矢井田 瞳

矢井田 瞳

【矢井田 瞳 インタビュー】
一曲の中でいろんなとらえ方が
できるようにしようと思った

テレビ朝日系木曜ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』主題歌として書き下ろされたヤイコ(矢井田 瞳の愛称)の新曲「アイノロイ」がとてもいい。藤井 風などのプロデューサーとして知られるYaffleがサウンドプロデュースを担当し、『手塚治虫文化賞』大賞を受賞した原作コミックの世界観を損なうことなく、見事にポップミュージックへと昇華させた、アーティストの深化を感じさせる一曲に仕上げている。

プレイヤーが変わると
空気が変わる音楽が好き

新曲「アイノロイ」の話をおうかがいする前に、7~8月に行なわれた全国ツアー『矢井田 瞳 Acoustic Tour 2023 〜ピアノとハーモニカと〜』があまりにも素晴らしかったので、ぜひこの話を聞かせてください。何と言っても倉井夏樹さんのハーモニカですよ! すごかったです!

嬉しいです! 夏樹くんは魔法使いのようにいろんな音色を出すんですけど、器用なだけじゃなくて、曲の理解度がすごくある人なんです。歌詞の世界観をイメージして空間を作ってくれる感じで、私自身も毎回惚れ惚れして、楽しみながらライヴをやっていました。1回として同じプレイがなかったので、それも最高でしたね。

それもすごいですね。ライヴを拝見していて、“これは本当に吹いているのか? シーケンサーじゃないのか?”と思う場面が多々あったんですが、確認するとちゃんと倉井さんが演奏していて。ライヴ中、そんなことが度々ありました。そもそもヤイコさんは倉井夏樹さんをどこで発見されたんですか?

夏樹くんはマネージャーの紹介です。私自身、アコースティックライヴが続いている時、やっぱり新しいエッセンスが欲しいし、新しい挑戦をしたいタイプなんですけど、そこでマネージャーから“倉井夏樹くんという素晴らしいハーモニカプレイヤーがいて、ギターとハーモニカはこれまでやったことないから新しいチャレンジにもなるし、合うと思うからどうですか?”って紹介してもらったんですね。

ヤイコさんのチャレンジ精神が反映されたんですね。

最初はもちろん“ハーモニカって、あの学校で習ったハーモニカ?”と思って、すごく牧歌的でのんびりとした…それこそ「夕焼け小焼け」みたいなイメージがあったので、私の曲にもハーモニカが合う曲はあるだろうけど、一緒にリハーサルに入るまでは“どうなるんだろう?”と思っていました。ですけど、リハーサル初日でその概念はぶっ飛びましたね(笑)。足元にたくさんエフェクターボードを持ってきて…それも機器に使われているんではなく、ちゃんと機器を使う側だったし、しかもハーモニカを何十本も持ってきていて。あと、ハーモニカだけはなくて、音楽に必要があれば、胸をドンドンと叩いてパーカッションみたいなこともチャレンジしてくれて、本当に夏樹くんのミュージシャンシップが粋で、“ぜひご一緒したい!”となりました。

ハーモニカっていうと唱歌とかフォーク、あとは米国のブルースとかですものね。でも、倉井さんのハーモニカはそれらとはまるで違っていて、正直言ってびびりました。で、思い起こせば、高高-takataka-もそうでしたけど…これは失礼な言い方になるかもしれませんが、ヤイコさんは一般的な知名度はまだ高くはないけれども、優れたミュージシャンと一緒にやることが多いですよね?

それは私がすごく巡り合わせに運があるというか、ありがたいことに人に恵まれているというか。あと、これは普段生活してても思うんですけど、私には“有名である、有名じゃない”っていう感覚が欠落していて(笑)、そういう部分でものを見たことがないんですよね。

なるほど。名のある方と組みたいとか、新人を発掘したいとかいうことではなくて、先ほどもおっしゃっていた、新たな音楽的可能性に挑戦したい気持ちが強いということなんでしょうね。

そこが一番なのは間違いなくて。それは私がそうだというよりは、“私の音楽には他にどんな可能性があるかな?”ってすごく思うというか。デビューしたばかりの2005年くらいまではチームで固めていて“この人たちでやりたい!”と思っていたんですけど、先輩ミュージシャンと呑んでいる時、“世の中にはミュージシャンがたくさんいるから、一度きりの音楽人生、いろんな人とやるといいよ”って言われて、何かビビビッときたんですよね。もちろんすごく気の知れた方と音を出すことができるという唯一無二な楽しみもあるし、それをひとつ確立することも大事なんですけど、“世の中にミュージシャンがいっぱいいるんだからね”って話を聞いた時、本当にシンプルに“確かに!”って思いましたね。

前回のツアーでもバンドメンバーとしてもお馴染みの鶴谷 崇さんだけでなく、河野 圭さんもピアノを弾かれていましたよね。やっぱり人が違うと音楽も違いますか?

違いますね。違いますし、私はプレイヤーが変わると空気が変わるというような音楽が好きです。誰が弾いても一緒っていうよりは、“この人が弾くからこの空気感になったな”“この空気感になったから私の歌い方もちょっと違うな”とか、そういうのが好きですね。

ヤイコさんがライヴをやられるのはそういうところも関係しているんでしょうね。ツアーファイナルでも開催を予告されていた、プラネタリウムでのライヴツアー『LIVE in the DARK tour w/矢井田 瞳』が11月2日に東京、11月10日と11日に神戸で行なわれますが、こちらにもハーモニカの倉井さんが参加されます。観ていない人は絶対に観たほうがいいですよね。これは太字にしたいくらいです(笑)。

ぜひぜひ(笑)。プラネタリウムツアーということで、みなさんご存知のプラネタリウム展示会場の中に星が映っていて、その暗闇の空間の中で音楽をやるので、“これは夏樹くんありきでしょう!”って最初に思いました(笑)。
矢井田 瞳
配信シングル「アイノロイ」

OKMusic編集部

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