小泉今日子の黒猫同盟、ウーマン村本
大輔ら『フジロック』の『アトミック
・カフェ』に集結 “社会の課題”を
考える

日本における音楽フェスの立場が危うい位置に立たされ、開催中止を余儀なくされるケースが後を絶たない。そんな中、開催に向けた準備を進めている音楽フェスのひとつが『FUJI ROCK FESTIVAL』(以下、フジロック)だ。昨年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため延期となったが、今夏は収容人数やステージ数を例年の半分以下に抑えるなどの感染症対策をし、8月20日から3日間にわたって新潟県湯沢町苗場スキー場にて開催される。
フジロックといえば、初開催以降、世界中の至る所からジャンルレスな音楽を日本に上陸させ、多様な音楽とフェス文化をこの国に根付かせた日本音楽フェスのパイオニアであることから、海外アーティストや洋楽のイメージが色濃くある。しかしコロナ禍での“特別なフジロック”となる今年の最終ラインナップには、ヘッドライナーのRADWIMPSKing Gnu電気グルーヴなど日本で活動する146組のアーティスト名が華々しく列挙された。また、開催地の湯沢町が新潟県と調整してフジロック関係従業員らが開催前のワクチン接種完了を目指すなどの開催地域や行政との連携も報じられ、コロナの猛威に緊張が続く中においても各所の真摯な姿勢によって開催実現への期待が高まっている。
さて、世界には様々なカラーを持つ音楽フェスが存在するが、フジロックの特色には音楽以外の様々な分野に取り組み、人々に考えるきっかけを提供するという側面があるのをご存じだろうか。本稿では音楽フェスのメインとされる音楽面ではなく、その側面のひとつにスポットを当てよう。

■フジロックと『アトミック・カフェ』の関係
フジロックは音楽フェスだが、音楽と人だけがある音楽空間ではない。1997年の初開催以来、“自然との共生”を謳い、自然環境や社会の課題を考えるきっかけを提供しているユニークな音楽フェスという一面を持っており、環境・平和・人権などのNGO団体によるステージアピールや、NGOヴィレッジの開設など、様々な社会的活動を紹介する環境を整えてメッセージを発信すると共に、会場内におけるバイオディーゼル燃料や太陽光発電などのクリーンエネルギーの導入・実践を通じて、エネルギー転換をアピールし、自然との共生を目指してきた。
そして初開催から15年目の2011年3月、東京電力福島第一原発の事故が起きた。この事故をうけ、フジロックは80年代から継承される反核・脱原発イベント『アトミック・カフェ』に会場内のNGOヴィレッジ、Gypsy Avalonステージの一部を提供することで社会の課題を考えるムーブメントを応援し始めた。これがフジロックで『アトミック・カフェ』が始まったきっかけである。
こうした経緯により、フジロックでは開催期間中、社会問題を考えるきっかけを与えてくれる場、『アトミック・カフェ』があるというわけだ。そこではアーティスト、活動家、専門家、ジャーナリスト、政治家らが登壇し、世の中に山積している様々な問題についてディスカッションやパフォーマンスで社会問題を考えるきっかけや気づきを与えている。

■『アトミック・カフェ』の歴史
1984年、アメリカ政府の核兵器に関するプロパガンダ映像を集めた映画『アトミック・カフェ』(’ 82)のタイトルを冠した『アトミック・カフェ・フェスティバル』が開催され、加藤登紀子浜田省吾宇崎竜童尾崎豊、ブルーハーツ、ルースターズ、エコーズ辻仁成)をはじめ、海外からもアスワド、ビリー・ブラッグ等のミュージシャンが参加した。そこでは米ソの緊張や原発推進に走る日本の状況を憂い、音楽シーンから反核のメッセージが発信された。今から40年近く前のことである。
90年代に『アトミック・カフェ・フェスティバル』は一旦活動を終えたが、2011年に起きた東京電力福島第一発電所の事故を受け、その思想はフジロックの中で育まれることへと繋がり、フジロック場内のNGOビレッジにて復活。脱原発社会の構築と自然エネルギーへのシフトを発信する場として再起動することになった。
フジロックでは、Gypsy Avalonステージにてトーク&ライブを開催している。近年ではジャーナリストの津田大介をMCに迎え、エネルギー問題はもちろん、安保法制や言論の自由など、あらゆる社会問題にコミット。出演者には1984年開催時に参加した加藤登紀子を筆頭に、TOSHI-LOW、細美武士、後藤正文、マヒトゥ・ザ・ピーポーらフジロックに出演するアーティストや、田原総一朗、奥田愛基(元SEALDs)、玉城デニー沖縄県知事まで様々な分野の人たちが登壇し、それぞれの思想を伝えてきた歴史がある。共感、苛立ち、発見など、聞く者の感情を大きく揺さぶるようなステージ以上に熱いトークが繰り広げられることもしばしばだ。

■今年のフジロック『アトミック・カフェ』のトークテーマは
「原発と政治」「市民と社会問題」「気候クライシスと社会システムのシフト」
東京電力福島第一原発事故から10年となる今年は、原発問題の現状にスポットを当てながら、表現の自主規制の問題、市民が社会問題にコミットすることの重要性や、気候クライシスの向こう側に見えてきた社会システムの問題についてアピールを行う。各日の内容、出演者は次の通りだ。

◎8月20日(金)
・アトミック・カフェ トーク【村本大輔(ウーマンラッシュアワー)】
・ライブ 片平里菜 MC:津田大介
8月20日(金)アトミック・カフェ トーク【村本大輔(ウーマンラッシュアワー)】
初日のトークテーマは「原発と政治」。出演はネットテレビでのコメンテーターとしても活躍している村本大輔(ウーマンラッシュアワー)。ステージではスタンディングコメディアンとして社会問題に切り込む。例年であれば、MCの津田大介とゲストが対談をするトークステージだが、今回は村本大輔のみが登場してスタンダップコメディを行う。ライブステージには福島出身のアーティスト、片平里菜が登場する。

◎8月21日(土)
・アトミック・カフェ トーク【津田大介・小泉今日子・上田ケンジ】
・ライブ 黒猫同盟(上田ケンジとコイズミキョウコ)+ゲスト 渡辺シュンスケ(ピアノ)
8月21日(土)アトミック・カフェ トーク【津田大介・小泉今日子・上田ケンジ】
トークテーマは「市民と社会問題」。市民と社会問題、アーティストが社会問題に対して発言することについて、津田大介、小泉今日子、上田ケンジがトークを行う。ライブステージには、黒猫同盟(上田ケンジとコイズミキョウコ)+ゲスト渡辺シュンスケ(ピアノ)が登場する。
黒猫同盟(上田ケンジとコイズミキョウコ)

◎8月22日(日)
・アトミック・カフェ トーク【津田大介・斎藤幸平】
・ライブ エセタイマーズ
8月22日(日)アトミック・カフェ トーク【津田大介・斎藤幸平】
トークテーマは「気候クライシスと社会システムのシフト」。ベストセラーになった『人新世の「資本論」』の著者、斎藤幸平が登場し、気候クライシスと原発問題、社会システムのシフトについて津田大介と対談。ライブステージには、エセタイマーズが登場する。
世の中には様々な問題が山積しているが、そのほとんどは人間が生み出したもので、何もせずに、いつか消えてなくなるものなどひとつもない。しかし、コロナ以前も渦中の今も、健やかに生きることが容易ではない時代が続く日本では、自分や家族のことで手一杯で、社会や地球規模での問題について対峙する機会を持てない人も多いのではないだろうか。
社会とは、自分とは異なる思想や信念を持つ他者と共生する場。本来ならば、自身が存在する社会についてそれぞれが考え、話し合い、行動し、協力して改善することでより良い暮らしとなるはずだが、そうした話し合いの場が身近にない人もいるだろう。特にコロナ禍では人と触れ合うことが非常に難しい。だからこそ、『アトミック・カフェ』で他人の思想に耳を傾けてみないか。アルバムリリースが発表されたばかりの小泉今日子と上田ケンジのユニット黒猫同盟や、ウーマンラッシュアワー村本大輔の独演会が行われる『アトミック・カフェ』に注目が集まっている“特別なフジロック”のチケットは各プレイガイドで販売中だ。
なお、2021年のフジロックは、人の密集・密接を防ぐため、会場レイアウトの変更やステージ数や収容人数を例年の半分以下に制限するなど、安心安全なフェス開催実現を目指し、開催地域の関係者やアーティスト、スタッフらが工夫を重ねて準備が進められている。オフィシャルサイトには「感染対策ガイドライン」が掲載され、今後リリースされる「フジロック・アプリ」を通じての個人情報登録が必要になることや、当日会場ではLINEを使った「新潟県新型コロナお知らせシステム」を利用することなどもアナウンスされた。なお、『アトミック・カフェ』が行われるGypsy Avalonも例年とは異なる場内最奥地へ移設され、福島をこよなく愛するアーティストで結成された猪苗代湖ズ大友良英GEKIBAN、ムジカ・ピッコリーノ、ケロポンズらの出演が決定している。
文=早乙女’ dorami’ ゆうこ
猪苗代湖ズ
大友良英 GEKIBAN
ムジカ・ピッコリーノ アルカ号の仲間たち
ケロポンズ

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