Hilcrhyme

Hilcrhyme

【Hilcrhyme インタビュー】
Hilcrhymeに関して言うと、
ヒップホップではないと思っている

来年メジャーデビュー15周年を迎えるHilcrhymeが、そのアニバーサリー企画の第1弾として、活動期間別ベストアルバム『BEST 15 2018-2023 -One Man & New Roadmap-』をリリースする。『Hilcrhyme TOUR 2023「走れ」』真っ最中のTOCにインタビューを敢行し、ベストアルバムに絡めて、Hilcrhymeの活動を改めて振り返ってもらった。

“大抵のことが何とかなる”
で人生を過ごしている

来年7月15日に迎えるメジャーデビュー15周年の第1弾企画として、これまでの活動期間を3期に分けたベストアルバム『BEST 15』を3枚連続リリース。なかなか興味深いスタイルではありますが、こうしたベスト盤の制作を考えた経緯、背景といったものを教えてください。

ベスト盤を作ろうというのはレコード会社発信なんですけど、3作に分けるというのは僕の提案です。来年の15周年を1年間続く祭りにするということで3作に分けたっていうのがまずひとつ。あと、15周年なので3で割ったらちょうど5年ずつじゃないですか。振り返ったら、3つに分けてしっくりくる15年間だったという。特に1枚目の『BEST 15 2018-2023 -One Man & New Roadmap-』は分かりやすくて、ひとりになってからの5年間を括ったらの活動期間の3分の1をもう占めているわけで。この期間にアルバムも4タイトル出しているから“ベスト”って言うとちょっと大袈裟ですけど、厳選集みたいなのはありだなと。

選曲はTOCさんご自身でなされたそうですけど、すんなり選曲できましたか?

わりとすんなりいったほうだと思います。代表曲と“これは入れたい”という曲、ライヴで手応えのある曲とか、ベストと言えども伝えたいものはちゃんとあるので、新規の人が聴いて“Hilcrhymeとは?”みたいなものが分かりやすくて、“こういう部分を見せたいんだな”っていうのがちゃんと伝わればいいと思いますね。

シングル曲ばかりを集めたわけじゃないところに、ご本人が選曲したことがよく分かる。そんな気がしますね。

もはやシングルの概念がないんですよね。デジタルリリースがほとんどだし、アルバムのリードとそうじゃない曲の差は少なくなっているんじゃないかなと。

むしろ、シングル、非シングルを意識することなく選曲できたということですかね。で、第1弾の『BEST 15 2018-2023 -One Man & New Roadmap-』はサブタイトルからも先ほどおっしゃられたとおり、ひとりになったことと、そこからの新たな道標が示された楽曲が収録されていることが分かるわけですが、「Good Luck」と「Hill Climb」はマストだったでしょうね。

そうですね。「Good Luck」はあんまりライヴでやる曲ではないんですよ。しんみりしちゃうんで(苦笑)。歓声がひとつもあがらずに拍手だけ…みたいな。あんまりそういうのが好きじゃないし、ライヴは基本的に騒ぐのが好きなので滅多に歌わないですね。

そうなると、余計にこういうタイミングだからこそ入れておいて然るべきだったのかもしれないですね。

はい。曲単体としてはめちゃくちゃいい曲だと思うので、盤として残るものには入れたかったっていうのと、YouTubeでもライヴ動画にもかかわらず再生回数がかなり多いから、それだけ曲のパワーが強いと思うので。

その話を聞いても2018年にHilcrhymeがひとりになったというのは、TOCさんはもちろんのこと、ファンにとっても極めて大きな出来事だったことが分かりますね。

めちゃくちゃ大きいことでしたよね。

その2018年を振り返ってもらうとなると、それこそ少ししんみりとした話になっちゃうかもしれないですけど、あの時、私は取材をさせてもらっていて、TOCさんが意外と冷静だった印象が強く残っています。

めちゃくちゃ冷静でしたよ。ライヴも滞りなかったし、楽曲制作もはっきり言って滞りなくやっていた。

そうそう。まったくバタバタした感じがなかったんですよ。

なかった(笑)。まぁ、今までも急にいなくなるスタッフはもちろんいるわけだし、出会いと別れなんて死ぬほど見てきたわけだから、そんなに感傷的なことは何もないというか。正直言えば、ライヴの時はエモくなったり、元相方がいなくなった直後は現実味がなかったりしましたけどね。だから、砕けて言っちゃうと、あんまり変わっていないんですよね。ふたりの時もひとりになってからも。仕事のパートナーが退社したというか、“それでしかないよな”っていう。

ただ、10周年が終わり、地元・新潟での大きなワンマンコンサートも終えた、大きな節目の直後ではありました。

そのあとでしたね(苦笑)。確かにタイミングは最悪だったんですよ。

冗談めかして言うのもあれですけど、“Hilcrhyme、死闘編に突入!”みたいな感じだったでしょ?

そうですね。戦う感じはありました。

でも、「Good Luck」で別れていった相方に対する想いを綴る一方で、「Hill Climb」ではひとりになっても力強く登っていこうと歌っている。今回改めて聴いても、やっぱりメンタルの強い人であることを確信しますよ。

強いかもしれないですね。あんまり自覚はないんですけど、“大抵のことが何とかなる”で人生を過ごしているので、本当にどんだけ悲劇があっても“まっ、こういうこともあるよね”と。自分の中でよく思うのが、戦争している国とか、明日生きるのも困難なスラムの人たちとか、そういう人たちに比べたら全然大したことない。いつもそういう感覚があって。“世界中どこでもこんなことはあるよね”ってやってきた15年間ですね。それが長くやる秘訣だと思っています。

私ね、その辺をちょっと想像してみたんですけど、TOCさんはずっと剣道をやられていたじゃないですか。武士の精神状態というか、“死ぬことと見つけたり”じゃないですけど、その精神の強さは剣道をやっていたことと関係があるのかなと思っていたところです。

剣道は自分への影響として本当に大きいですね。むしろ、それが全てって言っても過言ではないかもしれないです。ヒップホップの世界は“戦う”という要素がかなり強くて、それが自分の性に合ったと思います。剣道では大成しなかったんですけど、その戦いのフィールドがラップになって音楽の表現になると、自分は負ける気がしない感覚が序盤からあって。その剣道で培った精神性だったり、勝負感だったり、礼儀作法も含めて、そのまま全部が音楽に当てはまった。ヒップホップだからこうだったと思うんですけどね。他のジャンルでは絶対に当てはまらなかったと思う。

実際“MCバトル”なんていうものもあって、まぁ、フリースタイルはTOCさんのスタイルとは違うのかもしれないんですけど、ヒップホップにはそういう一対一で戦うものもありますからね。団体戦ではなく。

そう。個人戦なんです。時に団体を組む時もあるんですけどね。MCバトルは分かりやすくエンタメ化されているけど、アーティスト性の全てを懸けて戦うということですよね。音楽表現もそうだし、ライヴの表現もそうだし、活動の全てがそうで。Hilcrhymeも“地方から成り上がってやろう!”とか“新潟から東京の連中をめくってやろう”とか、そういう精神だったし。で、俺は結構暴走するというか(苦笑)、行くとこまで行っちゃうんで、元相方はそれをうまく包んでくれる人でしたね。日本刀で言ったら鞘のような。

ということはHilcrhymeがひとりになった時点で、抜き身になったということなんですか?

いや、ひとりになってからはその鞘を自分で作れるようになったっていうことですね。元相方がそのやり方を教えてくれて、“こうやったら抑えられる”とか“こうやってまとめる”とか“こういう時はこういう言い方をする”とか…そういう大人な部分を10年くらいかけて俺に教えてくれたのかなと。だから、ひとりでもやっていけると思っています。
Hilcrhyme
アルバム『BEST 15 2018-2023 -One Man & New Roadmap-』【初回盤】(CD+DVD)
アルバム『BEST 15 2018-2023 -One Man & New Roadmap-』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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