L→R 吉岡聖恵(Vo)、⽔野良樹(Gu&Piano)

L→R 吉岡聖恵(Vo)、⽔野良樹(Gu&Piano)

【いきものがかり インタビュー】
今の自分や自分の状態に○をつける、
そういうふうに生きていけたらいい

“歌でいろいろとやってみたい”
という想いがすごく強い

「HEROINE」は確実にブランニューな匂いはしますよね。あと、「YUKIMANIA」もいいです。クリスマスソング、ウインターソングはかつてあった気はするんですけども、こういう少しいなたい感じのアメリカンテイストは“大人いきものがかり”な感じがしました。ポップはポップなんですけど、キャンディーポップじゃないというか。

水野
あっ、そうですか? “ハッピーな感じは作りたい”と思っていましたね。アレンジャーの松本ジュンには本当にいろんなところでお世話になっていて、HIROBAでもすごくお世話になったし、TV番組の『おかあさんといっしょ』で何曲もやってもらったりして。
吉岡
そうだったんだ。
水野
“いつかいきものがかりで”と思っていたんだけどね。何て言うんでしょう? 松ジュンは非常に怖いから(笑)。
吉岡
ちょっと待って!(笑) それはどういう意味?
水野
変な意味じゃないよ(笑)。すごい素敵な青年で、職人肌というか。だから、そうですね…クリスマスの感じになると、いろんなイメージがあるじゃないですか。でも、彼は簡単にベルの音を入れないとかね(笑)。

それはよく分かりますねぇ。「YUKIMANIA」はまさにそうですよね。

水野
ストリングスもすごくザクザクと入ってくるんですよ。それで、吉岡が最初は不安になっちゃうくらいで。
吉岡
そうそう! サビで不安になったね(笑)。
水野
“自分の歌と当たりすぎて、ちょっと印象がぼやけるんじゃない?”みたいなことを言っていて。まさにそのとおりなんだけど、“ただ、これは絶対に大丈夫になるから!”と伝えました。かなり狙いを強くしたストリングスのラインだったり、サウンド感だったりするんですよ。すごいステレオを広く取っているし。松本ジュンの音楽は、今まさに若手のポップスアレンジャーとしては挑戦感がすごくサウンドに込められていて、“そこをいきものがかりでもやってほしい”と思って「YUKIMANIA」を作ったんです。

同じストリングスでもアルバム前半の「誰か」や「うれしくて」は“バイオリン”という感じですけど、「YUKIMANIA」は“フィドル”という感じがしますよね。

水野
そうですね。ゴリゴリしている感じというか。編成も大分違っているし、HIROBAのチームでライヴに来てくれたメンバーだったりもするんです。あと、キーが結構高いんだよね?
吉岡
そうかも! 《なぜか照れるんだ》とかそうだよね?
水野
仮歌も普段だったら、もうワントーン落としてもっと吉岡の中域の柔らかい感じが出るようなトーンを選ぶと思うんですけど、“いい意味でキラキラしていて、ちょっと息が詰まるくらいの感じのほうが合うんじゃないか?”ということだったので、高めで歌ってもらって。それが独特の若々しさみたいなものにつながっているのかもと思います。

個人的にはポップなんだけど、子供っぽくなくて、しっかり大人な印象がありましたよ。

吉岡
嬉しいです。でも、この声色は誌面の文字では伝わらない(苦笑)。

確かに(笑)。いや、おふたりとも十分に大人なので“大人な印象”というのもおかしな言い方ですけど、意識的に歌やヴォーカリゼーションをブラッシュアップされたことはよく分かりました。

吉岡
高い声を張って、“そこを好きでいてくれる人もいっぱいいるんだろうなぁ”っていうのが自分の中にはあるんですよね。でも、“そうじゃなくて伝わる歌でもいいじゃん!”っていうのがどこかにあって。“もっと張ったほうがいい!”という部分がデビューした時にはあったと思うんですよ。でも、少しずつ歌が変わっていって、静かな表現もしてみたいと思ったのは確かです。静かな表現もしてみたいし、声を張る表現もしたいし、いろいろとやってみたいというのが今はすごくあって。それは曲に合わせて出していたりすることもあれば、出ちゃったりすることもある。なので、“歌でいろいろとやってみたい”という想いがすごく強いです。

そこに至るきっかけみたいなものは何かありましたか?

吉岡
どうなんだろう? デビュー2年目くらいからずっと一緒にレコーディングをやってきて、導いてくれていたディレクターさんがレコード会社を勇退されて、そこからいろいろなディレクターさんに歌を録ってもらっている中で、自然とそういうシーンが出てきたというか。自然と“声を張るだけじゃない歌もいいよね”と思うようになっていったので、そこは伸ばしたいとずっと思っています。特にここ数年はそう思うようになっていますね。

明確なきっかけがあったわけではなく、徐々に“いろいろな歌い方をしてみたい”と思うようになってきたというのが正しいところなんでしょうね

吉岡
声帯も変わっていくと思いますしね。私はスポーツには全然詳しくないんですけど、20歳の選手と30歳の選手では、やっぱり身体の使い方が違うし、筋肉が違うじゃないですか。それは“なるほど”と思うんです。声のトレーニングをしていても、“張るばっかりでこの先ずっと歌えるんだろうか?”と考えることもあるし。だとしたら、“いい変化だったら、うまく変化していきたい”っていうのが正直なところです。常に両方を使えるようにはしておきたいから、いつも準備していたいと思っています。

懐は深くしておきたいと。

吉岡
そうですね。幅は増やしたいし、いろいろな歌い方を増やしたいし、“曲に合う歌い方で歌っていきたい”と思うので、貪欲にやっていこうと思っています。

よりアグレッシブになったということなんでしょうね。今回のアルバム制作を通して、それを改めて自覚するようなところがあったという。

吉岡
歌に関しては欲張りになっているかもしれないですね。でも、それが出すぎちゃうと良くないから、そこにこだわりすぎちゃってもいけないとも思う。

ヴォーカリストのスキルやテクニックは大事だけれども、そこだけを見せるんじゃなくて、あくまでも歌があり、楽曲があってのヴォーカルであるというようなとらえ方でしょうかね?

吉岡
いろんな歌い方、いろんな表現は持っていていいと思うんですけど、私は“これは必ず入れなくてはならないな”みたいに考えちゃいがちなんですよ(苦笑)。“こうと決めたらこう!”みたいな。でも、そうじゃなくて“ここは弱くいきたいんだ”とか、“ここはこの表現でいきたいんだ!”と頑なにならなくてもいいと思っています。自分の歌の引き出しには持っておくんですけど、作詞家、作曲家さんから見て最適な表現ってあるから、みなさんが選べるような、そして選んでもらえるような歌い手でいたいと思いますよね。

分かりました。吉岡さんもこれまで長く制作をともにしてきたディレクターとの別れが今作のポイントでもあるとおっしゃっていましたが、ラストのタイトルチューン「〇」に《おさない手を離す/いつか歩きだして》という歌詞がありますよね? これは吉岡さんがご出産されたことと関係しているのかと想像していたんですけど、おふたりから話を聞いていると、その制作スタッフとの別れを重ねることもできそうです。

水野
どこか“自立を歌えないかな?”と思って書いたフレーズではありますね。それはおっしゃっていただいたように、僕たち自身が自立していくというところでも解釈できるし、自分たちの子供みたいな後の世代が自立していくことにもとらえられるし、なるべく解釈を広く取れるような書き方はしたつもりなんです。ただ、この「○」っていう曲はアルバムの最後に出来上がったんですよ。

メロディーも歌詞も最後でしたか?

水野
最後です。本当は“11曲で終わりにしようか?”という話が出たくらいで。その時に“もう1曲書きたい”とお願いして書かせてもらったんですけど、アルバムがテーマにしている“肯定”という言葉をすごく背負ってくれた楽曲になりましたね。
吉岡
うん。分かる。
水野
“肯定”と言っても、それは甘えとはまた少し違っていて…何て言うんでしょうね? 何も考えずに全肯定するという話ではなく、意思を持って肯定して、“孤独は孤独であるんだよ”ってことはちゃんと伝えるみたいな。そこをバランス良く書ければと思いながら出てきたフレーズではあるかもしれません。

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着