KC&ザ・サンシャイン・バンドの極め
つけディスコヒット5曲

70年代中期、ポップで明るいディスコサウンドを提供し続けたKC&ザ・サンシャイン・バンド

南部ソウルのレーベルTKレコード内で結
成されたグループ

渋い南部ソウルのレーベル「TKレコード」の社員ハリー・ケイシーと、同社で敏腕レコーディングエンジニアとして知られたリチャード・フィンチの白人ふたりが中心となって73年にKC&ザ・サンシャイン・バンドは結成される。その後、同レーベルの専属ミュージシャンとして活躍していたジェローム・スミスとロバート・ジョンソン(どちらも黒人)を加えて、白黒混合のファンクグループとしてスタート。同年にデビューシングル「Blow Your Whistle」をリリース、新人ながら全米チャートの27位に食い込むヒットとなった。
74年、ケイシーとフィンチが書いた「ロック・ユア・ベイビー」をジョージ・マクレーが歌い、アメリカやイギリスなど11カ国でチャートの1位に輝き、彼らの名は広く知られるところとなる。セカンドとなるシングル「Sound Your Funky Horn」(‘74)をリリースすると、イギリスではチャートの17位まで上昇(アメリカでは21位)し、フロリダのグループらしいポップなファンクサウンドで確実にファンを増やしていく。続く「Queen Of Clubs」(’74)も好セールス(全米25位、全英では7位)を記録し注目が集まった。この時点では、本国アメリカよりイギリスでの人気が高かった。

そして、いよいよ全世界に彼らの名を轟かせる75年の2曲が生まれる。その2曲が「Get Down Tonight」と「That’s The Way I Like It」だ。特に後者はアメリカだけでなく多くの国でチャートの1位となり、彼らの代表曲というだけでなく、ディスコ音楽の代表曲として現在まで愛され続けている。日本でも未だにこの曲はオンエアされることが多いので、誰が歌っているかは知らなくても「この曲、聴いたことがある!」という人は多いはずだ。

76年になっても「That’s The Way I Like It」と同傾向の「Shake Your Booty」が大ヒットするが、77年に「I’m Your Boogie Man」「Keep It Comin’ Love」の2曲をチャート1位に送り込んだ後は人気が低迷、彼らの勢いに陰りが見られるようになる。80年代に突入するとユーロビート勢に押された上、TKレコードの倒産もあって、彼らの活動はストップしてしまう。その後、90年代に復活するのだが、やっぱり彼らの最高の時代は70年代中期だと僕は思う。

KC&ザ・サンシャイン・バンドは、ケイシーとフィンチのふたりの白人が曲を作っていたこともあって、黒人のファンクグループにはないポップさと、乾いたファンクサウンドが特徴であった。彼らの音楽をはじめとするTKレコード制作のアルバムは「マイアミ・サウンド」と呼ばれ、今でも多くのファンが世界中に存在している。

さて、それでは、彼らの極めつけディスコヒットを5曲セレクトしてみよう。

1. 「Sound Your Funky Horn」(‘74)

ミディアムテンポの明るいナンバー。スライ&ザ・ファミリー・ストーンにインスパイアされたと思われるロックフィールを持ったダンスチューンで、リチャード・フィンチのよく歌うベースが良い味を出している。この曲が本国よりイギリスで人気が集まったのは、アヴェレージ・ホワイト・バンドやココモのようなパブロック的な雰囲気があったからかもしれない。マイアミサウンド特有の軽めのノリは踊るのに適したサウンドだと思う。

2. 「Get Down Tonight」(‘75)

彼ら初のチャート1位シングル。この曲は3)と同じく彼らの代表曲のひとつで、ここでもフィンチのベースプレイが光っている。ディスコでヒットしたのは、曲が単調で大きな変調がないことがその理由だろう。座って聴いているとあまり面白くないが、ダンスのためであればちょうど良いグルーブ感になるのだから不思議なものである。当時最先端の楽器であったシンセサイザーの音がチープで、浮いてしまっているのはご愛嬌。当時はキーボードの音がベンドされているだけで唸ってしまう時代なだけに、そのあたりは目をつぶってあげたい。

3. 「That’s The Way I Like It」(‘
75)

彼らの名前を全世界に轟かせた大ヒット曲。今でもディスコ音楽を代表する曲として全世界で愛されているが、やっぱりこの曲が彼らの最高の成果だろう。楽曲の完成度は高く、ホーンのアレンジをはじめ何度も出てくるリフの部分もシンプルだがよく練られていると思う。ケイシーとフィンチのソングライティングとアレンジの才能はまさにプロフェッショナルで、ディスコ音楽を専門にしていなければ、もっと幅広い楽曲を作れたのではないかと考えてしまう。これは、“踊らせる”ことを一番に考えなければいけないディスコ音楽制作の難しさでもある。

4. 「Shake Your Booty」(‘76)

3)と並び、彼らの本領が発揮された名曲。覚えやすいサビのフレーズとホーンセクションのリフは、みんな踊りながらディスコ内で合唱していたはず。グループの演奏は熱くなりすぎず、抑制したグルーブを提示する。軽いタッチではあるものの、煽るような歌詞と正確なタイム感の中に、ディスコ音楽でトップに到達した彼らの自信さえ感じる。確かに、このナンバーは踊るために必要なポイントを全て押さえた作品で、ディスコ向けの楽曲としては最も完成度が高い曲のひとつだろう。

5. 「Keep It Comin’ Love」(’77)

彼らの全盛期では最後期の大ヒットナンバー(全米1位)。リズムは跳ねているがファンクの要素は後退し、これまで以上にポップ感覚を前面に押し出した作品となっている。中米のトリニダード・トバゴ付近で生まれたカリプソ(1)やソカ(2)に影響されたようなサウンドだ。実はシングル作品には少ないが、このスタイルは彼らが得意としたサウンドのひとつで、ワールドミュージック的なスタンスは、中米に近い南部フロリダ州だからこそ生まれたものだろう。ディスコのような室内よりは、海岸のような野外で踊るのに適した曲かもしれない。

著者:河崎直人

OKMusic編集部

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