英国ロイヤル・バレエの豪華トリプル
ビル『バーンスタイン・センテナリー
』いよいよ映画館上映へ~作曲家の神
髄に迫る好演

バレエ、オペラともに世界最高の名門歌劇場、英国ロイヤル・オペラ・ハウスの人気公演の舞台映像を全国の映画館で上映している「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18」。2018年6月8日(金)からは、作曲家レナード・バーンスタインの生誕100年を記念したトリプルビル『バーンスタイン・センテナリー』が全国順次公開となる。
今シーズン9作目となる『バーンスタイン・センテナリー』は、偉大な作曲家レナード・バーンスタイン (Leonard Bernstein、1918年8月25日 - 1990年10月14日)の生誕100年を記念し、ウェイン・マグレガー、リアム・スカーレット、クリストファー・ウィールドンという3人の鬼才振付家による個性的なバレエを一度に体験できるトリプルビルだ。
【動画】『バーンスタイン・センテナリー』本国予告

バーンスタインはニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を務めるなど指揮者として名高い一方、ミュージカル史上の金字塔ともいうべき「ウエスト・サイド物語」(1957年)など作曲家としての功績も絶大だ。日本とも縁が深く、毎年札幌で開催される国際教育音楽祭、パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)はバーンスタインが1990年に創設した。また、彼の門下をくぐった日本人指揮者として小澤征爾、大植英次、佐渡裕がよく知られている。今、世界各地で各種の生誕100年記念のイベントがおこなわれ、オペラとミュージカルとダンスが融合した難曲「ミサ」(1971年)が上演されたり、彼の手掛けた交響曲・管弦楽曲や映画音楽、舞台音楽などの演奏を通じて、このところ再評価が一気に進められている。
作曲家・指揮者・ピアニストと何役もこなし、同時代に活躍した指揮者カラヤンらと並び称されることの多いバーンスタインだが、『バーンスタイン・センテナリー』を企画したロイヤル・バレエ団の芸術監督ケヴィン・オヘアは、「彼は素晴らしい作曲家。彼のリズム感やその複雑さは、多くの芸術家や振付家を魅了し、想像力をかき立ててくれる。バーンスタインの”作曲家”としての才能をもっと知って欲しい」と話す。そして今回の3作品で使用される楽曲はいずれもバレエ音楽ではないものの、リズミカルで美しい旋律が印象に残る楽曲ばかりだ。
「幽玄」Yugen. Artists of The Royal Ballet (c) ROH, 2018. Photographed by Andrej Uspenski
ウェイン・マグレガーの手掛けた新作「幽玄」は、「チチェスター詩編」(1965年)を基に日本の美学を表現したとのことではあるが、随所でミュージカル的な躍動感を感じさせる。上映映像の中でバーンスタインの友人で伝記を著したハンフりー・バートンは、「ウエストサイド物語」で不使用となった断片が「チチェスター詩編」で使用された可能性について示唆している。この話はとても興味深い。また、宗教曲とミュージカルの交わりという意味では前述「ミサ」を彷彿とする向きもあるのではないか。
「不安の時代」The Age Of Anxiety Sarah Lamb & Alexander Campbell (c) ROH. Ph Bill Cooper
リアム・スカーレットがバレエ化した「不安の時代」(交響曲第二番、1947年-1949年/1965年改訂。ロイヤル・バレエ団によるバレエ作品としての初演は2014年)も、ジャズの要素が濃厚なピアノ協奏曲風な音楽だ。ここでの軽快なダンスに相応しくあるよう、スカーレットはダンサーたちからトウシューズを脱がせたと語っている。
「不安の時代」Tristan Dyer in Liam Scarlett's The Age of Anxiety (c)ROH 2014. Photographed by BIll Cooper
クリストファー・ウィールドンが今回の新作「コリュバンテスの遊戯」で使用した楽曲は「セレナード(プラトンの饗宴による)」(1954年)だ。この曲には、3年後の1957年に発表されることになる「ウエスト・サイド物語」の或るナンバーを予感させる要素が感じられる旨を、ウィールドンが指摘している。
「コリュバンテスの遊戯」Corybantic Games. Artists of The Royal Ballet (c) ROH, 2018. Photographed by Andrej Uspenski
オヘア芸術監督は「バーンスタインといえばダンス。しかし今まで当バレエ団は「不安の時代」しか手掛けてこなかった。彼の作品をもっと扱いたいと思った」と、生誕100年記念のタイミングで新作を発表した理由を映像の中で述べている。結果として数ある世界中のバーンスタイン100年企画の中でも、作曲家の神髄に迫る、非常に意義深い公演となったのではないか。
着想を得てから上演までに3年半を要したというだけあり、振付から衣装・照明・舞台美術・そしてダンサーまで、英国ロイヤル・バレエ団が総力を上げて作り上げた様子がスクリーンを通しても伝わってくる『バーンスタイン・センテナリー』。出演ダンサーには多くの人気プリンシパルが名を連ね、日本人プリンシパル高田茜&平野亮一、日本人アーティストの桂千里も出演してる。
なお、この上映シリーズは、『バーンスタイン・センテナリー』から、2018年3月29日にオープンして評判を集めている「TOHOシネマズ 日比谷」が上映劇場に加わる。臨場感たっぷりの音響&大スクリーンだからこそ味わえる、至福の3時間。この機会に、バーンスタイン✕英国ロイヤル・バレエ団の世界を堪能してみてはいかがだろうか。

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