東京バレエ団期待のホープ 生方隆之
介&大塚卓に聞く~『くるみ割り人形
』くるみ割り王子役で華麗に競演

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東京バレエ団 創立60周年記念シリーズ3『くるみ割り人形』全2幕が、2023年12月21日(木)~24日(日)、東京文化会館で上演される(西宮・津・大津公演もあり)。クリスマスの風物詩として人気が高い古典バレエの名作を、日替わりで5組の主演キャストが華やかに競演するのが話題だ。SPICEでは、くるみ割り王子役を踊る生方隆之介(うぶかた りゅうのすけ)と大塚卓(おおつか すぐる)にインタビューを行い、若手男性陣きっての注目株ふたりに『くるみ割り人形』の魅力や互いの印象、ダンサーとして目指すところを語らってもらった。

■異なる個性、切磋琢磨して
――生方さんは、東京バレエ学校Sクラスの研修制度によるワガノワ・バレエ・アカデミー留学を経てハンガリー国立バレエ学校で2年間学び、2019年9月に東京バレエ団に入団しました。大塚さんはハンブルク・バレエ学校を卒業し、オーストラリアのクイーンズランド・バレエ団で踊ったのち2020年4月、東京バレエ団へ。ともに次世代のホープとして期待されています。東京バレエ団に入ろうと思われた経緯は?
生方隆之介(以下、生方) 東京バレエ学校でお世話になっていましたし、出身スタジオの発表会に先輩方が出ていらっしゃいました。ハンガリーの学校を卒業してから東京バレエ団の海外公演にエキストラとしても参加しました。そこでの先輩方の接し方が優しく、アットホームな感じなので入団しました。
大塚卓(以下、大塚) 東京バレエ団は、古典のみならずたくさんの振付家によるレパートリーを上演しているところや、海外での公演実績もあり、このカンパニーの一員になりたいと思いました。
生方隆之介 子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』バジル (c) Shoko Matsuhashi
――お二方が入団されてから程なくコロナ禍になりましたが、東京バレエ団は全国公演も多く、さる7月には4年ぶりの海外公演としてオーストラリア・メルボルンで『ジゼル』全2幕を11回上演しました。さまざまな役を踊ってこられましたが、印象に残る役柄・作品は何ですか?
生方 ジョン・クランコ振付『ロミオとジュリエット』(2022年4月初演)のマキューシオです。初めてのクランコ版上演なので団に活気があり、皆が真剣に取り組む姿を鮮明に覚えています。マキューシオは演技も動きも難しく、時間が許す限り研究していました。カーテンコールではお客さんも喜んでくださっているのを感じました。
大塚 僕も隆之介君のマキューシオを近くで見ていたのですが、特にティボルトとの剣闘シーン、すごくかっこよかったです。僕は『ロミオとジュリエット』ではパリスでした。ハードなシーンはありませんが、作品に欠かせない重要な役としてどうあるべきか考え、演じさせていただきました。
生方 卓さんといえば(モーリス・ベジャール振付)の『中国の不思議な役人』(2021年11月)の中国の役人でしょう。ベジャール作品に縁がありますよね。
大塚 最初にベジャール作品を踊ったのは『M』という作品でした。ベジャールスタイルが自分に合ってるかもしれないと思ったきっかけの作品です。
生方 中国の役人では不気味さが伝わってきました。ベジャールさんは、ダンサーのおもしろい特性を出してくる。
大塚 どちらかというと中国の役人とかの方が素です。皆から「王子」といわれますが、そんなに王子じゃないです(笑)。踊り方とかスタイルが王子というだけで、僕の性格とかが王子というわけではない。だから、王子をやるときは役を作って演じているのですが、中国の役人ではそんなに役作りをしていません。十市さんから「ベジャール作品は振付を淡々とこなしていればそれが作品になる。無理に表情を作ったりしないで」とよくいわれました。ただ、中国の役人に関しては「最初の部分だけは無表情で」と指導されました。
大塚卓 『中国の不思議な役人』中国の役人 (c) Kiyonori Hasegawa
――大塚さんから見て印象に残っている生方さんの演技は?
大塚 隆之介君はマキューシオをやる前から子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』で主役のバジルを踊っています。一番始めの頃と今を比べると成長が凄くて風格が出てきました。場数を踏むって凄いですね。真ん中にいると楽しそうです。
生方 『ドン・キホーテ』全幕を1時間半くらいに集約した作品ですが、パ・ド・ドゥが難しくて成長させてくれました。
生方隆之介 子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』バジル (c) Shoko Matsuhashi
――さきほど「素」という話が出ましたが、本番の舞台を離れるとそれぞれのキャラクターはどのような感じですか?
大塚 マイペースだよね?
生方 そうですね。
大塚 僕もマイペースで、独りでいるのが結構好きです。誰とも群れないので一匹狼と思われるんですけれど。でも、隆はみんなに愛されているよね?
生方 (苦笑)
大塚 何かおもしろいんですよ! 話とか考えていることとかが。
生方 卓さんは真面目。楽屋でも洋服をきちんと畳んであって、整理整頓ができている。
大塚 人の荷物がグチャグチャでも気になりませんが、自分のテリトリーだと嫌なんです。
大塚卓 ベジャール振付『火の鳥』火の鳥 (c) Shoko Matsuhashi

■『くるみ割り人形』を踊る難しさ・楽しさ
――お二方が『くるみ割り人形』の主役くるみ割り王子役で競演します。大塚さんは2021年、2022年に続く登板ですが、生方さんは初役ですね。
生方 配役が発表されたときは、喜びよりも不安が大きかったです。主役のパ・ド・ドゥとかを周りで見ているだけでも、難しくて緊張感がただよってくるんですね。それを自分が大舞台でやるのかとと考えると、足がすくむ気持ちは少なからずあります。
大塚 僕が初めて「くるみ割り人形」で王子の配役をもらった時は、まだコールドとして頑張っている時でした。パ・ド・ドゥの経験もほとんどなかったので、とっても不安でした。
足立真里亜&大塚卓 『くるみ割り人形』マーシャ&くるみ割り王子 (c) Shoko Matsuhashi
――東京バレエ団の現在の『くるみ割り人形』は2019年12月に新制作され、芸術監督の斎藤友佳理さんが改訂演出/振付しました。生方さんは、アラビア、花のワルツのソリスト、スペインなどを踊られています。大塚さんは、くるみ割り王子だけでなくフランス、花のワルツのソリストもやっていますね。斎藤版の『くるみ割り人形』は、第2幕でクリスマスツリーが演出の肝として印象的に使われます。「クリスマスツリーの中に入り込んでしまった、マーシャの驚き」がコンセプトに掲げられている美術も美しいですね。実際に踊られていかがですか?
大塚 くるみ割り王子は、ちゃんとストーリーに入って、マーシャと出会い一緒に旅をしていく過程を経ていくと役が自然と身体に入っていきます。僕はマーシャと最初に部屋で出会ったときのパ・ド・ドゥがとても緊張するんです。
大塚卓 『くるみ割り人形』くるみ割り王子 (c) Shoko Matsuhashi
生方 僕は感情を込めることができるバレエが好きです。『ロミオとジュリエット』は悲劇ですし人間臭いのですが、『くるみ割り人形』はファンタジーなので常に明るく振る舞わないといけない。リハーサルからそういう気持ちで踊らなければいけないところが難しいですね。
大塚 くるみ割り王子は大変だけど楽しいですね。最初はクリスマスツリーの装置の裏側にいて、そこでずっと待っています。仮面を被っているので前が見えづらいんです。でも、そのあと仮面が外れて登場するのは気持ちいい(笑)。そこは友佳理さんもとてもこだわっていて、倒れているところからの起き方とかを細かく見てくださって、それぞれのダンサーのために考えてくれます。
――生方さんは、くるみ割り王子役を踊るに際しどのようなイメージを持っていますか?
生方 新制作のとき、新人の僕はリハーサルで音出しをしていました。友佳理さんは、その場にいたダンサーを使って振付を考えたりするのですが、僕が音出しをしているとその場に男性がほかにいなかったときがあって、替わりに王子の振りを覚えました。今になって踊ることになったのは縁でしょうね。先輩たちが踊るのを見て難しいんだろうなと感じていますが、皆さんのサポートを受けて自分なりにがんばります。
――マーシャ役についてうかがいます。大塚さんは一昨年以来共演する足立真里亜さん、生方さんは涌田美紀さんと組みます。どのようにしてパートナーシップを築いていきたいですか?
大塚 真里亜さんはとても華やかです。2人で一緒に踊る時は、いかに真里亜さんが華やかに見えるかを1番に考えるようにしています。今年はさらに2人にしか出せないくるみ割りの世界観を出せたらいいなと思います。
生方 美紀さんとは子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』の主役同士で組んだりしていますが、本当にいい先輩です。一番最初のパ・ド・ドゥの相手としてたくさん教わりまし、『くるみ割り人形』のマーシャを前回踊られてるので、今回も自分が教わる立場だと思いますが、美紀さんのペースに合わせられるようにしていきたいです。
三雲友里加&生方隆之介 『くるみ割り人形』アラビア (c) Shoko Matsuhashi

■今後のさらなる飛躍に向けて
――あらためて『くるみ割り人形』にむけて期待する気持ちをお聞かせください。
生方 本公演での古典全幕主役は初めてです。東京文化会館の大ホールで踊るので緊張するでしょう。でも、卓さんもおっしゃいましたが、東京バレエ団は舞台経験が多いので僕らは成長させてもらえています。舞台に取り組む気持ちが今までとは違ってきたというか「舞台数が限られるので絶対に完璧に成功させなければいけない」というのではなくて、「自分がここに立っているということが、お客さんにどう見えているのか」を考えるようになりました。自分も楽しまなければいけないし、お客様に楽しんでもらうということを忘れずに練習していきたいです。
大塚 舞台をたくさん踏めることはダンサーにとって、とてもありがたいです。完璧であれば素晴らしいことですが、それよりも踊る相手との関係性や、アイコンタクトなどでストーリーを伝えられれば、お客様に届くんじゃないかなと思っています。そこを大切にしたいです。
東京バレエ団『くるみ割り人形』第1幕 (c) Shoko Matsuhashi
――『くるみ割り人形』の前の10月に『かぐや姫』(演出振付:金森穣)全3幕世界初演、11月に『眠れる森の美女』(新演出:斎藤友佳理)新制作も控えます。今後の目標や大事にしていきたいことを教えてください。
大塚 昔は「こういうダンサーになりたい、ああいうダンサーになりたい」という目標がありましたが、今は自分の個性を大事にしたいと思っています。きれいに踊るダンサーはいっぱいいるけど、自分の個性や何か飛びぬけているところをより磨いていきたいです。
生方 コロナ禍で普段当たり前だと思っていることが、当たり前じゃないんだと感じるようになりました。舞台ひとつするにしても、先生方やスタッフの方がいらして、お客様が来てくださるから成り立つので、感謝の気持ちを忘れないようにしようと自分に言い聞かせています。自分がバレエを好きであり続けられることが、観客の皆様がバレエを楽しんでいただけることにつながります。全力で取り組んで楽しい舞台を提供することを忘れないようにしていきたいです。
取材・文=高橋森彦

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