TOC

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10年続けられた理由としては
Hilcrhymeがあったからだと思う

J-ROCK&POPの礎を築き、今なおシーンを牽引し続けているアーティストにスポットを当てる企画『Key Person』。第30回目はHilcrhymeとTOC(ティーオーシー)の2軸でJ-POP&ヒップホップ界を走り続けているTOCが登場。ヒップホップと出会った元剣道少年が、10年以上走り続けられた理由を語ってもらった。

TOC プロフィール

ティーオーシー:HilcrhymeのMC、自身が主宰するレーベル『DRESS RECORDS』のレーベルヘッド、そして、アイウェアブランド『One Blood』のプロデューサーとして、多角的な活動を展開。Hilcrhymeとしてメジャー進出し、メジャーフィールドにもしっかりと爪痕を残し、スターダムに登っていったが、その活動に飽きたらずソロとしての活動を展開。2013年10月に1stシングル「BirthDay/Atonement」、14年11月にはソロとしての1stアルバム『IN PHASE』をリリースし、ソロとしての活躍の幅を広げていく。その後、ソロMCとしてのTOC、及び『DRESS RECORDS』がユニバーサルJとディールを結び、メジャーとして活動していくことを発表し、16年8月にメジャーデビューシングル「過呼吸」を、18年1月にメジャー第1弾アルバム『SHOWCASE』をドロップ。メジャーフィールドでポップスター/ポップグループとしての存在感とアプローチを形にしたHilcrhyme、Bボーイスタンス/ヒップホップ者としての自意識を強く押しだしたソロ。これまでに培われたふたつの動きがどう展開されていくか興味は尽きない。TOC オフィシャルHP

二番手の美学みたいなものが
ヒップホップには詰まっている

幼少期は剣道をされていたそうですが、スポーツ少年だったのですか?

まさにそうでした。部活ひと筋な少年で、18歳まで剣道以外の思い出はないです(笑)。

長期休みも剣道場にみんなで集まって練習する毎日だったと。

小学生の頃は剣道場に通っていて、中学では剣道場と部活を両立していました。中学の大会である程度の成績を出せていたのでスポーツ推薦で高校に入学したんです。地元の上越市から新潟市に越境して学生寮に入り、大会を目指して頑張っていましたね。

スポーツ推薦をもらうだけでもすごいことですよね。

新潟県で二番手の高校でしたが、俺は二番手が好きなんです。二番手から這い上がっていくのが楽しくて。それは今もそうなんですけど。

そんなTOCさんが剣道を離れてしまったきっかけは?

限界を知ったからです(笑)。

えっ!? 18歳とかですよね?(笑)

そうなんですけどね(笑)。中学の頃は自分の限界が見えなかったので、上を目指して頑張っていましたけど、高校に入学してすぐの遠征合宿で限界を知りました。うちの高校の監督が東海大学という強豪校のOBで、顔が広かったから遠征はインターハイ優勝校と一緒にやったんですよ。県でも二番手の学校と強豪校と一緒に合宿をするとまったく相手にならないんですよね(笑)。向こうの下位チームとこっちの選抜メンバーでやっと相手になるみたいな。そこで差を見せつけられたし、さらに2年生になると強い後輩が入ってきて。最近まで中学生だった奴に負けるんですよ。そこで選ばれし者とそれ以外の者という感覚を知ってしまい、自分に“10年間、よく頑張った”と言い聞かせて大学では剣道を辞めました。

なるほど。高校で一気にレベルの差を感じたことが要因なんですね。

まさにそうですね。そして、これまでの青春時代を全て剣道に費やしてきたから、大学は思いっきり遊んで(笑)。その結果、音楽に辿り着いて、そこから自分にとっての剣道が音楽に変わったんです

そこまでスポーツひと筋だったとは知らなかったのですが、スポーツ少年がなぜ音楽の道に進んだのかも気になります。大学の学園祭で先輩のライヴを観たことがきっかけでラップを始めたということですが。

4月に入学して学園祭がある10月まで、めちゃくちゃ遊んだんですよ。絵に描いたような大学生の遊びをやり尽くして(笑)。で、半年経って気づいたのが“そこには何もない”ということでした。何かに打ち込んでいた時が一番充実していたと思った時に、ヒップホップであり、ラップに出会って、それから没頭し続けています。いいタイミングで出会えて良かったです。

音楽自体は昔から好きだったのですか?

音楽自体は大好きでした。ただ、洋楽は全然聴いていなかったです。剣道をやっていた時に保護者なども参加する壮行会があったんですけど、そこで学生は人前で度胸をつけるために必ず一曲歌うという習わしがあって(笑)。その会で俺が歌った時に歌がうまかったらしく、一番拍手がでかかったことを思い出したんです。剣道では褒められることがなかったけど、監督が歌に対してはかなり褒めてくれたことを思い出したので、歌とラップを始めたんです。そうしたらDJが流す曲を覚えるために洋楽を聴かなければならなくなって。

ヒップホップだと洋楽は大きなツールになりますからね。

これまでJ-POPしか聴いていない自分の音楽の幅が、その環境のおかげで一気に広がりました。いろいろな国の音楽も聴いて、それを組み合わせてアウトプットするんですけど、それがとても楽しかったです。

J-POPを聴いていて歌を褒められた人が、ヒップホップに出会ったとは言えど、J-POPで歌手になることもできたと思いますが、なぜヒップホップを選ばれたのですか?

学園祭の先輩のステージに衝撃を受けたのもそうですが、俺が好きな“二番手の美学”みたいなものがヒップホップには一番詰まっているんですよ。つまり、劣等感を持った弱者が強者に立ち向かう姿勢とか、レベルミュージックの魅力に惹かれていって。自分の今までの人生に通ずるものがあったし、当時に流行っていたというのもありますね。Zeebraさんが「MR.DYNAMITE」をリリースして、地上波のテレビに出て勢いもありましたから。

そして数年間、ソロ活動を少ししてUSU a.k.a. SQUEZさんに誘われたことでNITE FULL MAKERSに参加されましたが、グループ活動にも興味があったのですか?

当時のUSUくんは新潟県内のヒップホップ界隈では顔役みたいな存在で、自分にとって手の届かない人だったんです。その人が誘ってくれたことを剣道に当てはめると、まさに強豪校から誘いを受けるみたいなことですよね(笑)。だから、剣道の時と同じように、自分がどこまでやれるかを試してみたい気持ちもあって。ただ、剣道と違ったのは、まったく限界が見えないということ。“俺って、この中でも一番うまくないか?”とか、全国に行っても“俺のほうが全然うまいな”という気持ちになって、“ヒップホップの世界だと俺は負け知らずだ”という感覚があったんです。当時から東京で他のアーティストを見ても負ける気がしなかったし、自信しかなかったんですよね。とにかく歌っている時の自分の無敵感が剣道よりも陶酔できたから、これはいけそうだと思いました。

とはいえ、どこかのタイミングで難しさや焦りなどは感じなかったのですか?

なかったですね。NITE FULL MAKERSの時も自信しかなかったですし、負ける気がしなかったな。

メンバー同士、アーティスト同士の喧嘩みたいなことは、TOCさんの周りでありましたか?

ありましたよ! 喧嘩はありましたが、だいたいは俺は説教をする側に立っていました。“リハーサルをもっとちゃんとやろうよ”みたいなことで怒ったりして。俺はその時には音楽で食っていく意識があったので、その意識が弱かったり薄かったりする奴ともめることがありました。

その強い意志は剣道で培ってこられたものなのかもしれませんね。

ただ、NITE FULL MAKERSは表現に関してはカッコ良い奴らの集まりだったので、そこに対するぶつかりはなかったです。お客さんからお金をもらってやる音楽だし、ビジネスで考えると“もっとちゃんとやろうぜ”という気持ちのぶつかりだけでした。

音楽に対してビジネス的な考えが生まれるのが早かったんですね。

その時の俺は大学生ですからね。

自分の活動や自分自身を俯瞰的に見ながら先を考えられる方だからこそ、ファッションブランドやレーベルの立ち上げというビジネスマンとしての一面でも成功されているんだと思います。

今は十代や学生でも活動して稼げているヒップホップアーティストがいますけど、俺も今みたいにマネタイズする方法がたくさんある環境が当時にあれば、絶対に同じような年齢でもっと成功したはずで。音楽で食える人間と食えない人間の差はそこにあると思いますね。いかにお客さんをお客さんとして見れるかどうかが大切ですから。

TOCさんはライヴではもちろん、楽曲やプロモーションでもお客さんを楽しませることを大切にされているので、その思考が大学生の頃からすでに生まれていたんだと思います。

剣道では大きな成績は残せなかったんですけど、実は俺が一番モテたんですよ。新潟県の剣道界で一番いい女をゲットしていて(笑)。つまり、強くはなかったけど、人を引き込む魅力を持っていたんだと思います(笑)。それは大きなことだし、音楽にも通ずるんです。

確かに大切ですよね。意識せずに人を引き込むことは才能のひとつですから。

もちろん意識はしていましたよ。見せ場と思うところで魅力的な技を出したりして。剣道をやる人としてはダメなんですけど、エンターテイナーとしては正解ですよね(笑)。

大正解です(笑)。まさか、この話に剣道時代のTOCさんがつながるとは思いもしませんでした!

あははは! そうですよね、

OKMusic編集部

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