【Wakana インタビュー】
自分のやりたいことを
重視して作れたアルバム
歌詞を書く時間帯は朝です。
夜書くと、次の日に「え?」と
思うことが多いんです
今回、11曲中7曲の作詞をWakanaさん自身が手掛けてますが、前作と比べて作り方やテーマなど変化はありましたか?
ありました。デビューシングルと1stアルバムの時は、作詞は未知の作業だったので、自分の持つ色とか味とかが全然分かってませんでした。「翼」の時は作曲家の武部聡志さんが“歌詞は自分自身を投影していくのが大事だから、自分が本当に思っていることを素直に書いたほうがいいよ”とおっしゃってくださったのが大きくて、剥き出しな気持ちを書きました。荒削りで荒々しい感じがあったんですけど、その時だからこそ書けるものだったので、それはそれで良かったと思っています。でも、時間が経つと“もっときれいにまとめたい”とか“みんなに覚えてもらえる歌詞にしたい”とか、どんどん欲が出てきて、書くのが難しく感じるようにもなりました。
ちなみに、どんなふうに歌詞を書いているのですか?
メロディーを聴きながら出てきた言葉をバーっと書いていって、もう1度聴いて…というのを繰り返す場合もありますけど、聴きながらAメロ、Bメロというふうに順番に書いていくパターンも多いです。あと、書く時間帯は朝ですね。夜書くと、次の日に“え!?”と思うことが多いんですよ。
夜書いた手紙を朝に読み返すと恥ずかしいというのはよく聞きますよね。
それと同じです(笑)。夜は気が大きくなるみたいで、朝に読み返すと全然ダメだなって。なので、朝書いて、午後に読み返すという感じです。書けない時は休憩しつつ…インプットする場合もありますね。途中で映画を観たり、本を読んだり、漫画を読んだり。それでも書けない時は近くまで買い物に出か掛けたり、散歩したり、気を紛らわせている時にフッと浮かんだりするんです。あんまり考えすぎるのも良くなかったりしますから、気分転換は大事だなって。
適度な休憩がね。
はい。あと、作曲家の方が作ったメロディーが私に書かせる歌詞もあるんだなって感じました。デビュー当時、武部さんから“曲が持ってる言葉を見付けて”と言われたことがあったんですけど、その時は“それ、何ですか?”って全然意味が分からなくて(笑)。でも、どんどん書いていくうちにその言葉を理解しました。今はなかなか言葉が出てこなくても“この音が待ってくれてる言葉が絶対にあるはず!”と思うようにしています。
いろんなチャレンジが盛り込まれたアルバムになっているんですね。
そうですね。「where」とか「ひらりひらり」とか「myself」とか、低音部や低音域の自分の声を出してこなかったので、こういう音域の曲を増やしてもいいんじゃないかと思いました。「where」に関しては曲自体が打ち込みのサウンドなので、それを私が歌うと新鮮だと思ったし、ライヴでも映えるんじゃないかなって。「ひらりひらり」は難易度が高いと思ったんですけど、歌えば歌うほど深みを感じて、癖になる曲でした。「myself」は喉と喉が触れ合うというか、擦れるような言葉も大事にする音が並べられている曲なので、私自身が全部見えるような曲だなって思いました。こういう静かで聴かせる曲もアルバムに必要だと思って選びました。
「君だけのステージ」はライヴでも歌ってきた曲ですが。
ライヴで1年半ぐらい歌ってきて思い入れもありますし、自分の中で完成された部分もありましたから、それを大事にしようと思ってレコーディングに臨みました。楽器のレコーディングではミュージシャンの方々が“せーの!”で録る中に私も仮歌で入って、一緒にリズムを作りながら録りました。ヴォーカルはあとできちんとヴォーカルレコーディングをし直してますけど、ミュージシャンの方々のリズム感は“歌とともに”というのを重視していただいていたので、そういうやり方で録れて良かったと思っています。
さっきも昨年12月のライヴの話が出てきましたが、改めてどんなライヴでしたか?
フルで1日2公演するのは初めてだったので、最初は“どうなるんだろう”と不安でした。でも、“昼公演のこれが好きでした”とか“夜公演のこういうところが良かった”など、嬉しい声をたくさんいただいて、みなさんがじっくりと聴いてくれたんだって感じましたし、私自身、2公演したことで見えたこともあって楽しかったです。ピアノとギターとパーカッションという編成だったので、アコースティック感もありましたし、自分の声とみんなの音が奏でていく瞬間と、自分たちでリズムを作っていけるという楽しさも感じました。聴いてみるとテンポが“急に走ってる”とか“急にゆっくりになってる”と感じると思うんですけど、私はそういうのが結構好きだったりします。ライヴ感が大事だと思っているので、“この時はこんな気持ちだからゆっくりになった”というのを覚えているんです。“ここはゆっくりしたい”ってピアノの人にテレパシーを送ったり、“こういう入り方をしたので、もうちょっと速くしたい”とギターの人にテレパシーを送ったり(笑)。曲に自分が入り込んでいるからこその揺れだったりするので、それもぜひ楽しんでもらいたいです。
テンポの緩急もライヴならではということですね。
はい。ライヴならではということであれば、8曲目の「恋はいつも」もそうです。お客さんの声が入ってて、“みんなが歌ってる!”って感動しました。Instagramに“みんなの声も入ってるよ”って書いたんですけど、そういう曲ってこれまでなかったんです。コール&レスポンスができて良かったですし、この曲を含めて映像が浮かんでくるようなライヴCDになっています。
そして、3月14日には『Wakana Spring Live 2020 〜magic moment〜』がヒューリックホール東京で行なわれるという。
この1年間で『Wakana』と『magic moment』という2枚のアルバムを制作できて、他にもデビューシングルやEPもあって、曲を増やすことができたので、私自身を集約した一夜にしたいなと思っています。セットリストは今考えているところです。曲が増えたことでいろんな並べ方ができますし、今までは“この曲は歌わない”という選択肢はなかったんですけど、今回は外す曲を選ばなければいけないのが寂しくて。でも、カバーやKalafinaの曲もやりたいので、心を鬼にしないといけないなって。ギターとベースとドラムの方々は去年の春のツアー“VOICE”に参加していただいたメンバーなので、その時を思い出して楽しくやれそうです。そして、今回も武部聡志さんが音楽監督をしてくださるんですけど、なんとメンバーとして参加していただけることになりました。これまでアンコールでピアノを弾いていただいたり、特別ゲストということはあったんですけど、フルバンドに加わっていただくのはライヴでは初めてなので楽しみにしていてください。私もすごく楽しみです。
取材:田中隆信
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