KEIKOが語る「アニメタイアップ、梶
浦由記、武道館、そして生き方の話」
1万字ロングインタビュー

KEIKOが自身ソロ活動で初となるアニメタイアップ楽曲「夕闇のうた」を1月24日に発売する。TVアニメ『戦国妖狐 世直し姉弟編』エンディングテーマとなるこの楽曲は、作詞・作曲・編曲を梶浦由記が担当している。
KalafinaのプロデューサーとしてKEIKOとは長年音楽を紡いできた梶浦の楽曲を、KEIKOはどう受け止め、どう表現したのか? そして昨年の『Kaji Fes』から直近に控えた『リスアニ!LIVE 2024』と二ヶ月連続で武道館のステージに立つ心境など、今のKEIKOをたっぷりと語ってもらった。1万字のロングインタビューでお送りする。

――ニューシングル「夕闇のうた」が出るということでのインタビューをさせていただきます。ついにソロ初のアニメタイアップ楽曲ですね。
ありがとうございます。
――今回のお話を聞いたときってどうでしたか?
アニメ久しぶり! アニメの歌を歌えるの嬉しい! みたいな感じでした(笑)。
――Kalafinaの時はタイアップ多かったですもんね。
でもこれだけソロ活動で時間が空くと、不思議な感じになりましたね。ソロで歌わせてもらえるのかって。なんか嬉しいのと、「ついに!」みたいな。初心に帰る感じでした。
――アニメ作品タイアップって世界観に寄り添わなきゃいけない、と思うんですが、ソロで自分の世界を紡いでいくっていうのとは別作業の感覚なんでしょうか。
作品と共にある音楽というのが、タイアップとして正解だと思うんです。自分もこれまで多くの作品で歌わせていただいているので知っている部分もあるし、単純にいち視聴者として作品と音楽の結びつきを体感している部分もあるから、その近さというか、相乗効果みたいなものは体感として持っているので、やっぱり気合いは入りますよね。
――最初の印象として、どこか懐かしい感覚になりました。数年前を思い出すというか。
良かった。それが嬉しいです。そう言ってくださるお声もいただいているので。
――改めて梶浦由記さんの曲の構成がすごいと思いました。アニメのエンディングテーマなので、放送では89秒の中でどう曲を伝えるかが勝負だと思うんですが、この曲は89秒まるっと全部使って、ひとつのサビを構成している。
そうなんですよ。
――『戦国妖狐』の原作は完結されているので、世界観が分かっている部分もあるので、ワンテーマを89秒でちゃんと聞かせる曲を作れるんだ、と。
そうだと思います。私は今回のお話をいただいてから原作を読ませていただいたんですけど、もともと梶浦さんは原作を既読済みで、原作の水上(悟志)先生のファンだっておっしゃっていたから。自分がまさかエンディングテーマを書けると思ってなくて、興奮したって言っていましたね。今回は「世直し姉弟編」っていう、主人公たちの旅が始まる部分なんです。梶浦さんは物語の始まりを、どんな寄り添い方で書かれるのかな、と私も楽しみに待っていました。
――今回、楽曲を制作するにあたって梶浦さんとの打ち合わせなども結構あったのでしょうか?
楽曲制作のタイミングが、梶浦さんの30周年イヤーの最中だったんです。春頃からファンクラブツアーもやっていたので、「お疲れ様でした!また明日!」みたいな感じでしたね。でも一緒に活動している中で、新しい作品と出会い、音楽制作をさせて頂く事はすごく新鮮でした。レコーディングとかの流れは阿吽の呼吸とまではいきませんが(笑)とてもスムーズでしたね。どういったメロディが歌えるのかな……って、待っている状況が一番緊張したかな。
――曲が来るまでの間が緊張した。
そう、仮歌とかってまずテレビサイズを制作するんです。その後フル尺を録るんですけど、フルになったら絶対、梶浦さんの中でドラマチックに広がった新しいメロディが入ってくるって色々想像を膨らませるんです。これまでの経験からどんな別メロが入ってくるんだろうとか。だから待機している時は結構緊張していたし、楽しみにもしていましたね。
――歌い出し1音目聴いた瞬間に、梶浦由記✕KEIKOだってわかる音楽というか。
歌い出しの「光と影が手を取り駆け巡る 夜の中で生まれた…」っていうこのフレーズで、もう“入った”って感じでしたね……戦国妖狐の世界に。あとはその中で自分の歌いたい、大事にしたい言葉とか、こだわった言葉の響かせ方がしたいっていうところは、録音して確認して、チェックつけて何パターンか試してみたりしてっていうことを繰り返しました。歌い出しが私の中でも命の楽曲でしたね。
――やっぱりこれ、歌い出しがサビ頭ですよね。
そうなんです。サビから始まるんですよ。確か梶浦さんが楽曲制作の初めの段階で、このフレーズが出てきて、その後にもう一回、サビみたいな展開を考えようとしたんだよねっておっしゃっていたんです。でも「これがいいと思ったんだよね」って、この形になったみたいです。
――KEIKOさんはソロ活動の中で、都会的な女性の場面を切り取ったり、新しいことにチャレンジされてきた部分があると思うんです。でもここにきて、今回の楽曲を聴いた瞬間にKEIKOさんだって分かる曲が来たのがどこか嬉しかったんです。
それは私も嬉しいですね。
――この間の『Kaji Fes』でも感じましたけど、梶浦サウンドってリズム帯がちょっとタイトでガッツリしてる上に、綺麗なメロディが乗ってくるという印象なんです。この曲もタイトでパワフルなリズムに負けない声を出しているなと。
うん、気合入ってる(笑)。武道館で初お披露目させていただいたんですけど、歌い出しが全て持ってくなと思っていて、歌い出しにサビぐらいのテンションで歌いました。
■ソロアーティストとして、梶浦由記から託されたメロディ
――これを聴いて、改めてソロのアルバムを聴き直したんです。
わあ、どうでした?
――歌の硬軟の使い分けがすごく自由になっていると思いましたね。で、そうなると、もう一回Kalafinaを聴こう、ってなるわけです(笑)。
戻りましたね(笑)。
――Kalafinaの時って低音担当だったわけじゃないですか。三声でいうと支えるようなポジションだったわけですけど、どんどんとKEIKOさんがメインを取る意識が曲の中で増してると思っていて。今回は本気の梶浦サウンドに対して“負けない”っていう覚悟すら感じました。中盤の別メロの伸びとかもすごく綺麗だし。
これは私も「こうくるんだー!」って思いました。梶浦さんサウンドではおなじみのクロスボーカルなので、一人じゃ絶対歌えないんですよ。それが譜面に描かれていて、私はもう絶対こっちだなと思って練習してたとこが違ったんです。「KEIKOちゃんが歌うのは上のパートメインだから」って言われて。
――予想外だったんですね。
「いつもだったらクロスボーカルの下の旋律を歌うのに上なんですね」ってちょっと焦っちゃって(笑)。その時に梶浦さんがKalafinaを経て、ソロ活動になって、それでも一緒に音楽をやらせてもらっている中で「今のKEIKOちゃんにはこっちを歌って欲しい」って書いてくれたメロディがすごく嬉しくて。絶対3年前だったらこっちのパートじゃないんだろうなって思うパートを預けてくださった。もっと頑張ろうって思いましたね。
――確かにKalafinaの時であったり、ソロになりたてだったら下の旋律だったのかもしれないですね。
そうだと思います、びっくりしました。でも「KEIKOちゃんは歌えるでしょ?」っていう期待も込めて書いてくださったのかな、と思うと大切に歌いたいなと思って。懐かしい私の安定の声も、新しい私の声の挑戦も、盛り込まれた1曲になっています。
――あえてこの曲でどこがサビなのって言われたら、スキャット部分かなと思いました、凄くかっこいい。
そこはずっとそばで聴いていてくださってる梶浦さんだからこそ、ああいう旋律を書いてくださったんだなって思いますね。
――あれはやはり梶浦さんしか出てこないですよね。
仮歌って昔から梶浦さんが歌ってくださるんです。それこそ「風の街へ」の時から梶浦さんの声で歌ってくださっていて、そこからキーを決めるために私の仮歌を録るんですけど、聴いた時に「わーお!」って思って(笑)。梶浦さん節がすごいじゃないですか。あそこは『戦国妖狐』の現代とは違った、時代背景を感じるアニメの世界の象徴だなって思った部分ですね。
――歌詞的にはどうですか?
歌詞は作品へのリスペクトも感じました。やっぱり一番初めの光と影っていうところで、物語の軸みたいなものが見えるんです。その入り口が開いていく所からスタートしているから、これはたまちゃんと迅火のことかなって思ったり。
でもこの「同じ夜に生まれた」っていう2番の部分は、ちょっと深読みしちゃうような感じになっていたり…色々深読みしちゃいます。今マスタリングなど、全ての作業が終わってから1ヶ月くらい経つんですけど、レコーディングで歌ってからは5ヶ月くらい経っているんです。その時に原作を読んで思った気持ちと、すでにもう、ここは違ったのかも、っていう登場人物の見方が変わってきているから、この先アニメとともに、この「夕闇のうた」が見る人によって、寄せるキャラクターによって変わってくるのかもしれないなって思いますね。だからアニメの作品の曲は面白いんですよ。
■今はちょっと自分の声を理解してきた
――そのアニメタイアップのお話もできれば。Kalafinaでデビューしてから、タイアップがずっと続いていたじゃないですか。ラストシングルとなった「百火繚乱」まで。
「progressive」のシングルのみノンタイアップでしたね。
――印象として、KEIKOさんのソロはKalafinaとは雰囲気を変えて、先ほども言いましたけど、アーバンなものを作ってみたり、等身大の女性になっていくみたいな部分に意識が合ったんじゃないかと思っていたんです。だからタイアップみたいなものから距離を置いているのかなって勝手に思っていたんです。
そういうわけではないですね。同じことをやり続けるっていうのも、本当に難しいこと。でも新しいことをチャレンジしていく中で同じことを続けていくっていうのが理想的だなって思っていて。ソロになったら新しいことをまずちゃんと挑戦していかなきゃいけない。だから私がこれまで役割を担っていた低域の部分だったり、朗々と歌う部分だったり、ちょっと闇深いミステリアスな音楽の歌唱の表現を担当していたとか、その部分をすごく全面に出した音楽性をソロのスタートでやっていたら、うん、KEIKOだねっていう感じの安心感はあったと思うんです。
――確かに。
せっかく新チームになってすべて環境が変わったのなら、やっぱり新しいことやるしかないかなって。反響も見たいし、私ももっとソロの声を勉強したいっていう気持ちがあって。『Lantana』はそのKEIKOとしての楽曲作りをやってみようっていう欲が強かったんです。
――確かにアルバム『Lantana』の時は、結構お話を聞いていても自分の歌い方だったり、音に対するこだわりに対してセンシティブになってるなって思っていました。
そう、今思うとそこまで考えなくても! っていうくらい神経質になっていたかも。この響きが気持ち悪い! とか。やっぱりまだKalafinaの名残があって、響きをすごい気にしてたんですよ。
――今はそういうことから結構、自由になった?
今はちょっと自分の声を理解してきました。さっきの別メロのクロスボーカルする部分も、梶浦さんからは無理して地声で強く出すんじゃなくて、KEIKOちゃんが心地のいい高音のミックスボイスでもいいし、強い裏声でもいいし、まず一回気持ちの良いところで歌ってみる感じがいいと思うよってディレクションしていただいたんです。1曲を通して私の心地いい声が聴けたらそれがいいって言っていただいて。それは3枚アルバムを出させてもらって、いろんな声を探していったから今回も模索できたと思っていますね。
――正当進化されている気がしますね。ではカップリングの話も聞かせてください。「燈命」です。
ソロ初めてのタイアップっていうのと、シングルを盤で出すのも今回初めてなんですよ。今回は『戦国妖狐』さんとのご縁で出来上がったシングルだから、盤全体をアニメとともに作りたいなと思ったんです。カップリングの方もイメージソングみたいになるように考えていて。キャラクターでいうと、たまちゃんのことをりたいと思って制作側の方にも相談をしました。
――妖狐である、たま側の曲なんですね。
はい、妖狐だから人間より何百年も生きていて、ちょっと妖艶なミステリアスで大人になる瞬間も覗かせてくれる、その描写がすごく好きなんです。それも相まって少し大人だけど、バラードとしては壮大になりすぎない、たまちゃんのちょっと拙い切ない感じのキャラクターも大事にしたいと思って、このメロディーラインを作らせていただきました。
――サラッとした艶っぽさみたいなのが詰まっていると感じました。
そういう部分は大事にしました。プロデューサーの与田(春生)さんが、初めて会った時から「KEIKOは和メロが合う声だね」って言ってくれていたんですけど、自分でも和メロっぽいものを歌うとなんだか心地が良いというか。そんなに研究したり、考えなくても自然と歌えるっていうのがあって。多分好きなんですよね、和メロ。
――旋律としては和メロっぽいんですが、ちょっと都会的というか、今っぽいと思いました。
なんか、気合を入れすぎない感じですね。「夕闇のうた」と比べて、こっちは気合を入れすぎるとちょっと強くなりすぎちゃう。サビとかはもっと歌い上げたくなるメロディーなんですけど、そこをちょっとグッと抑えて、聴き手の気持ちになって歌いました。
――アーティスト写真も気合入っていると思いました、KEIKOさん本気だなって。
本気ですよ! 本気! 受け取っていただけましたか(笑)。 本気繋がりで言ったら、テレビサイズは今野ストリングスの皆さんに超絶ドラマチックに奏でて頂いた弦のアレンジで始まるバージョンなんですけど、もう……惚れ惚れしてました。うっとりです。
Kalafinaの時は声を入れたら、後は梶浦さん達にお任せだったので、梶浦さんが最後の最後までバランスをこだわってらっしゃったオリジナル版で入れているノイズの音とか、本当に繊細な音の粒もスタジオで調整していて、そういう現場が見れたのもすごく貴重だったんです。関わってくださった方々のたくさんの本気を感じて貰えたら嬉しいですね。
■武道館という特別な場所
――では、ちょっとライブの話も聞いていきたいです。先日『Kaji Fes』も拝見させていただきましたが、やっぱりKEIKOさんは武道館が似合うと思いました。もちろんHikaruさんも。あの空間を埋められるスケール感を持っているのは、すごいと思いました。
ありがとうございます。
――そして1月27日にはまた同じ武道館で『リスアニ!LIVE 2024』(1月27日、28日の2日間で開催。KEIKOは27日に出演)が行われます。
すぐですよね。
――KEIKOさんは武道館のステージを結構踏んでらっしゃいますが、あそこって改めてどういう空間なのでしょう?
近いんです。ステージが大きいのに近いんですよ。あといつも印象が変わらないですね。大きいけど近いから温度感がちゃんと伝わる。お客様の熱気も置いてきぼりにならないけど、上を見ると大きいという不思議な会場だと思うし、やっぱりみんな言いますけど、日本武道館って、誰か……何か住んでる?宿っている?と思いますね。絶対音楽の神さまがついてる気がする(笑)。
――やっぱりどのアーティストも武道館は夢って言いますもんね。
大好きな人、多いんじゃないですかね。やっぱり大きくなればなるほどお客さんと遠くなる一方だから、アーティストは寂しいんですよ。多分もっと顔を見たいし、声も聞きたいけど、やっぱりホールもどんどん大きくなっていくと見えなくなってくる。でも武道館ってみんな見えるんですよ。あと音が降り注いでくるんです。声と拍手が上から降ってくるから、その音量感とかもちょっと格別なのか知れない。個人的にはあの空間はただいま感があります。
――『リスアニ!LIVE 2024』でも『Kaji Fes』と同じく、FictionJunction(梶浦由記ソロプロジェクト)としての出演となります。
そうですね。初めて武道館に立ったのは2015年にKalafinaとしてでしたけど、梶浦さんがいてくださるのといないのとでは全然違うんですよ。やっぱ座長がいると違う! 心強いし、もう全く別物。
――梶浦さんだけじゃなく、フロントバンドの皆さんとも長い付き合いになってきましたよね。
もう私と梶浦さん自体が18年、かおちゃん(織田かおり)とは私がデビューする前から事務所の歌イベントでも会っていたから、一番付き合いが長いですね。
――そういう人たちと武道館だけじゃなく、海外のステージも一緒に並んで立ち続けているのはすごいと思います。
めちゃくちゃ嬉しいですね。勝手を知っているから支え合えるけど、FictionJunctionはグループじゃないから、ちょっと不思議なんですよ。梶浦さんのボーカリストさんたちは個々にそれぞれ音楽やっていて、1年に1回梶浦さんが集合かけて、みんなで音楽を届ける楽団になるみたいな感覚。自分の音楽がちゃんとあるから、集団ではあるけどグループではない。その感覚が自分の中でもずっと染み付いていたんですけど、2023年は本当グループ活動かなっていうぐらいに動いていて、それがまた面白くて。
――面白かったんですか。
そこまで密にいると知らない部分とか、お客様の質問のおかげで私も知らないJoelleちゃんの顔とか、かおちゃん最近そういうことしてるんだ! とか、仲がいいとあえて聞かないっていうこともいっぱいあるから、そういうことを知るきっかけにもなって。
――知れば知るほどグループ感が出そうですね。
そうなんです、だから2023年の活動は本当にFictionJunctionっていうグループにちょっとなっていて、その流れのひとつの終着駅で武道館が来て、終わるのかなと思いきや、すぐまた『リスアニ!LIVE 2024』で武道館にただいまをするっていう(笑)。だから梶浦さんもFictionJunctionとしてアニメイベント出るの新鮮で楽しみって。
――多分、今回の『Kaji Fes』でいうとLINO LEIAさんやritoさんという新しい歌姫たちも増えました。歴史をちょっと感じますよね。
そう、やっぱり新しい風と変わらないものっていう両方がありましたね。一緒に歩んでいけたら一番いいと思いました。新しい歌姫さんたちとの出会いで、どんな声を重ねるとどんな音になるのかなとか、個人的にすごく楽しみだったし、安心安定のレギュラー歌姫が生むグルーヴもあり、両方とも楽しいんですね。
――『Kaji Fes』ではHikaruさんとの共演もありました。
Hikaruとは何も考えずとも勝手に合いますね。考えだすと逆にずれるみたいな。思い入れはもちろんあるけど、音楽が鳴りだしすと……Hikaruの言い方を借りるなら音楽という「会話」の仕方が出来る。めっちゃ楽しいですね。
――確かに楽しそうですね。
楽しいですよ。ソロ活と両方できるって、最強に楽しいです。
■音楽が鳴った時にスイッチが入ればいいと思っている
――やっぱりあの頃、Kalafinaの時は、KEIKOさんちょっと張り詰めていたと思うんですよ。
そうですね。
――その張り詰めている緊張感がKalafinaの音楽やステージを作り上げていたと思うんですけど、今凄い自由で、凄い楽しそうに見えるんです。
楽しいって思ってもらえるのが一番じゃないですか。ライブに来て、見ていて楽しい、聴いて楽しい、悲しい歌でも暗い歌でも明るい歌でもなんでも、そう思ってもらいたい。そういう歌い手になりたいと凄く思います。だから「楽しそう」って言われるのがとても嬉しいですね。いろんなことを経験しないと、もしかしたらこうはなれなかったかもしれない。だからこれまでの全部が大事ですね。
――そう思えるようになった2023年を踏まえて、どこかボーナストラックのように年明け行われるに行われる『リスアニ!LIVE 2024』の武道館は僕はすごく楽しみです。
もういっちょ行くぞ!って感じ(笑)。2ヶ月連続で武道館で歌えるなんて初めてだし。『リスアニ!LIVE』にただいま出来るのは、2017年のりっちゃん(LiSA)と2マンやった以来ですから。
――今回もLiSAさんが出演されますしね。
そうなの! 嬉しい! 「アレ」が初めて聞けるんじゃないですか?
――しかもその後、3月にはビルボードライブ東京&大阪でもソロライブが開催されます。
はい! そうです!
――ビルボードという空間はどうですか? 大人っぽい、距離の近かいゆったりとした空間だと思いますが。
ビルボードこそ、本当に自由な空間ですね。ビルボードさんのライブがなかったら、こんなにギター練習してなかった(笑)。
――インスタライブでも凄い練習されていましたね。
なんか、自分一人でライブをするってなった時に、もう少し音遊びをする時間が欲しいと思ったんです。音楽で遊びたいというか。それは声だけじゃなくて、自分も何かに挑戦しなきゃなのかなっていうのは、どこかで制作していて思っていたんですよね。で、ビルボードさんって海外のアーティストさんたちが立たれているステージっていう印象があって。
――ビルボードはジャズのステージも多いですしね。
セッションみたいな、その瞬間のライブの呼吸で演奏されていたり。そういった音楽を楽しむ余裕さみたいなものはちょっと"あこがれ"としてあるんですけど、やっぱり自分の音楽ではまだ声ではちょっとそこまで崩せない。でもギターを持った時はちょっと分散されるのか、声も少しナチュラルに自由になるし、リズムの取り方も少しギターを始めてから変わってきたし、そういったところも楽器を始めてみることも面白いかなって思って、ビルボードさんではいつかそんな音遊び、もっと楽しめる様になりたいって思っています。
――なんか、本当に今回のこのシングルを踏まえてのビルボードは、僕はすごい楽しみですね。しかも1ヶ月前、Hikaruさんもビルボードでライブをやってますし。
そうなんですよね、何か引き寄せがある(笑)。
――武道館の大きいサイズでもやれるし、ビルボードのどこか手が届くような距離でもやれるっていうのは、音楽に対してのレンジが広がってるって思います。
いろんな会場、いろんな環境で歌うっていうのは、自分を強くするなと思います。どこのステージに立ってもやっぱり声は心の表れだから、常にやっぱり楽しんでもらいたい、もてなすっていう気持ちが、どこかにあっての表現者でいたいなって思いますね。
――お話ししていても、物事の伝え方がすごい柔らかくなったなって印象を勝手に感じています。
そうだと思いますね。私はこうあるべき、みたいなのが前はすごく強かった。自分でもそれは意識していましたし。今は「そういうのは歌に入った時だけでよくないかい?」って思いますね。
――歌に入った時だけ、ですか。
音楽が鳴って、それでスイッチが入ってこの世界の中に入るみたいな。自分のスイッチはその瞬間に入ればよくない? って感じですね。それ以外はなるべく、ライブ会場のMCとかも、こうやってお話しさせていただいていても、普通に会話できたらいいかなって。
――すごく柔らかい素敵な女性になられていますね。
本当に嬉しいです。
――でも本当に良いタイミングで今回のシングルが来たと思います。
2曲セットで聞いてもらいたい作品になりました。原作への愛情がある方がたくさんいらっしゃる作品だから、原作ファンの方にもセットで聞いてもらえたら嬉しいですね。
――なんか、Kalafinaの時ってタイアップの作品の話をする時はHikaruさんが担当だったので、ちょっと新鮮ですね。
そうですか? 私が語るよりHikaruが語るほうが正確だったから(笑)。ジブリを語るならWakana、アニメを語るならHikaru、私は歌を語る、みたいな(笑)。でも本当にアニメも好きなんですよ。でも、SNSのコメントとか読んでいたら「KEIKOがアニメの歌をソロで歌うってイメージしてなかった」って、書かれていたりして「嘘!?」って思ったの。作品に寄り添って演じる、みたいなものをライブで表現するのが大好きだったし。でもそのイメージがなさすぎたのかな。
――それだけしっかり役割があったということで。
私はきっと歌声オタクなんですよ。ここはこう響かせたい!みたいなのを研究するのが好き。だからこそ「夕闇のうた」は作品からエネルギーを頂きながら歌いました。作品へ愛情を持った方々に、言葉から、音楽から景色を共感していただけたら嬉しいですね。是非『戦国妖狐』とともに楽しんでください。そして2024年はスタートダッシュしていくので、ついてきてくださいね。
取材・文=加東岳史 撮影=池上夢貢

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