L→R 桐木岳貢(Ba)、柳田周作(Vo)、黒川亮介(Dr)、吉田喜一(Gu)

L→R 桐木岳貢(Ba)、柳田周作(Vo)、黒川亮介(Dr)、吉田喜一(Gu)

【神はサイコロを振らない
インタビュー】
アルバムを完成させたことで
初めて音楽家として自信を持てた

メジャーデビュー曲「泡沫花火」から最新の「イリーガル•ゲーム」、さらに言えばコラボ楽曲「初恋」「愛のけだもの」まで、凄まじい音楽性の振り幅とチャレンジを続けてきた“神サイ”こと神はサイコロを振らない。満を持してのメジャー1stフルアルバムとなる『事象の地平線』は新曲も含め、彼らの全容が掴める内容に。バンド形態の可能性を拡張する2CDの大作についてメンバー全員に訊く。

初めて自分の曲を
俯瞰で見れた

2CDで20曲を聴かせる物語性と曲の強さがあるアルバムですが、長期に渡ってリリースしてきた楽曲を収録した理由というのは?

柳田
僕らはメジャー以降、フィジカルで出しているのが「エーテルの正体」(2021年3月発表のシングル)しかまだないんです。デビュー曲の「泡沫花火」から一曲一曲が自分の子供のように可愛くて、配信での単曲リリースが多かったぶん、一曲に懸けるみんなのモチベーションというのは常にマックス値で毎回注ぎ込めたんですね。で、そんな曲たちをデジタルリリースだけで終わらせるのではなく、形として残してあげたかったんです。そうなってくると「泡沫花火」から「タイムファクター」まで14曲もあるぞと。これを全部入れちゃうとフルアルバムになるし、それらを作った上で今の神サイで表現できることもたくさんあるからっていうので新録曲もたくさん作って、この2CDという形態になりました。

フルボリュームで考えた時にアルバム像みたいなものは描けました?

柳田
最初は全然想像がついていなかったし、新録曲のデモを作り終えた段階でもイメージが湧いていなくて。ある程度、新録曲のアレンジも進んだレコーディングの前ぐらいに、曲順をとりあえず決めなきゃってなったんですけど、一瞬で決まっちゃったんですよ。というのも、一番最後の「僕だけが失敗作みたいで」はフルアルバムを作るってなった段階から自分の頭の中でなんとなく雰囲気は出来上がっていて、最後の曲として作ろうという想いで作り始めたんです。で、予定どおり20曲目にこれを置いて、そのフィナーレから曲順を逆算式に“この結末に向かうには起承転結の承をどうしよう? 転をどうしよう?”と考えたら一瞬で決まっちゃって。

すごくいい流れですもんね。

柳田
さらにマスタリングの日、明確に自分の中でどういう作品ができたっていうのが定まりまして。一曲一曲にドラマがあって、どの曲がどうこうっていうよりも、曲を作っていた時の時系列みたいなものが頭の中で浮かんで…“あの時、n-bunaさんとアユニさんと作ったなぁ(アユニ・D(BiSH/PEDRO)とn-buna from ヨルシカとコラボした「初恋」)”とか“キタニと作ったなぁ(キタニタツヤとのコラボ曲「愛のけだもの」)”とか“「1on1」は初めて少女漫画に向けて曲を書いたなぁ”とか。そういう自分の中での思い出みたいなものを振り返りながらも、10曲目の「徒夢の中で」がアルバムの流れで聴くとあまりにもすごすぎて。なかなか同世代でここまでの表現ができている人はいないんじゃないかっていうぐらい、初めて自分の曲を俯瞰で見れた気がします。そこから最後の「僕だけが失敗作みたいで」まで、“すごいものを作ってしまったかも!?”と。これだけの振り幅を何の違和感もなく最後まで通して聴ける作品を作れたことに対して、初めて音楽家として自分に自信を持てたというか…それがマスタリングの日だったんですけど、7年目にして初めて自分の音楽の良さに気づけたっていうのはありますね。改めてこの20曲を聴き終えて、パズルのピースがはまったような気がしていて。

「僕だけが失敗作みたいで」という曲の着想は何だったんでしょう?

柳田
今一番リアルな自分を落とし込める曲が作りたくて。たぶんこのアルバムの中のどの曲より生々しいと思うんですよ。それは歌詞にしても。「目蓋」や「プラトニック・ラブ」は柳田周作っていう人間のパーソナルなことをひたすら綴っている曲なんですけど、そういう曲で27歳の自分の究極形態をこの初めてのフルアルバムに落とし込みたいっていうのが、アルバムの話が始まった辺りからずっとあったんです。やっぱり自分に自信がなかったというのもあるから、必然的にこういう歌詞にもなっちゃって。でも、だからこそ俺にしか書けない歌詞だし、嘘偽りがないというか、一番シンプルな言葉で書き綴れて。それがこのいろんなことにチャレンジし続けたバンドの1stフルアルバムの一番最後を飾ってくれるというのが…ある意味、誰かに向けてとかじゃなくて自分達のエゴのために音楽を作れたし、それで完結させるっていうのが自分の中ではしっくりきたんですよ。それって「目蓋」もそうだし、「夜永唄」で歌ってることもそうだし、誰かのためっていうよりも自分達のエゴを貫き通すほうが、逆に誰かに刺さったりするんじゃないかなって。

なるほど。アルバムに収録したことで改めて聴いてほしい曲とその理由を教えてもらえますか?

黒川
いっぱいあるんですが、一番は「少年よ永遠に」ですかね。これ、初めてメンバーで一発レコーディングしたんですけど、ドラムはほぼ8ビートしかやっていないんですよ。神サイの楽曲はいろんな表現が必要だからいろんなことをやるんですけど、ひとりのドラマーとして自分のビートで説得力のあるものを叩きたいところがあったんで、それが表現できたのが「少年よ永遠に」なんです。ドラムのサウンド感にもめちゃくちゃこだわったから、これは自信を持って“聴いてください!”って曲です。
桐木
さっきも話に出ましたけど、俺は「僕だけが失敗作みたいで」はこのアルバムだけじゃなくて、最初にバンドを組んだ時から今までの集大成みたいな感じがしていて。歌詞もらしいし、音の作り方もらしいし、コード感もらしいし…メジャーになっていろんな変化に前向きにチャレンジしてきたんで、そういう良さも全部詰め込まれているなと。マスタリングで大きなスピーカーで聴いた時、すごく感動しましたね。誰かに“何を聴いたら神サイが分かる?”って訊かれたら、俺は「僕だけが失敗作みたいで」だと思います。

吉田さんはいかがですか?

吉田
難しいんですけど…昨日の取材で柳田さんが“神サイの求められる楽曲、需要みたいなものはどこから生まれるんですか?”と訊かれていて、本人は“分からないですね”と言ってたんですね。俺、その時は言わなかったんですが、等身大なところな気がするんですよ。神サイの楽曲ってタイトルはスケールがでかいのに歌詞は等身大で、自分の半径が分かるというか、イメージがすごく湧くんですよ。そういう意味で「あなただけ」はかなり自分に近いのかなと。共感性もかなりあるし、個人的にもすごい好きな曲ですね。しかも、サビでガッて明るくなる曲って意外となかったし。そういう意味では、自分らの中でも変化がある曲だと思いますね。

アルバムで初めて出会う人に“こういう神サイもあるんだよ”という意味で聴いてほしい曲はありますか?

柳田
これはメンバーみんな言ってるんですけど、「導火線」がマスタリングで聴いた時にカッコ良すぎて! 曲自体がカッコ良いんですけど、この曲に関してはミックスがすごく良くて。ビリー・アイリッシュ的なウィスパーをパン振り(パン=音の左右の定位)で散らしたり、音の閉じたり開いたりっていう瞬間が多い曲で。ヘッドフォンだったり、でかいスピーカーで聴けば聴くほど、この曲に散りばめられてる面白いアイディアが聴けるし、耳がいい人ほど聴いていて面白い気がしますね。
桐木
「愛のけだもの」は俺ら4人だけではできない音楽だったんです。でも、アルバム聴き返すと、俺ららしさも落とし込めたと思うし、これから先もこういう感じの曲を作りたいって気持ちは芽生えてきましたね。このファンクな感じとか。
黒川
「タイムファクター」は自分の中で大事な曲というか、ドラムに関してなんですが、いいものを作りたいがゆえに柳田と言い合いをすることがあったんですよね。それだけ思い入れも強くなったし。

議論が交わされていたんですね。

黒川
めちゃくちゃ交わしましたね。だから、こだわりもどんどん強くなっていったし、サウンドに対してもドラムのアンビ感はエンジニアさんに“そこはちょっと大事にしてほしいです”と話もしていたんで、「タイムファクター」は特にドラムを聴いてほしいですね。
L→R 桐木岳貢(Ba)、柳田周作(Vo)、黒川亮介(Dr)、吉田喜一(Gu)
アルバム『事象の地平線』【初回限定盤】(2CD+DVD)
アルバム『事象の地平線』【通常盤】(2CD)

OKMusic編集部

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