【INNOSENT in FORMAL
インタビュー】
架空のカートゥーンバンドが
本格デビュー
噂のバンド、INNOSENT in FORMAL。活動の背景にあるそのコンセプトを紹介しながら、1stミニアルバム『INNOSENT 0 ~The night late show~』の魅力を考える。
彼らの名前は、INNOSENT in FORMAL。昨年11月、そんなストーリーとともに突如現れ、今年1月にシングル「One for you」をリリースした彼らは、その「One for you」がSpotifyのバイラルチャートの上位にランクイン。誰が言ったか、“和製Gorillaz”。そんな惹句とともにじわじわと注目を集めていった。その彼らが4月25日に初の全国流通盤となる1stミニアルバム『INNOSENT 0 ~The night late show~』をリリースする。それをきっかけに、ラップをフィーチャーしたミクスチャーロックを演奏する4人組の存在はさらに多くの人に知られることになるに違いない。
彼らの音楽性がどんなものなのかをとりあえずイメージしてもらうために“ミクスチャーロック”という言葉を使ったが、彼らが鳴らすのは、ミニアルバムを聴くかぎり、90年代のロックシーンを席巻したラウドなミクスチャーサウンドとは明らかに違うものだ。例えば、「Footloose」「Sex, Drug& Rock'n'Roll」は根っこにガレージロックがあることを思わせるし、ハモンドっぽいオルガンが鳴る「日向が少ないこの街で」は70年代のロックを思わせるレトロな感覚もある。しかし、その一方で、「Night cruising」が持つアーバンなサウンドは、シティポップに共鳴するものだし、前述の「One for you」は“エレクトロニカとフュージョンのミクスチャー”なんて言ってみたい魅力がある。ちなみに「One for you」のアレンジはエレクトロニカを基調に幅広いトラックメイキングにアプローチしているササノマリイ。そんなコラボからは彼らがやろうとしているのはロック×ヒップホップなんて単純なものではないことがうかがえる。それを考えると、虚構の世界と現実、ライヴハウスとクラブシーンを自在に行き来するような歌詞もいろいろなことを想像させる。
ヴォーカルのぽおるすみすa.k.a. STICKYはサーカス小屋を追い出され、路頭に迷っていたところを、サーカス小屋から抜け出してきたCANDY MAN(Gu)とTOY BOY(Dr)――ひとりの人間が人格の分裂とともに身体も分裂したふたりに拾われ、バンドを結成。そこに同様にサーカス小屋から抜け出してきたKuni the ripper(Ba)が合流したという。
人を魅了するフィクションには、それをリアルに感じさせるための真実が散りばめられているものだが、サーカス小屋が何のメタファーなのかを含め、INNOSENT in FORMALの物語や彼らの楽曲に見え隠れするメンバーたちの実人生や生々しい感情に想いを馳せながら作品に耳を傾けると、「Introduction」を含む全8曲は意味深になると同時に、より聴き応えのあるものになる。そこに単なる架空のカートゥーンバンドということだけに止まらない面白さを見出すことも、『INNOSENT 0 ~The night late show~』の楽しみ方のひとつだと思う。
文:山口智男