鈴木このみ

鈴木このみ

【鈴木このみ インタビュー】
めちゃくちゃギラギラに燃えている
自分を覚えていてほしい

鈴木このみというシンガーは作品をリリースする度に確実に成長している右肩上がりのアーティストだ。TVアニメ『ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド』のオープニングテーマであるニューシングル「命の灯火」は、「紅蓮華」でも知られる草野華余子サウンドプロデュース作品。彼女の新たな魅力が引き出されている。

“今回は人生観を歌ったなぁ!”と
いう感じがすごくある

前回のシングル「Missing Promise」(2021年8月発表)の取材で、私、その出来栄えを褒め称えましたが…

めっちゃ褒めてもらえたのを覚えています(笑)。

そこから3カ月程度しか経っていませんから、今回はそこまで大きな上積みはないだろうと正直言って高を括っていたんですけど、そう思ったことを謝らねばならないほど、今回のシングルもかなりいいと思います。

やったー!(笑) イエーイ!

成長の幅がしっかりと示されていて、これもまた素晴らしい作品になったのではないでしょうか。今回はタイトルチューン「命の灯火」とカップリングの「Mirror,Mirror,Mirror」ともに草野華余子さんが手がけられました。「Bursty Greedy Spider」(2021年5月発表のシングル)以来の草野楽曲ですが、草野さんからはどんな話がありましたか?

“チーム鈴木”全体で話し合うZoom会議では今回の方向性として、いつものバンドサウンドのゴリゴリとしたものよりも打ち込みサウンド的…現代寄りのサウンドにしたいという話をまずしました。“そういうトライをしてみたいです”と。そのあと、喫茶店で華余子さんとふたりだけでお茶会みたいな感じで話をして(笑)、リラックスして雑談ベースで“じゃあ、次はメッセージを考えよう”ということで、“鈴木さんはこのアニメ作品でどういうことを歌いたい?”と訊き出してくれて。そんな感じで二段構えな感じでやっていきました。華余子さんはとにかくお話を聞いてくださる方なので、一緒に擦り合わせていった感じです。

与えられた楽曲を歌うだけでなく、“楽曲の世界観から一緒に作っていきましょう”といった体制だったんですね。

そうですね。アニメの楽曲なので、アニメ側からある程度“こういう楽曲で〜”というリクエストはもちろんいただくんですけど、自分のシングルとしてちゃんと作っていきました。私的には「命の灯火」がすごくチャレンジングで。「Mirror,Mirror,Mirror」はわりと従来の鈴木このみの王道を感じさせるものですけど、「命の灯火」はAメロからちょっと台詞っぽい…歌の抑揚を減らして、台詞をバーッと言うような感じに近いと思うんですけど、そのパターンは新しいからやってみたいと思いました。

「Bursty Greedy Spider」の時のインタビューで、草野華余子さんからは“多少、荒々しいくらいでもいいよ”といったアドバイスがあったという話を聞いていますが、「命の灯火」もそれに当てはまる感じだったでしょうか?

まさに! ディレクションも華余子さんにしていただいたんですけど、それはサビに如実に出ていると思います。例えば、サビの《例え此処が》のところでちょっと喉が鳴るような声が入っていたりとか、華余子さんからは“せっかく喉の手術をして綺麗になったのに、こんなことを言うのは申し訳ないんだけど…”と提案していただいて(笑)、わざと喉を閉めてエッジが出るような歌い方にチャレンジしてみました。

今回は特に感情を入れて演じているような印象が強いと感じました。

そうですね。今回、“人生観を歌ったなぁ!”という感じがすごくあって(笑)。歌詞のメッセージも自分から出てきたものを華余子さんが拾い上げてくださいました。メッセージ的には“いつまでも若くない”ということなんですけど、それを今、身に染みて感じてるんですよね。

“いつまでも若くない”って、まだ若いのに!(笑)

あははは。でも、24歳、25歳って意外とリアルに年齢を感じ始めるというか、実際に自分がその齢になってみたら思うところがあって。それは別に悲観的なことではないし、良い面もたくさんあるんですけど、いつまでも“燃やし尽くしてやる!”という燃え方はできないんだろうなって。きっとしなやかになったり、色味が深くなったり、そういうふうに変わっていくと思うんですけど、今の輝き方は今の自分にしかできないという、ある意味でちょっとした焦りみたいなものがあって。だからこそ、しっかりと残さなくちゃいけないし、みんなもそれを見逃さないでほしいし、今の輝いている自分を、めちゃくちゃギラギラに燃えている自分を覚えていてほしいと。“そういう想いがすごくあるんですよね”って華余子さんにすごく言っていたので、感情が色濃くでたのかもしれないです。

なるほど。歌詞には《全てを賭けていい、生きてきた その意味遺したい》という前向きなフレーズもありますしね。

そこは歌にして昇華できたように思います。

個人的に印象に残ったのは各パートで歌の表情が異なっているところで。Aメロは“はすっぱな感じ”とでも言いますか…

あぁ、確かに! やさぐれてますよね(笑)。

(笑)。そこも新鮮でしたし、サビも押すだけではなく、短い中にも強弱を付けていますよね。あと、今回も声の重ね方も印象的です。二声の重ね方がハモるのではなく、楽曲に奥行きを与えているようで、そこもとても面白く聴かせていただきました。

そう言われれば、ダブルは自分の歌では珍しいかもしれない! ハモりはあるんですけど、同じメロディーが裏で鳴っているというのは、従来の鈴木にしては珍しいかもしれないですね。

ラップパートも重ねていますか?

重ねています。あと、ずっと低い声でお経みたいに歌っているパートもあれば、ウワーって喚き散らしているパートもあれば、ラップもあって、歌い方も全部変えました。

そこは感情が入っていることを感じて、とても良かったです。そして、これはレコーディングエンジニアさんのことも称えたいのですが、ブレスもしっかりと録音されているところが素晴らしいと思いました。

普段なら耳についてしまうかもしれない息遣いがわりと入っているかもしれないです。

あそこが生々しくて、とてもいいんですよ。その息遣いが感じられるので一番素晴らしいところは、先ほど仰られたサビの《例え此処》の箇所で。特にラスサビのブレイクするところは、めちゃくちゃ緊張感あるじゃないですか。

ありがとうございます(笑) あそこでミスると全部が終わるので、私も歌っていて緊張感がありました。あそこは本当にいいですよね。MVでもラスサビから急に画面がバーッと明るくなるんで、「命の灯火」のキーになっていると思います。でも、歌はすごく苦戦しました。

そうなんですね。

はい。1コーラスだけなんですけど、今回はデモレコーディングもやったんですよ。アニメの制作サイドに渡す目的と、本番のレコーディングの前に自分自身が曲をちゃんととらえたいということで。歌ったあと、本当に“どうしよう…?”と思いました(苦笑)。ひと言で言えば、難しかった。それこそエンジニアの方も悩んだと思います。本番のレコーディングに向けて機材を新しくしたと言っていたんで、みんな気合いが入っていたと思います。

歌い手としては今まで以上にしっかりと感情を込めようとしたし、スタッフもそれをしっかりと受け止める体制だったということですね。

そうですね。でも、華余子さんがドン!と真ん中にいてくださったし、“失敗してもいい”と言ってくださったのはすごく大きかったですね。華余子さんは歌のうまさよりも表情を大事にしてくれる人なので、“今のテイクはちょっと歌がよれたな”と思っても、“でも、表情は良かったから、そのニュアンスは残したままでいこう”って言ってくださったりとか。歌のスキルと表情のどっちも両立させるのがプロの歌手として大事だとは思うんですけど、レコーディングの時にいっぱい失敗できたのは良かったと思います。
鈴木このみ
シングル「命の灯火」

OKMusic編集部

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