L→R 桐木岳貢(Ba)、柳田周作(Vo)、黒川亮介(Dr)、吉田喜一(Gu)

L→R 桐木岳貢(Ba)、柳田周作(Vo)、黒川亮介(Dr)、吉田喜一(Gu)

【神はサイコロを振らない
インタビュー】
どのジャンルに振りきっても
成立できるバンドになりつつある

当時点でのバンドの集大成的なアルバム『事象の地平線』(2022年3⽉発表)とツアーやフェスを経て、ジャンルに拘泥しない自信を身に着けた神サイ。2022年11月、12月、2023年1月に“Monthly Winter Release 冬の大三角形”と題して配信シングルを発表し、それぞれ全曲異なる色合いや質感にチャレンジしている。第一弾の「キラキラ」、第二弾のasmiをフィーチャーした「朝靄に溶ける」、最後を締め括る「夜間飛行」それぞれの成り立ちとは?

ロックでありポップである
立ち位置って輝いている

3カ月連続シングルっていうのは決まっていたんですか?

柳田
Zeppツアー自体がもう決まっていたんで、夏フェスを経てどういう曲が今の神サイに必要なのかを模索しながら作りました。それで見事に「キラキラ」がアッパーで「朝靄に溶ける」がバラードで「夜間飛行」がミドルの踊れる曲になっているんで、単に3カ月連続リリースじゃなくて、神サイらしく“冬の大三角形”と題して打ち出したほうが面白いという話もしたりしていましたね。

アルバムツアーと夏フェスも含めてひとつのタームっていう感じだったんですか?

柳田
そうですね。2022年は本当にライヴ三昧だったというか、『事象の地平線』ツアーが5月から始まって7月にファイナルがあって、夏フェスを頑張って。

ずっと見ている人はもちろん、フェスに来る新しいお客さんとかにも見てもらったわけで、ひとつ答え合わせができたと思うんですけど。

柳田
昔は陰だったのが、今は陽ではないかもしれないですけど、ポップスをたくさん作るようになって。夏フェスを経てサブスクでは顕著に月間リスナーも増えて、神サイはジャンルを決めなくて良かったというか、どのジャンルに振りきっても成立できるバンドになりつつあるという実感がありましたね。
黒川
ツアーとフェスをやって思ったのは、僕のドラムの師匠に言われた“ライヴは8割はドラムで決まる”って言葉を実感したんですよ。自分が“今日は良かった”と思う日は外から見ても“良かったよ”って言われて、自分が“今日はあんまり良くなかったかもな”ってなった時は、“今日なんか微妙だったね”っていうふうに言われて、それが結構一致していたんです。なので、答え合わせができたというか、責任もさらに感じるようになったし、“もっと頑張んないとな”ってなりましたね。
桐木
僕も同じかもしれないですね。亮介が8割って言いましたけど、お客さんのノリ方を見て、ノッていなかったらベースのせいだというのを実感して。だからこそ、責任も増えたし、“もっと頑張らなきゃ!”っていうのはすごく芽生えました。ドラムとベースで100まではいかないですけど、いいライヴに直結するのはそこなのかなって。

初見の人にしてみたらそうかもしれないですね。吉田さんはいかがですか?

吉田
お客さんとか会場に合わせてアプローチを変えていくことが増えた気はしますね。エリアごとにお客さんの個性がすごくあるし、そこに合わせて前日からイメージしたりとか、いろいろやってはいます。

その中で増やしていきたい曲っていう感じだったんですね。

柳田
例えば「キラキラ」だったら、神サイのアッパーは「巡る巡る」(2021年4月配信シングル)がありますけど、もうワンフック入れたいというか。「キラキラ」はBPM185ぐらいでスピード感のあるロックチューンなんですが、ただのロックじゃないというか。

「キラキラ」って無防備な子供時代のことを思い出していて、そうありたいということは逆説的に大人になったということでもありますね。

柳田
確かに(笑)。さっき公園でTikTokの動画を撮ってきたんですけど、保育園の公園タイムに出くわして、しばらく様子を観察していたんですよ。そしたら絶叫しながら走り回ってる女の子がひとりいて、その子、めっちゃ笑っているんですよ。叫びながら走り回るのが楽しくてしょうがないみたいな。それって大人になるにつれてちょっと近づきがたい人っていうか…28歳の男が絶叫しながら公園をひとりで走り回っていたら(笑)、普通は近寄らないじゃないですか。でも、子供の頃って無限大というか、俺は走り回りたいわけじゃないですけど、その気持が“素敵やなぁ”って思いました。

(笑)。この曲は中学、高校時代のニュアンスがありますね。

柳田
16歳ぐらいの頃からのつき合いで、未だに仲が良いグループがあるんですね。高校時代、そいつらとに真夜中に学校に侵入して全裸でプールで泳いだり…それこそ今やったら捕まりますけど(笑)。でも、ストッパーがない、制限がない世界で生きていた頃じゃないですか。何をやっても輝いてるっていう。感覚的に言うと、善悪だけで判断したくないっていうか、感情のままに曲を作ってみるとか、ライヴしてみるとか、大人になってもそういう瞬間って…特に表現者としては大事だと思ったんですよね。『事象の地平線』のツアーの時も、いいライヴをした時って記憶がまったくなくて。きっとそういう時って考えて行動していないので、その瞬間は大事にしたいと思います。

演奏は細かいことを考えずに痛快な感じがしますが、ギターの音色はこの曲のイメージを決定すると思いました。

吉田
レコーディングはいろいろ試しました。レスポールで音作りしたり、ジャズマスターでもやってみたり、いろいろやった中で、やっぱり俺らはシングルコイルというか、テレキャスのシャキッとした音がいいみたいな感じで、今回の音作りも時間を結構かけました。アレンジャーさんとディスカッションしながらやっていますね。

12月リリースの「朝靄に溶ける」のとっかかりは、やはりasmiさんとのコラボってことですか?

柳田
そうですね。曲先行でなく、asmiさんと一緒に歌いたいっていう。asmiさんがMrs. GREEN APPLEさんとコラボしている「ブルーアンビエンス」のライヴ映像がYouTubeに上がっていて、そのasmiさんは単体も素敵だし、asmiさんの声って男性の声と交じると、より深みを増して切ないし、儚くて消えていきそうな感じがめっちゃ好きなんですね。たぶん僕と声の相性もいいだろうと直感で思ったので、結構アタックしたんですよ。で、asmiさんが一緒にやってくれることになって、そこからはasmiさんのことだけを考えて曲を書くみたいな。半分ラブレターみたいなところがあります(笑)。

神サイの音像ってわりと冬っぽいと思うんですけど、この曲は特にそれを感じました。

柳田
この曲にはトオミヨウさんが編曲で入ってくれたんですけど、トオミさんってエレクトロであり、シンセの音の選び方がうまくて。最初に出てくるピアノはもちろん、Bメロやサビ中に出てくる音が入ってるんですけど、それがめっちゃ冬を感じさせるんですよ。寒い冬に外でブルブルと震えながら白い息を吐いている情景が、そこでパッと浮かぶっていうか。「カラー・リリィの恋文」(2022年7月発表の配信シングル)っていう夏に出した曲もトオミさんで、あれは夏曲だから、トオミさんに夏曲と冬曲どちらも編曲してもらったことになるんですけど、どっちもすごく季節感が出ていて、ほんとにあの人はすごいと思いますね。

これは柳田さん以外の3人にお訊きしたいのですが、この曲で柳田さんのヴォーカルの新しい側面が見えたような気がするんですよ。

黒川
レコーディングの時に聴いていたんですけど、歌い出しの引き込まれ方がすごくて、“やっぱいい声だなぁ”って改めてめっちゃ感じましたね。asmiさんとの相性も良かったし。
柳田
思い出したんですが、家録りの感覚で歌っていました。今は防音のスタジオがあるんですけど、ちょっと前まではボロアパートで制作もしていて。ボロアパートなんで壁薄いじゃないですか。だから、大きな声でデモが作れないんですよ。声を引っ込めながら仮歌を入ていた感じがデモの段階から良かったんで、本番でもそうしようと思って、確かにそれを意識しましたね。

言いたいことを伝えるというよりも独り言に近いですし。ちなみにasmiさんが歌詞を書いたところは彼女が歌ってるところですか?

柳田
きれいに2番ですね。

この歌詞って別れの予感もあるけど、ふたりだけの世界の空気感がすごくありますよね。

柳田
そうですね。この間、MVの撮影現場にメンバーみんなで行ったんですけど、その現場が都内で家賃4万円ぐらいのアパートで、しかも和室で。そのセットの世界観がすごく合っているなと。素朴なふたりの、タワマンではないみたいな感じが(笑)。

みなさん、繊細なプレイをしていますね。

黒川
asmiさんのパートからドラムのロールが入ってくるところは、そこは小さい音なんですが埋もれたくないっていうか、埋もれないためにしっかり音を出さないといけないから、そのさじ加減が難しかったですね。これまでもそういう小さい音の曲はあるんですけけど、こんなに細かいことやっていなかったんで、それは結構チャレンジでしたね。
L→R 桐木岳貢(Ba)、柳田周作(Vo)、黒川亮介(Dr)、吉田喜一(Gu)
“Monthly Winter Release 冬の大三角形”
配信シングル「夜間飛行」
配信シングル「朝靄に溶ける」/神はサイコロを振らない × asmi
配信シングル「キラキラ」

OKMusic編集部

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