L→R 結生(Gu)、ネロ(Dr)、ガラ(Vo)、健一(Gu)、テツ(Ba)

L→R 結生(Gu)、ネロ(Dr)、ガラ(Vo)、健一(Gu)、テツ(Ba)

【MERRY】“MERRYっぽい”を濃くする
のが今回のテーマ

模範解答はないんで これまでやってき
たことが正解

重複するかもしれないですけど、メンバーが書いた曲が出揃って、アルバム用の曲も決まって、そこからバンドでアレンジしていく時には、どんなことを意識していました? “ライヴ”もひとつのキーワードにあったと思うのですが。

ネロ
ひと言で言うと、今まで一番ライヴ向けのものですね。今みたいなCDが音楽活動のど真ん中にない時代で、何がど真ん中になるかって言ったら、自分たちの場合はライヴなので。よりライヴ向けのアルバムにしたいっていうのは、自然と5人が言ってたような気がします。
結生
この3年半はライヴでつないできたようなものだし、その裏には今回のアルバムがあったので、そこは常に隣り合わせにあったというか。ツアー中にできた曲もいっぱいあるし。MERRYを13年やってきて、昔よりもライヴの優先順位が上がってきているので、“ライヴでやるためにアルバムを出す”っていう考え方になってますね。だから、1曲目から最後の14曲目まで、そのままの曲順でライヴをやっても成立するようなアルバムになっていると思います。
ネロ
曲を煮詰める時もライヴの光景は大事にしていましたね。“ここでこうしたら、オーディエンスはこう返してくるだろうな”とか、“こんな照明やこんなステージセットがあるといいな”とか考えていた…っていうか、曲を作った時にそういうことを言ってました、僕は。やっぱり自分の作った曲を推したいので、データをメンバーに送る時に“ライヴではこうしたらいいと思うんだよね”とか“こういう歌詞だとライヴで盛り上がると思うんだよね”って添付に細かく書いてました。まぁ、その通りになったものもあれば、いい感じに裏切られたものもありましたけど(笑)。

その“ライヴ”をキーワードにすると、前々作の『アンダーワールド』ような荒削りなものを想像してしまうのですが、その勢いはありつつも“MERRYらしさ”を前面に出したアルバムになっていますよね。

ガラ
そこは年齢を重ねたってのはありますけどね。『アンダーワールド』はネロはクリックを聴いてないし、演奏も一発で録った勢いだけの作品だったから、先輩とかから“これ、インディーズの1枚目で出すアルバムだぞ。それをなんで今やってんだ?”ってよく言われたんですけど(笑)、それがMERRYなのかなと思ってたんですよ。そんな何も考えずに初期衝動で動いていたMERRYが年月を重ねて、“ライヴ”っていうテーマであっても、また違ったかたちで表現できるようになったんだと思いますね。
結生
ライヴで表現する方法が昔よりも増えたんだと思いますね。昔は“激しい”か“エログロ”か“歌モノ”だけだったのが、今はもっといろんなことが表現できるようになって、それによって曲にバリエーションが出てきたというか。
ガラ
このアルバムを作り始めた頃ぐらい…野音での僕の復活ライヴ(8月10日)ぐらいから、メンバーにはキーワードっていうわけではないんですけど、“暗闇にピンク”みたいな言葉は出していたんですよ。“MERRYってこういうイメージなんだよね”って。野音でやった新曲にも“暗闇にピンク”って言葉は入ってましたし、その後のツアーのタイトルにもなりましたしね。自分がイメージするMERRYって、新宿のゴールデン街の知る人ぞ知る怪しい店みたいな、誰もが迂闊に近づけないようなところだけど、1回入っちゃったらもう抜け出せなくなる…そんな感じだったんですよ。路地裏でコソッと光っているような。だから、今回のアルバムのタイトルも“暗闇にピンク”みたいなのがいいって言ってたんで、そういうのがみんなの頭にもあったかもしれないですね。
結生
そういうことを言ってる時にアルバムが完成していたら、タイトルは“暗闇にピンク”になってたでしょうね(笑)。でも、その言葉は曲になって残ってますからね。
ガラ
そこから“MERRYって何なんだろう?”ってのをもっと掘り下げて掘り下げて、“ナンセンス”という言葉が出てきたんですよ。初期の頃に持っていた“エログロ”や“ナンセンス”…言ってしまえば、MERRYの柱ですよね。“エログロ”は使ってきたけど、俺たちは馬鹿げたことを真剣にやってきたわけだから、“ナンセンス・○○○○”とか、“○○○○・ナンセス”とか、“ナンセス”って言葉を使いたいねってなったんです。そこからどんどんと広がっていって“ナンセンス・マーケット”って言葉が、このアルバムに一番、はまったんですよ。

さっきネロくんも言ってましたけど、タイトル曲である「NOnsenSe MARkeT」は初めて詞先で作ったということですが、なぜそうしようと?

ガラ
みんなもいっぱい曲を出してくれていたんですけど、“ん~”って感じだったんです。みんなと“なんか、あとひとつピースがはまらないよね”って話してたんですよ。で、9月の後半に神戸でフェスがあって、それに行く車の中でザ~と書いた歌詞…完成したものではないんですけど、それをメンバーに見せて、“これで曲を作ってくれ!”って言ったんです。で、その日の夜に他のメンバー3人がホテルの部屋に集まって、リズムから何から全部、この歌詞からイメージして作ってたんですけど、僕は隣の部屋で他の曲の歌詞を書いてて…ギターの生音ってうるさいんですよ。自分が頼んだのに、“ちょっとうるさいんだけど”って言いに行ったという(笑)。それぐらい、みんな夜遅くまで頑張ってくれてました。こういうことって今までやったことがなかったんですけど、ぼんやりとしか伝えてなかったことを、“こういうことを歌いたいんだよね”って言葉にしたことで、みんなにはイメージしやすかったと思いますね。
ネロ
僕的にもMVを撮る曲っていうか、このアルバムの曲…挑戦や冒険をしている13曲をまとめられる一曲がなかったんです。最初は「「東京」」だろうって話にメンバーの中ではなったんですけど、僕は違うと思ってたんで、ガラが歌詞を持ってきた時は…めっちゃギリギリだったんけど(笑)、“よし! やろう!”ってなりましたね。まさに今までの13年間をかけてできた一曲です。

そのガラくんの歌詞を読んだ時の印象はどんなものだったのですか?

ネロ
ガチャガチャしてましたね、いろんなものが。それをうまくまとめたら13年間の歴史を物語る一曲になる予感がしてました。
健一
違和感がなかったですね。“なるほどな”って。
結生
俺は歌詞を見た時に、今までのMERRYとは違う新しい世界観を感じたんですよ。風景が見えるような歌詞だったから、曲が作りやすいと思ったし、しかもみんなで一緒に作るってなったんで、最初から意思の統一も図れると思ったんで、“これは面白いかも”って取りかかりましたね。
ネロ
うん、風景は見えましたね。
ガラ
《ここは極東ナンセンスマーケット》ってフレーズはあったので、イメージしやすかったと思いますね。MERRYっていうお店があったら、おそらく普通のものは売ってないだろうなって。世の中の人からしたら要らないようなものだったり、クソみたいなものとか、いろんなものがごちゃ混ぜになっている…みたいな。で、さっきも言いましたけど、あまり人目に付かないようなビルに入っている怪しい店なんだろうなって。あと、歌詞を書いてて思ったのは、普通じゃいけないっていうのと、シングルだった「群青」「ZERO -ゼロ-」「梟」っていうのは今の自分たちというか、“逆境だけど、地べたを這いつくばってでも頑張っていこう”みたいな、“みんなで夢を掴みにいこうぜ!”っていう歌詞が続いていたので、そういうのはもう要らないって。もっと振り切りたかった…“尖ってなんぼだろう”っていうのが自分の中にあったから、結構何回も歌詞は変わってるんですよ。ほんとに今回、自分の中のタブーに恐れずに触れていったんですよね。最初にこの歌詞を書いた時もそうですけど、メンバーともいっぱい話をしたし…そういう意味では、今回のアルバムの歌詞って自分が書いたんですけど、自分じゃないというか。いろんな人といろんな話をして、“今、こんなことがニュースになってるんだ”とか“このニュースの裏側にはこんな話があるんだ”って、そういう話を聞いた中で歌詞を書いていったんですよ。とにかく自分の中にあった“ガラだったら、こういう起承転結を付けるだろうな”っていうのを壊したかったんで、めちゃくちゃ苦労しましたけど、出来上がったみると自分でも新しい一歩を踏み出せた感覚はありますね。

今回の歌詞なのですが、“生きる”や“夢”というフレーズが多いですよね。それはさっき言ったテツさんの曲から受けた印象だったり、MERRYの現状だったりが反映されているのですか?

ガラ
それはあると思います。ひとつ気付いたことがあって…今までは夢は叶うと思っていたんですよ。でも、現実的には夢って叶わないんだなって。もちろん夢があったら、そこに向かって頑張れるんですけど。ある日、テレビを観ていたら、アーティストが“自分みたいな人間でも頑張ったら、こんなに大勢の人の前で歌えるようになりました。夢が叶いました。みんなも夢に向かって頑張ってください”って言ってたんですよ。それに対して“あなたは夢が叶ったから言えるんでしょ?”って思ってしまって…すげぇ冷めてたんでしょうね、俺。自分も“夢を持って頑張っていこうぜ!”って言ってたほうの人間だったはずなのに、“この人は夢が叶ったんだな。いいな”って思ってた(苦笑)。MERRYの今の状況がそう思わせたのかもしれないですけど、夢って叶わないもんなんだなって。“あの人たちは叶っていいな”って思った時に、“じゃあ、夢って叶わないってことを書こう”って思ったんですよ。“基本的に夢って叶わないんだよ。叶ったとしても人間って欲があるから、また次を求めるんだよ。でも、頑張ることはいいことだよ”みたいな。例えば、“夢はメジャーデビューです!”って言ってたバンドがメジャーデビューしたらバンドをやめるかって言ったら、絶対にやめないですからね。夢が叶ったとしてもその先がいくらでもあるし、しかも夢が叶うヤツってほんのひと握りだし…ほんと、冷めてたんですよ(笑)。だから、夢が叶わない側の人間の歌詞を書こうと思ったんですよ。もしかしたら今までって上から目線だったのかもしれないけど、世の中の人たちと同じ目線で“現実はこうなんだよ。でも、そこから上がっていこうよ”って先導するような歌詞を書きたいなって。

だから、こんなにもがいてるわけですね。

ガラ
そうですね。「自意識過剰木偶人間」って曲があるんですけど、自分でも“俺、狂ってるな”って思いますからね。一番悩んでいた時期の曲で、“俺が歌う意味って何なんだろう?”“俺が伝えたいのは何なんだ?”ってすごい考えていて、“もういいか。俺の全てをさらけ出そう”って思った曲なんで。

タブーをなくしたから、そういうことも書けた?

ガラ
はい。カッコ付けたり、良く見せることも必要かもしれないけど、自分が思っていることをストレートに伝えようって思ったんです。だから、“これはちょっとないな~”とか“こういう歌詞ってどうなんだろう?”って思うことであっても踏み出せた…僕個人だったら“これはないな”って思うことでも、MERRYとして出すんだったら“全然面白いじゃん!”って思えた。
結生
だから、今までと一番変化しているのは歌詞なんじゃないですかね。今回のアルバムって曲だけだとMERRYっぽくて、今のMERRYそのものだと思うんですけど、歌詞に関しては新しいっていうか、進化していると俺は思います。いい意味でガラっぽいものもあるし、ガラっぽくないのもあるし…本人はすごい悩んでましたけど(笑)、それだけ新しいところに行けたんだと思いますね。
健一
幅広くなりましたね、いろんな視点からの歌詞があるし。
ネロ
“変わった=幅が広がった”だと思うんで、可能性は確実に高まったと思ってます。でも、僕は夢を諦めてないんで。
ガラ
バンド幻想とか、バンドに対して一番夢を抱いているのは、ネロと僕だと思うんですよ。バンドに憧れているっていうか。僕は現実に気付いてしまったんですけど、ネロは現実を分かりつつも夢を信じている。そこが面白いなって思いますね。ちょっと戻りますけど、僕が腰の手術をした時ってバンドが止まったんですよ。でも、テツさんが怪我して離脱してもバンドは動いているんですよね。それはなぜ?って。メンバーも楽器は代わりがいるってことに気付いたと思うんです。ネロや僕が持っていたバンド幻想で言ったら、“メンバーの誰かがいなくなると普通はバンドって活動が止まるよね”って思ってたけど、予期せぬ時にそれが起こってしまった。善くも悪くも“バンドってこうなんだ”って気付いたと思うんです。そういう意味では、ネロにはバンドっていうものに夢を持っていてほしいですね。
ネロ
テツさん抜きでライヴをするのはどうなんだってのは思ってましたね。
ガラ
僕はここで止まったらバンドは終わるって思ったんですよ。だから、みんなとすごく話し合いましたね。結果的には止めずにやってきて良かったと思うし…それがテツさんの意思でもありましたから。いろいろ賛否両論はあったと思うんですけど、今回のアルバムというのは動いていたからこそできたんだっていう自負がありますね。
ネロ
模範解答はないんで、これまでやってきたことが正解です。
ガラ
うん。そういうことが今回の歌詞に反映されていると思います。自分を変えてくれるきっかけになった…一歩踏み出せたアルバムでもありますね。

まさに約3年半のMERRYの全てが詰まっている今回のアルバムですが、どんな作品が完成したと実感していますか?

ガラ
“MERRYって『NOnsenSe MARkeT』で何か変わったよね”って言われるようなアルバムにしたかったんで、そういう作品にはなったかなって思ってます。
健一
ライヴ向けのアルバムですね…まぁ、それはいつもそうなんですけど。このアルバムを作るために結構な曲をみんなで出し合って、そこから厳選された曲が揃っているので自信作だし、今後のライヴがさらに良くなると思います。
結生
今の状況のMERRYでフルアルバムが出せたってのは、俺は誇れますね。100パーセント、MERRYの5人で作ったアルバムとして堂々と出せる。テツさんの曲も入ってるし、ベースもテツさんが全て弾いているので。状況的に今、ライヴは100パーセントのMERRYではないけど、このアルバムでようやく100パーセントになれたから、それだけ内容のあるものになったと思います。早くライヴでも100パーセントのMERRYに戻れるための作品でもありますし。
ネロ
結成から13年が経って、波乱万丈な出来事があって、たくさんの逆境もあって、その中で自分たちが最高傑作だと言える作品ができたことがものすごく嬉しいですね。このアルバムを聴いて“昔のほうが良かったよね”って言う人がいたら、“お前が俺たちに付いて来れてないんだよ!”って自信を持って言ってやります。

そして、年明けには渋谷公会堂でのワンマンライヴが控えていますが、どんなライヴになりそうですか?

ガラ
“ヴァニラスカイアバンギャルド”…“夜明け”っていうタイトルだし、このアルバムを引っ提げての一発目のライヴだから、すごく大切なライヴになると思いますね。お正月の二日目からコケれないし(笑)。確実に良いアルバムができたので、確実に観に来た人には届けたいですね。おそらくMERRYにとって最後の渋公になると思うし。

建て替えられますからね。

ガラ
来年でなくなっちゃうんですよね。MERRYにとっていろんな節目で立ってきた渋公なので、そこでこのアルバムのお披露目ができるっていうのはすごく嬉しいですね。最高のライヴにして、最高のスタートを切りたいと思ってます。バンドでも2015年は“Grateful Year”って謳っていて…未(ひつじ)年ですしね(笑)。2015年を最高の年にするため、1月2日に渋公で最高のスタートを切りたいと思ってます。
健一
一年の出発でもあり、新しいアルバムの出発でもあるので、いいスタートを切りたいですね。あと、ライヴ向けのアルバムを作ったので、それをライヴでやるのが楽しみです。
ネロ
ちょっぴり特別感はありますね。渋公はいろんな思い入れがあるし、新しいアルバムのレコ発でもあるから、ダブルで美味しいというか。今までの渋公の思い出も堪能したいし、最高傑作の新しいアルバムから…まぁ、全貌まで見せるかどうかはお楽しみにしておいてほしいんですけど、アルバムの美味しいところは観れるので、ぜひ来てほしいですね。
結生
『暗闇にピンク』っていうツアーでもアンコールで数曲、このアルバムの曲をやっていて、初日のファンクラブ限定ライヴの時に「NOnsenSe MARkeT」と「千代田線デモクラシー」を演奏したんですけど、最初からお客さんの反応が良かったから、もう他の曲の反応も見えたというか。なので、そこの心配はないから、最後になるであろう渋公のステージを楽しみたいと思います。
ガラ
13年分の、最新型のMERRYを渋公で出したいと思っているので、お正月はぜひ渋公へ(笑)。
『NOnsenSe MARkeT』2014年12月24日発売FIREWALL DIV.
    • 【初回生産限定盤A(DVD付)】
    • SFCD-0145〜6 5400円
    • 【初回生産限定盤B(特典CD付)】
    • SFCD-0147〜8 5400円
    • 【通常盤】
    • SFCD-0149 2592円
MERRY プロフィール

メリー:2001年10月、現メンバーによって結成される。哀愁とヘヴィネスの融合による唯一無二の“レトロック”を掲げ、進化&深化を繰り返しながら、独自のスタンスで活動。昭和歌謡的な叙情旋律や欧米発のロックなどをさまざまに融合させた個性的な世界観で、結成時よりメインストリームとアンダーグラウンド双方の特性を活かしながら規格外のロックバンドであり続けている。MERRY オフィシャルHP
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MERRY オフィシャルYouTube
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OKMusic編集部

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