【それでも世界が続くなら
ライヴレポート】
『それでも世界が続くなら 独立第一
弾ALBUM「死にたい彼女と流星群」
リリース記念・東名阪ONE-MAN LIVE
TOUR 「灰と流星群」』
2023年6月11日 at Spotify O-Crest
アルバム『死にたい彼女と流星群』(5月3日発売)のリリースを記念して東名阪を巡るワンマンライヴツアー『灰と流星群』。その初日となる東京公演が6月11日にSpotify O-Crestで開催された。ステージに篠塚将行(Vo&Gu)、菅澤智史(Gu)、琢磨章悟(Ba&Cho)、只野うと(Dr)が登場して、演奏は「変声期」からスタート。VJが投影する映像が無数の光や色彩を放つ中、4人が奏でる音が響き渡る様に序盤から息を呑まされた。多くのライヴのムードを表現する際には“一体感”“盛り上がり”といった言葉が用いられるが、それでも世界が続くなら(以下、それせか)の場合は、このような表現は当てはまらない気がする。フロアーにいる観客のひとりひとりが一心に音に耳を傾け、曲に刻まれている想いを受け止めるあの空間に対しては “個々”“各々”といった言葉の方がしっくりくる。そして、それが生の現場で彼らの音楽を聴く醍醐味なのだ。
曲を全力で届けてくれるバンドの存在を肌で感じて、自分と同じように何らかのかたちで心を震わせている人が他にもいるのだとも思えるのは、堪らないほど嬉しい。大好きな音楽を聴いたからといって、抱えている心の痛みが癒えるほど世の中なシンプルにはできていないが、音楽とじっくりと向き合えるライヴには、やはりかけがえのないものがある。“お互いに生きていたからまた会えたね”“こうして会場に足を運んでくれて嬉しいよ”“ステージで歌って、演奏してくれてありがとう”という喜びが終始バンドと観客の間で交わされていたのが、今回のライヴのとても印象的な点だった。
『死にたい彼女と流星群』の収録曲のほか、「水色の反撃」「パンの耳」「シーソーと消えない歌」なども随所で披露され、このバンドの表現力も強く実感することができた。歌声の響き、届けられる想いに対して的確に寄り添い、音色、フレーズ、ニュアンスを多彩に変化させるステージ上の各々は、“それせかを表現することに関して世界一のメンバー”と言っても誰からの異論もないだろう。そんな演奏を堪能しているうちに、ライヴは終盤に差しかかりつつあった。“ずっと音楽のことを考えて僕が思ったのは、歌って願いだなということです。雨乞いをして絶対に降らせられる人がいたんだって。それは簡単な話で、雨が降るまで祈っていたらしいんだよ。そりゃそうだろうっていう。でも、そうだと思って”――歌うという行為に関して篠塚が語ったMCは、このバンドの音楽の核にあるものを示していたように感じる。
“俺たちは幸せが何なのか、楽しいが何なのか分かんなくなっちゃっているから、“幸せになるために”とか言われてもピンとこない。でも、何か願っていたんだろうね。だから、届かなくても歌う。叶わなくても歌う。その“歌う”を“生きる”に変えられないかなと思う。君の心に届くのかは分からない。生きていてもそう。みんな孤独だよね。伝わっているのか分からない。だから、怖いんだよね。相手の心は分からない。だから、想像するんだよな。だから、願う、歌うんだなと思ったりするんです“
このMCの直後、「参加賞」を皮切りに「響かない部屋」「ウェルテルの苦悩」「誰も知らない」「17才」「copy and delete」…さまざまな曲が一気に届けられた。メンバー同士で互いの音に共鳴し合いながら構築され続けたアンサンブルは、各曲に血の通った生命を授けていた。
アンコールを求める手拍子に応えてステージに戻ってきた4人。只野によるオリジナルグッズの紹介のあと、素敵な告知があった。2日間にわたって横浜赤レンガ倉庫野外特設会場で開催される『MURO FESTIVAL 2023』の初日、7月22日にそれせかが出演することが決定したのだという。“僕らみたいなバンドが大きいフェスに出させてもらうっていうのは、僕の中では英断と言いますか。アンダーグラウンドがオーバーグラウンドに向かい合える…いじめられっ子が人気のある人と仲良くなれるような奇跡が起こせたらなと思っているので(笑)”と照れくさそうに篠塚が語ると、大きな拍手がフロアー内で起こった。そして、アンコールで届けられたのは「最後の日」。力強く躍動したこの曲が幕切れた時、清々しい余韻が会場内に漂っていた。ステージからの去り際に篠塚から届けられた““ずっと生きてろ”なんて言わないけど、次のライヴでまた会おう。もう1回くらい約束しよう。またね”という言葉。これが何だか嬉しかった。次のライヴでの再会くらいの近い未来の約束ならば、つらいことばかりの日々をやり過ごすための力へとつなげられそうだ。大仰な美辞麗句ではなく、真の意味で実感を込めたものを届けるから、それせかの音楽はリスナーとともに歩んでくれる。そんなことを実感した言葉だった。
曲を全力で届けてくれるバンドの存在を肌で感じて、自分と同じように何らかのかたちで心を震わせている人が他にもいるのだとも思えるのは、堪らないほど嬉しい。大好きな音楽を聴いたからといって、抱えている心の痛みが癒えるほど世の中なシンプルにはできていないが、音楽とじっくりと向き合えるライヴには、やはりかけがえのないものがある。“お互いに生きていたからまた会えたね”“こうして会場に足を運んでくれて嬉しいよ”“ステージで歌って、演奏してくれてありがとう”という喜びが終始バンドと観客の間で交わされていたのが、今回のライヴのとても印象的な点だった。
『死にたい彼女と流星群』の収録曲のほか、「水色の反撃」「パンの耳」「シーソーと消えない歌」なども随所で披露され、このバンドの表現力も強く実感することができた。歌声の響き、届けられる想いに対して的確に寄り添い、音色、フレーズ、ニュアンスを多彩に変化させるステージ上の各々は、“それせかを表現することに関して世界一のメンバー”と言っても誰からの異論もないだろう。そんな演奏を堪能しているうちに、ライヴは終盤に差しかかりつつあった。“ずっと音楽のことを考えて僕が思ったのは、歌って願いだなということです。雨乞いをして絶対に降らせられる人がいたんだって。それは簡単な話で、雨が降るまで祈っていたらしいんだよ。そりゃそうだろうっていう。でも、そうだと思って”――歌うという行為に関して篠塚が語ったMCは、このバンドの音楽の核にあるものを示していたように感じる。
“俺たちは幸せが何なのか、楽しいが何なのか分かんなくなっちゃっているから、“幸せになるために”とか言われてもピンとこない。でも、何か願っていたんだろうね。だから、届かなくても歌う。叶わなくても歌う。その“歌う”を“生きる”に変えられないかなと思う。君の心に届くのかは分からない。生きていてもそう。みんな孤独だよね。伝わっているのか分からない。だから、怖いんだよね。相手の心は分からない。だから、想像するんだよな。だから、願う、歌うんだなと思ったりするんです“
このMCの直後、「参加賞」を皮切りに「響かない部屋」「ウェルテルの苦悩」「誰も知らない」「17才」「copy and delete」…さまざまな曲が一気に届けられた。メンバー同士で互いの音に共鳴し合いながら構築され続けたアンサンブルは、各曲に血の通った生命を授けていた。
アンコールを求める手拍子に応えてステージに戻ってきた4人。只野によるオリジナルグッズの紹介のあと、素敵な告知があった。2日間にわたって横浜赤レンガ倉庫野外特設会場で開催される『MURO FESTIVAL 2023』の初日、7月22日にそれせかが出演することが決定したのだという。“僕らみたいなバンドが大きいフェスに出させてもらうっていうのは、僕の中では英断と言いますか。アンダーグラウンドがオーバーグラウンドに向かい合える…いじめられっ子が人気のある人と仲良くなれるような奇跡が起こせたらなと思っているので(笑)”と照れくさそうに篠塚が語ると、大きな拍手がフロアー内で起こった。そして、アンコールで届けられたのは「最後の日」。力強く躍動したこの曲が幕切れた時、清々しい余韻が会場内に漂っていた。ステージからの去り際に篠塚から届けられた““ずっと生きてろ”なんて言わないけど、次のライヴでまた会おう。もう1回くらい約束しよう。またね”という言葉。これが何だか嬉しかった。次のライヴでの再会くらいの近い未来の約束ならば、つらいことばかりの日々をやり過ごすための力へとつなげられそうだ。大仰な美辞麗句ではなく、真の意味で実感を込めたものを届けるから、それせかの音楽はリスナーとともに歩んでくれる。そんなことを実感した言葉だった。
撮影:藤井健/取材:田中大
アーティスト