【GLAY インタビュー】
今、GLAYはどういう方向へ
向かっているのか?
小さな力で少しでも未来の行く末、
その角度が変わってくれたら
さっきJIROさんの名前も出ましたけど、今回のベースもいいですね。JIROさんに関して言えば、とりわけ『FREEDOM ONLY』から実にいいフレーズを聴かせるようになった印象があります。
“ライヴができれば最高だよ”っていうヤンチャだったのが、今はレコーディングに向かい合ってる感じがすごくありますよね。“ベースとは?”みたいなね。
とてもいいうねりがあるフレーズを弾かれてますよね。「Only One,Only You」以外にも、「GALAXY」のBメロもCメロもすごく気持ちが良い。
個人的にも『FREEDOM ONLY』からガラッと変わった印象がありましてした。
やっぱり打ち込みに関係しているのかな? ここ最近は打ち込みを使うことが多かったですから。逆に言うと、永井さんの生のビートに掻き消されていたものがあったかもしれない。もちろん、それはそれでライヴの気持ち良さがあったんだけど、打ち込みで出せるグルーブの発見みたいなものがあったのかもしれないですね。
先ほども言いましたけど、無機質なビートを有機的にするために…ということですね。
そうですね。そこに重なってくるギターとヴォーカルを含めてパッケージになることを考えると…まぁ、普段あんまり言葉にすることはしないけど、相当な努力があると思います。
一方、TERUさんの歌はどうでしょうか? 歌のうまさは今さら言うことでもないですけど、函館でレコーディングするようになってから何かが明らかに変わりましたよね。
それ、僕にもありますね。端的に言って函館は乾燥している…それは絶対に音楽の現場においてプラスにしかならないと思っています。少なくともGLAYにおいては。それがいいんだろうし、感覚的に空気が新鮮だったりきれいだったりすると音もダイレクトに伝わるだろうし。自分も昔は “どこで録っても同じだろう”と思う派だったんですよ(笑)。でも、TERUの歌が明らかに変わってきた感じがあるんで、そこで変な詮索はせずにそのまま進めようという…そんな考えに落ち着きました(笑)。
そうですか(笑)。生まれ育った場所で録るというところで、メンタル面への影響もあるのかと自分は思ってました。
リーダーは“やりたい時にやって、休みたい時に休めばいいから、その辺がいい方向に作用しているのではないか”とおっしゃっていました。
そうですね。やっぱり音楽とかクリエイティブなことに関して言うと、影響しないものってないと思うんですよ。場所、環境、時期、気温、湿度…全てが味方している。“だったら、そこでやればいいじゃない?”という。それだけのことだったんですけどね。本人も函館に自分の歌を収録する場所を作るという意味が、ここまで大きかったとは思っていなかったんじゃないかな?
結成から30年以上経ち、もはやメンバーそれぞれに住んでいる場所も環境もバラバラですけど、それでもこうしていい音楽が作れているというのはいいことですね。
GLAYがやることはそれしかないので(笑)。“地元にスタジオを作ってそこで録ったらいい音で録れたんです”…それを証明するというね。みんなが聴く形態にはいろんなものがあるじゃないですか。配信もあるし、CDもある。“だから、こうすればいいんだ”みたいな。これから始める人だったり、今何となくレコーディングに煮詰まっている人だったりにとっては、いいヒントになるんじゃないかな? “TAKUROが暮らすロスとは離れてても、これだけエモーショナルな活動ができています”“函館にスタジオを作ったらこんなに艶っぽい歌が録れるんですよ”って。それをやっていくのがGLAYなんじゃないかと。
今回のシングルの表題作についてもう一点。TAKUROさんの歌詞に対してHISASHIさんが思うところを聞かせてください。
フォーカスするポイントがTAKUROっぽい感じはしましたね。誰しもが思っていることだと思うんだけど、“これだけの情報社会の中で、本当にこの戦争を正義だと思ってやっているんだろうか?”って。もちろん自分が置かれている環境の中では正義なんだろうけど、その辺の憤りですかね。それを僕はどう考えても答えが出ないもので。だって、こちらは正義だと思っていても、生まれた環境と置かれた立場を考えるとひと筋縄ではいかなくて。音楽で平和になるとも思っていないし、戦争が終わるとも思っていないけれど、小さな力で少しでも未来の行く末、その角度が数ミリでも変わってくれたらいいなという想いでやっているのは、僕もTAKUROと一緒ですね。
《Only We Can Dream A Dream》というフレーズがありますが、個人的にこれはアーティストが言わなきゃいけないものだと思っていまして。HISASHIさんがおっしゃったとおり、これを演奏したからと言って、明日戦争が終わるわけではない。でも、夢は見続けなくちゃいけないし、言い続けなくちゃいけないと思うんです。
そうですね。“音楽で変えられない”とは言いましたけど、それが微力だったとしても、世界は変わってきたと思うんですよ。The BeatlesやThe Rolling Stones、全てのアーティストの力によって若者の気持ちは動いたと思うし、それを信じたいですよね。
ベトナム戦争の終結にはそれがあったかもしれないですね。
そうですね。平和ボケしていると言われるけれども、そういったものを信じられなかったら音楽なんて…ね。
それは圧倒的に支持します。“頭の中はお花畑”なんて言う輩もいるようですが、“お花畑”で結構じゃないですか。頭の中が殺伐としてたら、もっと殺伐とした世の中になるんじゃないでしょうか。
そうですよ(笑)。メンバーはみんなそうなんですけど、子供がいて、彼ら彼女らの未来が少しでも良くなることを考える方向に、ある時期からシフトが変わっていくわけですよ。そうなると、もう他人事じゃないですから。