2018年9月2日 at 日比谷野外音楽堂

2018年9月2日 at 日比谷野外音楽堂

【Hilcrhyme ライヴレポート】
『Hilcrhyme LIVE 2018
「One Man」』
2018年9月2日 at 日比谷野外音楽堂

2018年9月2日 at 日比谷野外音楽堂
2018年9月2日 at 日比谷野外音楽堂
2018年9月2日 at 日比谷野外音楽堂
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2018年9月2日 at 日比谷野外音楽堂
 公演開始が明るい時間とあって客席を見渡すと、親子連れと思しき人たち、比較的高齢だと思われる人たちもわりと見かけたし、TOCがMCで“男のファンがめっちゃ増えてるんですよ”と言った通り、TOCのコスプレのような男子も散見できた。Hilcrhymeファンの幅広さが分かったのだが、同時に元メンバーの不祥事が与えた衝撃は我々の想像以上であったこととも実感できた。10カ月間にもおよぶ活動休止期間を経た上での今回の再始動も、“もしかすると不謹慎と言われるかもしれない”と語っていたほどなので、TOCをはじめ、スタッフが負った精神的なダメージも計り知れない。

 “昨晩は眠れなかった”と述懐していたが、無理もないことだと理解できた。待ち侘びた3000人の観客と、ライヴ・ビューイングとWOWOWの生中継で観ている全国のファンと対峙すべく、ステージへと向かった時のTOCの緊張感はいかばかりだったのだろう。まずもって「One Man」…すなわち、独りでHilcrhymeを再始動させたTOCの勇気、漢気を強く湛えたい。祝、Comeback!

 DJブースがなくなっただけだというのにステージがやけに広く感じられ、“独りで演るというのはこういうことか”とライヴ冒頭は若干面食らった感じもなくはなかったが、結論から言えば、Hilcrhyme はTOCのソロプロジェクトとなっても十二分にやれることを証明してみせた一夜であった。

 とにかくオーディエンスが熱心だったと思う。溜め込んだものを解き放つような感覚もあったのだろう。手拍子、手振り、シンガロング…コール&レスポンス以外でも楽曲に合わせた観客のアクションが途切れない。TOCも心強かったと思う。最初はさすがに緊張感を隠せない様子も感じとれた彼だが、わりとすぐにリラックスモードに以降し、今まで通りのフレンドリーなMCも聞けた。アンコールで“「One Man」ってタイトル付けたけど、全然独りじゃなかった!”、“俺は独りじゃない! ありがとう、みなさん!”と安堵したように観客に語りかけていたが、その言葉に偽りはなかったであろう。

 もともとリリック、ヴァースはもちろん、フックもTOCが作っているので、ソロになっても楽曲制作においては(少なくとも我々が耳にするレベルでは)大きな変化はなかろう。それは今夏EP『One Man』を発表したことでも分かる。だが、表舞台で音楽をやる以上、それはリスナーに共有されてこそ成立するし、ライヴはそれがダイレクトに分かる場所である。そんな当たり前のことを改めて感じさせてくれたのは、これが再始動ライヴであったからに他ならない。

 感傷的な話を一旦脇へ置くと、公演全体としては、TOCがソロプロジェクトとなったHilcrhyme、つまり自らをプロデュースすることに力を注いだライヴであったと振り返ることもできる。いや、誤解を恐れずに言えば、TOCがいつも以上にDJ的感覚で選曲とミックスを行なったライヴだったと言える。

 異世界へ誘う「トラヴェルマシン」から始まって、「New Era」で新しい時代を宣言。「パラレル・ワールド」「ルーズリーフ」で“変化、挑戦を恐れるな”と謳う一方、「春夏秋冬」「アタリマエ」「想送歌」「愛更新」では持ち場を堅持すること、戻れる場所があることの大切さを説く。後半のラップパート「No.109」「臆病な狼」「押韻見聞録」「続・押韻見聞録-未踏-」では攻撃性を畳み掛け、つながりを強調した「Side By Side」「涙の種、幸せの花」で一旦締め括りつつ、アンコールの「純也と真菜実」で“相思相愛”と“絆”をダメ押しし、最後は活動休止期間中に心配したであろう全ての人たちに向けて、ファンの間で人気の高い「大丈夫」を披露してフィナーレ。

 そのセットリストの物語性は優れたDJのプレイを思わせる構成で、その点だけでもHilcrhymeの再始動は成功したと言える。歌も情感が増して、以前より確実に上手くなっていたことは間違いなく、活動休止の10カ月間の鍛錬もうかがえた。本格的な成果はこの日発表された2019年2月からの全国20カ所に及ぶツアーで各地に届けられるのだろうが、この日を見る限り、その成功は約束されたようなものだと思う。

撮影:高宮紀徹(67531graphics)/取材:帆苅智之


セットリスト

  1. 1. トラヴェルマシン
  2. 2. RIDERS HIGH
  3. 3. パーソナルCOLOR
  4. 4. ジグソーパズル
  5. 5. Summer Up
  6. 6. 恋の炎
  7. 7. New Era
  8. 8. パラレル・ワールド
  9. 9. My Place
  10. 10. エール
  11. 11. ルーズリーフ
  12. 12. 春夏秋冬
  13. 13. アタリマエ
  14. 14. Your Smile
  15. 15. 想送歌
  16. 16. 愛更新
  17. 17. No.109
  18. 18. 臆病な狼
  19. 19. 押韻見聞録
  20. 20. 続・押韻見聞録-未踏-
  21. 21. Side By Side
  22. 22. 涙の種、幸せの花
  23. <ENCORE>
  24. 1. Good Luck
  25. 2. FLOWER BLOOM
  26. 3. 純也と真菜実
  27. 4. 大丈夫
Hilcrhyme プロフィール

ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP

OKMusic編集部

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