劇団四季の新作ミュージカル『パリの
アメリカ人』製作発表&楽曲披露をレ
ポート!「このミュージカルに”恋”
してほしい」

劇団四季が2019年1月より上演する新作ミュージカル『パリのアメリカ人』の製作発表が都内で行われ、クリエイター陣とキャスト候補者6名が登壇。演出・振付を担当するクリストファー・ウィールドンらによる作品の解説やレクチャーに加え、俳優たちが劇中のナンバー2曲を披露した。その模様を撮り下ろし写真とともにレポートしたい。
まずは劇団四季(四季株式会社)代表取締役社長・吉田智誉樹が「初めてこの作品を観たのは2014年のブロードウェイ。イマジネーション溢れるダンスにうっとりし、全体のレベルの高さに驚きながら、本作を上演することは四季にとって大きなチャレンジになると感じました。映画作品を基に、登場人物たちの心情もさらに掘り下げられており、洗練されたおしゃれなミュージカルになっています」とコメント。
劇団四季(四季株式会社)代表取締役社長・吉田智誉樹氏
続いてオリジナル・プロデューサーのスチュアート・オーケンより、1952年に公開された映画『巴里のアメリカ人』をミュージカル化した際、重点を置いたポイントについて説明があった。そのポイントとは以下の3点。
1. 時代設定を1945年、終戦直後のパリへと明確に置き換え、コメディ色の強い映画版をよりドラマティックに再構築。つらい時代の中でも夢と希望を信じられる脚本に仕上げた。
2. ガーシュウィンの楽曲を脚本の流れと展開に沿ってアレンジ(曲順、編曲、新たなナンバーの追加)。
3. ダンスを前面に出すステージングに。クラシックバレエに加え、ジャズダンス、タップダンス、シアターダンスを取り入れ、クライマックスである終盤のバレエシーンも映画版に敬意をはらいつつ改訂した(14分間に及ぶバレエシーンが登場)。
また、ウィールドンの起用については「まれに見る才能。バレエ界と演劇界を繋ぐ人材だと思う。いつかは彼と仕事をしたいと願っていたのがこの作品で叶った」と圧倒的な信頼を見せ、「観客の皆さんにはこのミュージカルに”恋”してほしい」と締めくくった。
スチュアート・オーケン氏
バレエ作品『不思議の国のアリス』や『シンデレラ』『冬物語』等の斬新かつ繊細な振付で世界的に注目を浴び、ミュージカル初演出作となる本作で2015年のトニー賞・演出家賞にノミネート、さらに振付家賞を受賞したウィールドン氏は「依頼を受けた時は驚きとワクワク感に包まれた。初のブロードウェイでのミュージカルのクリエイション……スチュワートとの信頼関係に助けられたよ。僕自身はダンス出身だから、言葉(セリフ)を通じて作品の世界観を表現することは新たな挑戦だった」と語り、「基になる映画を再構築することでミュージカル版としてのオリジナリティを持たせ、どう現代の観客に届けていけばいいのかを意識した。悲惨な時代背景と美しい恋愛のコントラストを通して人生の美しさ……人生賛歌を伝えたい」と報道陣に笑顔を向けた。
さらに演出する際苦労した点は?との問いかけに「ダンサーと俳優との共同作業が刺激的だったし、それぞれの違いが明確に出たのが興味深かった。俳優はよりアグレッシブに前に行こうとし、ダンサーは指示を待つ傾向もあるからね」とダンス出身者ならではの視点で回答。
クリストファー・ウィールドン氏
この後、アイラ&リオノール・ガーシュウィン信託のマイケル・ストランスキーのコメントを経て、本作出演候補俳優6名によるナンバー披露へ。
マイケル・ストランスキー氏
まず登場したのはジェリー役候補の酒井大とリズ役候補の石橋杏実。ふたりが本作のテーマ曲とも言える「An American in Paris」をダイナミックかつ華麗に踊り、
続いてジェリー役候補・松島勇気、アダム役候補・斎藤洋一郎、アンリ役候補・小林唯、マイロ役候補・岡村美南が「’ S Wonderful ~Shall We Dance?」を軽やかに歌う。最後はもう1人のリズ役候補・近藤合歓も舞台に上がって、松島の「この作品を初めてブロードウェイで観たことでそれまで悩んでいたことがクリアになり、自分の演劇人生が変わるのを実感しました。素晴らしいダンスや音楽、そして諦めずに夢を追いかける若者たちの姿に強い感銘を受けたんです。初日に向けて皆で稽古に励んでまいります」とのアツい言葉で製作発表は締められた。
『パリのアメリカ人』は1945年、第二次世界大戦直後のパリで繰り広げられる若者たちの群像劇だ。アメリカの退役軍人で画家を目指すジェリー、秘密を抱えたバレエダンサーのリズ、そのリズに恋をするピアニストのアダム、ショーマンに憧れる資産家の息子・アンリ、そして芸術を愛する大富豪のアメリカ人女性・マイロ。戦争の悲惨さ、ナチスの傷跡があちこちに残るパリで若者たちは恋をし、将来を夢見て時に傷つく。
ブロードウェイでの上演時には「俳優がバレエダンサーと同様に踊り、バレエダンサーが俳優同様に演技をし歌う」と称され、鬼才ボブ・クローリーによる洗練された舞台美術も話題となった(ボブ・クローリーは『アイーダ』『リトルマーメイド』『アラジン』等、四季でも上演されたミュージカルの美術を担当)。
ミュージカルとしては『ノートルダムの鐘』(2016年)以来の新作となる『パリのアメリカ人』。本作に挑む劇団四季が”大人のシアターゴアー”に向けて美しく切ない世界を魅せてくれるのを楽しみに待ちたい。
劇団四季ミュージカル『パリのアメリカ人』は2019年1月20日(日)~3月8日(金)まで東急シアターオーブにて、3月19日(火)~8月11日(日・祝)までKAAT 神奈川芸術劇場<ホール>にて上演される。
取材・文=上村由紀子  撮影=安藤光夫

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