【INNOSENT in FORMAL
インタビュー】
カートゥーンバンドならではのものを
表現しようと思っていた
「No.1」は一曲の中で
3パターンぐらい声色を使っている
すごい! その3曲はアニメのことを意識しながら作ったのですか?
楽曲とかサウンドとかは、そんなに意識してないけど、歌詞はアニメのことを頭の片隅に置きながら普段の自分みたいな感覚で書きました。
結果、アニメの世界観とぽおるさんの想いが絶妙に入り混じる歌詞になったと思うのですが、「思うまま」のサビの歌詞は“ここまでストレートに歌うのか!?”とちょっとびっくりでした。
切実に思ったんですよ、思うまま生きたいって。それが言葉として出てしまいました(笑)。
人柄が出る音楽はそんなに好きじゃないと思っていたぽおるさんはその考えを改め、前作(2019年2月発表のミニアルバム『INNOSENT 1 ~Into the new world~』)から本当だったら言いたくないことも含め、自分のパーソナルな気持ちも歌詞にするようになりましたが、“ただ、言葉は選んだけど”と言っていたことを考えると、「思うまま」のストレートな言葉もあえてなのかなという気もするのですが。
いえ、追い詰められるとストレートになるんですよ(笑)。
それも含め、胸を打つ歌詞も聴きどころなんじゃないかと。さっき“自分たちの音楽はこれぐらいにしか評価されていないのか”とおっしゃっていたように、歌詞の根底にはその悔しさと、それに対する“何クソ!”という想いが感じられるし。
そういう意味では、日常がより出たと思います。前作を作ってから毎日ラップを書いていたので、それこそ人柄が出ましたね。
「Ficus umbellata」の歌詞にはドキッ!とさせられましたよ。
あっ、ほんとですか。それを書いた頃から思うままに生きられたらと思ってたんですよ(笑)。
ところで、今回のミニアルバムはどんな作品にしたいと考えたのですか?
ラップのクオリティーは引き続きこだわっているんですけど、テーマを決めて曲を書いたことってあまりなかったので、漠然と“人の出会いと別れ”という大きなテーマでラップを書いたところはありますね。サウンドは今まで通りロックなナンバーもありつつ、最後にバンドサウンドじゃなくて、打ち込みでトラックを作った「R.I.P.」という曲を入れて、ライヴは生身でやりながらアートワークやMVはアニメが多いという、フィクションとノンフィクションを自在に行き来しているカートゥーンバンドならではのものを、サウンド面でも表現しようと思っていました。
楽曲の幅広さももちろん聴きどころだと思うのですが、今回すごくいいと思ったのがぽおるさんの歌で。確認なんですけど、「TRAIN」の女性コーラス以外はぽおるさんしか歌っていないんですよね? パートごとに声質を使い分けているじゃないですか。ヴォーカリストしての表現力が格段に増したとびっくりさせられました。
そこは意識したところでした。海外には声色を変えることもラップスキルのひとつだと考えているラッパーがいて、僕も“そうだよな”と思いながらずっとやってきたんですけど、そこをこれまで以上にバーン!と出したかったんです。「No.1」は一曲の中で3パターンぐらい声色を使っていて、「fragrance」のアウトロに…。
ホーンの音だ!
聴きながら“これは声? ホーン? 何なんだろう??”と思っていました。
“ホーンの音でやれば良くない?”って却下されそうになったんですけど、“お願いだからやらせてくれ!”ってやらせてもらったんです(笑)。
いや、絶対に声でやったほうがいいですよ。
ライヴでも声でできたら面白いと思うんですよ。“こんな声も出せるんだ!?”って。
その「fragrance」のラテンファンクなアレンジも新しいですね。
もともとは全然ラテンじゃなかったんですよ。原曲を聴いた時、ポルノグラフィティの「アゲハ蝶」っぽいと思ったんですけど、その気持ちを胸に秘めたまま制作を進めていったら、途中で行き詰まってしまって。その時、告井さんに“どういう曲にしたいの?”と訊かれたんで“「アゲハ蝶」みたいなイメージなんです”って答えたら、告井さんがギターを持ってきてラテンっぽいフレーズを弾き出したんです。それがめちゃくちゃ良くて、メンバー全員で顔を見合わせて“このアレンジでしょ!”って。告井さんは“これ、採用になるんだ⁉”ってびっくりしてましたけど(笑)。
そんなふうにプロデューサーのアイディアが加わってバンドの引き出しが増えることは全然ありなのことですよね。
嬉しいですよね。最近、考え方が変わってきたんですよ。今までは自分がやりたいこととメンバーがやりたいことをぶつけ合って楽曲を作ってたんですけど、結局は“ラップするの俺だから”ってメンバーをねじ伏せてたところもあったんです(苦笑)。そしたら、WiennersのKOZOさんに“楽曲を作る上で一番偉いのは楽曲だから”って言われて。確かに、楽曲を優先順位の一番に置いて、その楽曲がカッコ良くなるための意見だったら、柔軟に取り入れいく必要があるなと。そういうマインドで告井さんと作れたことが大きいんですけど、今までだったら“いや、そのアレンジはちょっと”って言ってた自分もいたかもしれないです。でも、“楽曲がカッコ良くなるんだったら、こっちのアレンジだろう”と思ったので、素直に受け入れられたというか、結果的にそうして良かったと完成してからも思えたんですよ。
そういうマインドの変化は確実に今回の作品に表れていると思います。あと、気になってたのですが、「Junkie’s never enough」の《加藤充みたいに超easy》 という歌詞の《加藤充》って誰なんですか?(笑)
あははは。僕の昔からの友達です。僕が今まで出会ってきた中で一番ユーモアがある。プラスめちゃくちゃポジティブシンキングな奴なんです。いつもたいていのことを“easy”って水に流すんですよ(笑)。そのポジティブな感じに僕はずっと食らってたので、その気持ちをラップに乗っけたいと思ったんです。
そうだったんですね。加藤さんには名前を使うことを断ったんですか?
いや、断ってないです。でも、聴かせましたよ。そしたら充の奥さんも喜んでくれました(笑)。
取材:山口智男
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ミニアルバム『INNOSENT 2 〜How to spend the night〜』2020年12月16日発売
日本コロムビア
INNOSENT in FORMAL プロフィール
イノセントインフォーマル:ヒップホップやロック、エレクトロニックなどの要素を飲み込んだストリート色の強いサウンド、その聴く者を捕らえて離さないメロディーでフロアーを席捲する4人組バンド。2020 年、TV アニメ『池袋ウエストゲートパーク』ティザーPV 曲、ED テーマを担当し、ミニアルバム『INNOSENT 2 ~ How to spend the night ~』をもってメジャー進出。21 年にはコラボ企画をスタートさせ、全曲フィーチャリングアーティストを迎えたミニアルバム『INNOSENT 3 ~ High purity Mixed juice ~』をリリース。チプルソ、PES、RAU DEFら実力派のラッパーなど6 組のアーティストとの、次元を超えたコラボレーションが実現。22年3月、関西テレビ ドラマ『新・ミナミの帝王』の主題歌「money money money」を書き下ろした。同年9月には、ヒプノシスマイク5 周年記念で発売された、オオサカ・ディビジョン“どついたれ本舗” のシングル「どついたれ本舗 -No double dipping!-』の収録曲である、天谷奴零のソロ曲「Count the money」を楽曲提供し、話題になる。INNOSENT in FORMAL オフィシャルHP
「after song」MV
「after song(3DCG ver)」MV
「思うまま」MV
「思うまま (2D Ver)」MV
「No.1」MV
TVアニメ『池袋ウエストゲート
パーク』ティザーPV曲