としては、マイケル・ジャクソンの諸作品と並んでベストに挙げられるナンバー。曲調やアレンジはアース・ウインド&ファイアのスタイルを感じさせるところがあって、それだけEW&Fのディスコへのアプローチが的確だってことなのだと思う。これも、ディスコでは12インチシングルのロングヴァージョンが使われていた。

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著者:河崎直人

OKMusic編集部

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