ダンスカンパニーDAZZLE新作公演『N
ORA』、観客が物語の行く末を選択す
る「マルチストーリー」に挑む ゲネ
プロレポートが到着

ダンスカンパニーDAZZLE(ダズル)新作公演『NORA(ノラ)』が、2021年6月25日(金)~7月4日(日)、あうるすぽっと(豊島区舞台芸術交流センター)にて上演される。開幕に先立ち、6月24日(木)、公開ゲネプロが行われた。
DAZZLEは1996年結成。主宰で演出・脚本を担当する長谷川達也のもと、「すべてのカテゴリーに属し、属さない曖昧な眩さ」をスローガンに掲げ、ストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合させた独自のダンススタイルを追求している。映像や朗読、字幕も駆使しながら視聴覚に強く訴えかける舞台創りが特徴だ。
(c)飯野高拓
(c)飯野高拓

(c)飯野高拓
もともと『NORA』は2020年3月に上演されるはずだったが、世界的な感染症拡大の影響を受けて中止となり、このたび延期上演にこぎつけた。
舞台は近未来の東京。国民を監査するシステムが張りめぐらされ、国民監査局が国民の社会貢献度を査定している。反社会的な行動を取る人は劣等者と見なされ、行動制限、逮捕もあり得る。それに対し、遺伝子操作による生命デザインが横行する。人は生まれながらにして命の価値・優劣を定められるようになるのだ。独特なデカダンな世界を、DAZZLEの面々がうねるような群舞で表し、男子新体操チームBLUE TOKYOが舞台狭しと跳ねる。

(c)飯野高拓
(c)飯野高拓
主人公のNORA(金田健宏)は遺伝子デザインをされずに生まれた劣等者で、亡くなった父(渡邉勇樹)は国の体制に反発する反社会勢力を率いていた。もう一人の主人公である捜査官(高田秀文)は、謎に迫っていく。
(c)飯野高拓
(c)飯野高拓
人々は行き場のない世界で「東京C」という配信停止となった曰くつきのオンラインゲームに興じる。開発したのは神谷ルベル、通称C(長谷川達也)。21世紀の東京を舞台にした仮想空間を自由に行き来し、現実と虚構が錯綜しながら劇的に進む。演者は激しく踊り演じ、美しさと醜さ、優しさと残酷さといった相反する要素が複雑に同居する。ダークかつ比類なく美しい各場面にぴったりとハマる林ゆうきの音楽もDAZZLEの舞台には欠かせない。
興味深いのは、ストーリーの展開が観客の手に委ねられていること。青・赤それぞれの色を切り替えて発光させるプレートを掲げることにより観衆は二者択一で物語展開を選び、数の多い方が採用される。「マルチストーリー」と称する、選択次第で物語が変わっていく趣向によって、観客も客席に安住して観ている訳にはいかないのだ。NORAとは何者か? 「東京C」はどういう目的で作られたのか? 謎が謎を呼ぶ物語から目が離せない。
(c)飯野高拓
虚構の中でしか自由に生きられない世界。パンデミックにも襲われ、日々生きづらい現在、それが現実性を持って感じられるのではないだろうか。近年のDAZZLEは、「鱗人輪舞」(2016年)はもとより建物一棟をフルに使った「イマーシブシアター」でも、そういった点を扱ってきた。結成25周年に発表されることになった「NORA」は、その深化形といえるだろう。
ミステリアスな物語を豊かに魅せる語り口、エッジの利いたダンスによって、“現実”を生きることとは何かをあらためて問いかける。唯一無二の観劇体験を味わえるのは間違いない。
(c)飯野高拓
(c)飯野高拓

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