テニミュの新たな歴史を目撃しよう!
 ミュージカル『テニスの王子様』4
thシーズン 青学(せいがく)vs氷帝
ゲネプロレポート

2023年1月7日(土)東京・TACHIKAWA STAGE GARDENにてミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs 氷帝が開幕。その直前に行われたゲネプロの模様をレポートする。

ボールが弾む音とシューズが軋む音が響く。そこへ重なっていく拍手、歓声、そして暗転からの一瞬の静寂——と、次の瞬間目の前に現れたのは、威風堂々と響き渡る氷帝学園テニス部部長・跡部景吾の歌声と浮かび上がる氷帝メンバーのシルエット! 出し惜しみせずプロローグから氷帝全員を登場させるこの攻めの姿勢、繰り出される勝者のオーラを纏った力強い氷帝ナンバーが刻むリズムに客席の期待度はのっけから大いに煽られる。一方、ジリジリと相手を追い詰めていくような氷帝の“圧”と好対照に、瑞々しくもドラマティックなドライブ感あふれるナンバーで登場したのは我らが青春学園。この先に待つ戦いに備え、自らの手で勝利を掴もうという希望に満ちた思いを謳う。まずはそれぞれのスクールカラーを対比させ、ここから始まる試合へと観るものの心をいざなっていく。
今回の戦いは関東大会初戦だ。序盤は試合当日に向けての青学(せいがく)校内ランキング戦と、その結果を受けそれぞれの選手が今の自分と向き合い何が必要かを考えながらレベルアップのための“特訓”を重ねる様子が日常スケッチのスタイルで描かれる。同様に氷帝でも熾烈なレギュラー争いが展開。こうした「コートの外で何が行われていたか」が丁寧に拾い上げられることで、その先、一人ひとりが背負っている思いや試合の中での苦悩や喜びがより印象深く読み取れるのは嬉しい。
第一幕の試合は菊丸英二(富本惣昭)&アクシデントで腕を負傷した大石秀一郎(原 貴和)に代わって急遽登場の桃城 武(寶珠山 駿)vs忍足侑士(草地稜之)&向日岳人(小辻 庵)のダブルス2に始まり、乾 貞治(塩田一期)&海堂 薫(岩崎悠雅)vs 宍戸 亮(広井雄士)&鳳 長太郎(明石 陸)のダブルス1、河村 隆(大友 海)vs 樺地崇弘(栗原 樹)のシングルス3へと続いていく。ダブルス2、ダブルス1が試合展開に合わせた複数のナンバーで賑やかに繋いでいく中、グッと印象に残ったのはシングル3。試合自体はシンプルな構成だが、天才、異才、超人が集う青学(せいがく)の中、努力に努力を重ねてレギュラーを勝ち取ったタカさん(河村の愛称)の愚直なまでに真っ直ぐなテニスへの思い、いわば“普通の人間”の代表として全身全霊でラケットを握り続けた姿は感動的に美しかった。
第二幕は青学(せいがく)レギュラー陣と氷帝メンバー混合のフォーメーションが華やかな“セカンドオープニング”的ナンバーで一幕の熱を倍増させつつ、タカさんの血染めのラケットを引き継ぎ戦闘スイッチを入れた不二周助(持田悠生)vs 芥川慈郎(横山賀三)のシングルス2で試合再開。芥川の明るい調子に巻き込まれたポップな不二の表情はちょっと新鮮だ。
そしていよいよクライマックスのシングルス1、手塚国光(山田健登)vs 跡部景吾(高橋怜也)へとなだれ込んでいく。開始早々、見事な跳躍と強烈なショットで存在感を見せつける跡部は部員をバックダンサーにたっぷりとソロナンバーを披露、みるみる場を掌握していく。一方の手塚はあくまでも自分のペースを乱さず冷静に確実にゲームを進める。ここは互いに一歩も引かない展開ながら、手塚の腕の古傷に気づいた跡部が持久戦を仕掛け手塚も応戦。それぞれのプライドをかけた一騎討ちはやがて死闘の様相を呈し——。
どのゲームでも選手たちの戦いっぷり=試合にのせた感情は観客の心を揺さぶってくれる熱が込められているが、この部長対決はそれぞれの一挙手一投足から“闘争心”を超えた別の感情の大波……苛立ちや悲しみまでもが溢れ出し、非常にエモーショナルな瞬間の連続となっていた。身体が、フォームが、ボロボロになっていくにつれ、その歌声は力強さを増し、凄みを帯びていく。ボールのラリーと歌声のラリーが同期し、コートで打ち合っている同士にしかわからない魂と感情の共有が、見事なハーモニーとして駆け昇っていく。艶のある山田の声と高橋の攻撃的なハイトーンの相性も抜群。「この試合いつまでも見ていたいな」というベンチからのセリフはまさに客席の私たちの思いでもあり……。事前インタビューで二人が宣言してくれた『新たな歴史を刻みたい』の言葉通り、この試合はテニミュ史にしっかりと刻み込まれる名試合、テニミュ4thシーズンをもうひとつ上のステージへと押し上げてくれる重要な羅針盤になったのではないだろうか。
ここまでの大試合を経てもなお戦いはイーブン。ということで、決着は控えシングルス戦の越前リョーマ(今牧輝琉)vs 日吉 若(酒寄楓太)へ。ここまでずっと活躍の場面がお預け状態だったこと、そして熱い試合の数々、特に手塚部長の生き様が投影された試合の直後とあって心に火がついているリョーマのバトルゲージは既にMAX。ツイストサーブでガンガン攻めて行く。跡部越えを胸に下克上精神で挑む日吉も独自のスタイル・演舞テニスで前へ前へ。キレッキレの二人の対戦はやがてベンチにいるみんなの気持ちと溶け合い混じり合い、もはや全員vs全員の試合のようだ。そこにあるのは高揚感と多幸感。育ち盛りのテニス少年たちが自分の全部をぶつけ合う青春の煌めきである。
全ての試合が終わり、勝敗が決まり、夕焼けの中のエピローグまでを振り返ると、ギュッと濃密ながら非常にテンポ良くストーリーが進み、体感的には軽やか且つ満足感がしっかりと得られていた。テニミュ4thシーズン3作目ということで演出的にも解放感や軽妙さが加わったようで、また、試合のないキャストやテニミュボーイズも含め全員が一丸となってひとつの作品を創っているという思いが何気ないシーンや群舞のフォーメーションなどからもしっかりと感じられ、カンパニー全体が伸び伸びと表現を楽しんでいるのが伝わってきた。そして、練度だ。会見でも今牧がみんなでじっくりしっかり稽古を積み上げてきた自信を語っていたが、これはまさにその賜物。「ミュージカルを観ている。楽しい!」というステージが既に完成されている。ここからさらに公演を重ねどんな高みに到達するのか。最後の最後まで、その進化と深化も楽しみだ。
キャストコメント
■越前リョーマ役 今牧輝琉
ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン初の冬の公演となります。真冬ではありますが、今作の舞台は初夏の出来事なので、熱を感じていただければと思います。ついに関東大会に進み、より気を引き締めた青学(せいがく)と氷帝との試合を、熱い熱量でお伝えしますので楽しんでいただけると嬉しいです。長く続けてきた稽古で大変なこともありましたが、カンパニー全体で乗り越えてきたという団結力がお客様に伝わればいいなと思います。楽しんでいただきたいのはもちろんですが、劇場内は“熱い冬”なので外と中の寒暖差には気をつけて欲しいなと思います(笑)。今回僕は控え選手ですが、関東大会緒戦は何が起こるかわからないので、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs氷帝公演を最後まで楽しみにしていてください。
■手塚国光役 山田健登
率直にドキドキしているというか、いつもとは違う良い緊張感を感じております。
僕自身気合を入れて挑まないといけない試合がありますし、普段は跡部景吾役の(高橋)怜也くんと仲がいいのですが、 手塚と跡部の二人が真正面からぶつかり合っていく姿を、背中で青学(せいがく)の部員たちに見せていけたらと思います。勝ちにこだわり、“約束の場所”にチームを導きたいと思いますし、キャスト・スタッフ、そしてお客様と一緒に本日スタートしてゴールテープを切れる日まで走り抜けたいと思いますので応援よろしくお願いいたします。
■跡部景吾役 高橋怜也
(ミュージカル『新テニスの王子様』には出演していますが)僕としては、テニミュ4thシーズンは初めてということもあり、満を持して氷帝を引き連れての公演はとても楽しみにしていました。チームとして青学(せいがく)と真っ向勝負でぶつかり合えるのはすごく嬉しいですし、それぞれの試合ももちろんですが、(手塚役の山田健登と一緒に)僕たちが一番熱い試合を届けるつもりで稽古をやってきたので、その熱い思いを今日の初日にぶつけたいと思います。キャストだけでなくスタッフも含めてカンパニー全員でいいものをお届けするために頑張ってきました。死ぬ気で頑張ってきたものをお届けしますので、ぜひ楽しみに劇場に来ていただけたらなと思います。
■日吉 若役 酒寄楓太
すごくドキドキしてるんですけど、初日をみんなで迎えられてよかったな、と思っています。
リョーマに勝つ! という気持ちはもちろんですが、跡部さんに下剋上する! という気持ちも最後まで持ち続けたいと思っています。最後までみんなで走り抜けて、めちゃくちゃ熱い試合を皆様にお届けしたいなと思っています。楽しみにしていてください!
取材・文=横澤由香

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