【ネクライトーキー インタビュー】
ネクライトーキーをやっていくうちに
“これがバンドだ”と思った
ずっと地続きでやってきたから
今こうやって立っていられる
“音楽とは何か?”を表現しているように感じた部分は他にもあって、例えば「はよファズ踏めや」はまだ音楽の楽しさを知らない少年に語りかけるような、アーティストとしての目線を感じます。
朝日
これはもうちょっとシンプルで、初めて出会ったものに対する“スゲェ!”っていう感動を歌詞にしたかったんです。この曲は音楽の話ですけど、たぶん感動した瞬間の感情の高まりってジャンルを問わずにあると思うんですよね。それを再確認して、見つけていけるかどうかが大事だし…昨年ワウペダルを買ったんですけど、それを踏んだ瞬間の“ワウの音だ!”っていう感動は、十代の時に初めてマーシャルにつないでギターを鳴らした時の“ギターの音だ!”とか“ファズの音だ!”と同じ感覚だから、このワクワクがいいよねって言いたかっただけの歌詞です。
サウンドも衝動的でドカン!とくるのが気持ち良いです。
藤田
アレンジしていく時に“ベースから始めてみよう”となったので、なおかつインパクトのある音だったらこれでしょ!っていう。以前はよく使ってたQ-Tronっていうオートワウ系のエフェクターで大きい音を鳴らした時に“最高!”って思いました。
まさにその感覚ですよね。「Mr.エレキギターマン」もバンドの曲だと思いますが。
朝日
音楽の情動について歌ってるっていう部分では近いんですけど、「はよファズ踏めや」は自分で無邪気にはしゃいでるって感じなのに対して、「Mr.エレキギターマン」は“一回音楽辞めたの?”っていう雰囲気があるんですよね。辞めたけど、埃かぶってたギターを取り出してまたやってみるような。そう考えると、アルバムの頭から2曲目に初めて楽器を触った「はよファズ踏めや」と、後ろから2曲目に改めて楽器を触った「Mr.エレキギターマン」が入ってるのは、偶然だけど面白い流れかもしれないです。
《痛くて辛いならここでやめたってなんだっていいけど/エレキのギター弾く僕らのヒーローが/「立てるか?」と/煽るのさ》ってすごくグッときます。
朝日
自分じゃ書かない歌詞ですけど、これはもっさの曲だから。
もっさ
曲を作った時は内容まで考えてなくて、小学生の男の子でも元気になれる曲にしようと思って作ってたんです。でも、この曲がアルバムに入ることが急に決まったので、歌詞を悩んでいたら朝日さんが“俺が書くよ”って言ってくれて。人に書いてもらったことってないし、朝日さんに書いてもらうのは相当嬉しいことだからお願いしてみました。ムスタングとかのギターをイメージして書こうかなってふんわり思ってたんで、それを伝えて。
朝日
ギターの曲って言われて、曲名を“Mr.エレキギターマン”にするってアホの所業やな(笑)。
もっさ
朝日さんって歌う人につられるのかなって思いました。だって、ムスタング持ってないし(笑)。私、アンプに挿して音を鳴らすことよりも、家でヘッドフォンをして、周りに聴こえないように弾くことのほうが多いし、そういう経験を見透かされてたような歌詞になってて観察力がすごいなと。
朝日
こういうシンプルにアツい曲を聴くと歌詞も書きたくなるので、“忙しいなら書こうか?”って言ったけど、“書かせてくれてありがとうございます”って感じです。
前述のフレーズ然り、自分を鼓舞するような、元気づけるっていうアプローチも、ネクライトーキーがあまりやっていなかっただけで王道だと思います。
朝日
自分の曲なら煽らないです。期待がプレッシャーになるっていうことを思うとね。俺はバンドを辞めていく友達を止めないので自分は言わないけど、もっさの曲だから煽ってみようと思って。
もっさ
人の曲だからできることは絶対にありますよね。自分で歌う時はそんな素直に書けない。
タケイ
自分の曲で、自分が歌詞をつけて、自分で歌うってなると、嘘は言えなくなるしね。
もっさ
うん。それに生々しすぎて申し訳なくなったり、恥ずかしくなることもあるから、「Mr.エレキギターマン」はいい塩梅なのかもしれないです。
朝日
やっぱりこの曲が最後のほうにあるだけで後味がすっきりしますね。
藤田
もともと入る予定じゃなかったから、いきなりトーンアップしてくれたね。作っている間に“このアルバム重たくない?”ってなって(笑)。
もっさ
ポップでキャッチーなアルバムになる予定だったんですけど…
ポップでキャッチーではないですね(笑)。これまでに引き続き、ネクライトーキーの牙もよく出ています。それに加えて、今まで過ごしてきた時間を思い出しているような気持ちも入っているような。
朝日
世の中がむちゃくちゃな状況になっているのはすごく重たいことですけど、昨年全国ツアーが全部飛んで、バンド活動が完全に止まった時よりも、若い時にガスと電気が止まった時期のほうが大変だったと思うんです(笑)。バンドって大変なこともいっぱいあるけど、そんな状況でもメンバーが揃って音を出したら続けられると思ったし、ずっと地続きでやってきたものがあるから今こうやって立っていられると考えると、改めて10年くらいやってきて良かったなとは感じますね。