反田恭平、全公演ソールドアウトの全
国ツアー東京公演レポート オールシ
ョパンプログラムで挑む美しい音の世

2019年、反田恭平の新年は『反田恭平ピアノ・リサイタル全国ツアー2018-2019 Winter』から始まった。テレビやラジオ出演、CDの発売、テレビアニメ「ピアノの森」の演奏出演など、2018年の反田の目覚しい活躍ぶりを反映するかのごとく、2019年1月11日(金)の名古屋公演を皮切りに、2月2日(土)の札幌公演まで全国6公演全てチケットは早々に完売。2018年1月18日(金)に迎えた東京公演の東京オペラシティホールも満席であった。それもそのはず、今回のツアーはオールショパンプログラム。反田のショパンは全てのファンにとっても垂涎の的である。聴く度に常に進化していく反田の音を追いかけるように観客の期待値も上がる。
反田恭平 (リハーサルより)
反田恭平 (リハーサルより)

反田恭平 (リハーサルより)
プログラムは、「ノクターン第13番 ハ短調 作品48-1」から始まり、「ノクターン第14番 嬰へ短調 作品48-2」、「幻想曲 作品49」、「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22」
そして休憩を挟み、「マズルカ 第33番 ロ長調作品56-1」、「マズルカ 第34番 ハ長調作品56-2」、「マズルカ 第35番 ハ短調作品56-3」、「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58」の全8曲。

反田恭平 (リハーサルより)

反田恭平 (リハーサルより)

「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」は初期のショパンの名作と言われており、それ以外はショパン円熟期の傑作と言われる作品群の楽曲の構成である。ショパンらしい華やかな技巧や美しいコラール、感情の高まりを表現するアルペジオなど聴きどころが沢山あり、超絶技巧を魅せる曲というよりかは、難しい技巧を使って曲の本質・美しさを引き出していく、挑戦的なプログラムだと感じた。

反田恭平 (リハーサルより)
演奏が始まると、反田の魅力のひとつである力強くエモーショナルな打鍵にどんどん惹きこまれていき、ピアニシモから、ピアノ、フォルテ、フォルテシモのコントールの巧緻さに思わず感嘆の声がもれそうになる。反田の指から発されるピアニシモの繊細な音は、観客にショパンの感情の動きをフルに伝えてくれる要素のひとつだったのではないだろうか。
反田恭平 (リハーサルより)
特に、反田が弾く幻想曲の葬送曲のような重々しい曲調から、コラールを挟み光に導かれ天に昇るような感情の移り変わりに、一緒に感情が揺さぶられるような感覚になった。
反田恭平 (リハーサルより)

使用ピアノは車に例えるならフェラーリのような存在と言われるイタリアのファツィオリ。日本ではその音色を生で聴く機会はとても少ない。今回のコンサートでは、反田の個性とファツィオリの持つ個性が融合してこのコンサートでしか聴けない一夜限りのプレミアムな音が生まれた。
アンコールは、「24の前奏曲OP.28-24」、「ラルゴ変ホ長調」の2曲。ラストはコンサートの終演を惜しむようにしとやかで優美な音を凛と響かせた。
反田恭平 (リハーサルより)
反田恭平 (リハーサルより)
反田はこれまでもリストやベートーベン、ラフマニノフなどを難なく弾きこなし、万能なピアニストのイメージはあったが、今回のツアーでクラシックピアノに造詣が深いファンをも唸らせるオールショパンプログラムを自分のものにして、反田にいっそうの自信と貫禄が加わったように見える。しかし、まだ24歳の若さである。「クラシック界の異端児」と呼ばれたピアニストは持ち味の自由な表現力と大胆さを携えて、これからどのような進化を遂げていくのか楽しみである。
反田恭平
また、反田は、2019年2月20日(水)に新アルバム「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番/ピアノ・ソナタ第2番」のリリースを予定している。ラフマニノフの祖国ロシアは反田のかつての留学先でもあり、本場ロシアの音楽を知る反田のラフマニノフにも期待が高まる。
取材・文=田尻有賀里 撮影=山本 れお

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