松田聖子「ジャンル超えて楽しみたい
」ジャズに挑戦した意図とは

SEIKO MATSUDA名義で全米リリースするジャズアルバム「SEIKO JAZZ」

 歌手の松田聖子(SEIKO MATSUDA)が5月12日に、米名門ジャズレーベル「Verve Records」(ヴァーヴ・レコーズ)からジャズアルバム『SEIKO JAZZ』をリリースする。同レーベルからリリースする初めての日本人歌手となる。なぜ今、ジャズに取り組んだのだろうか。この挑戦に、彼女なりのジャズへの想いがあると言えるとともに、その意図を読み解くヒントに彼女が挙げた尊敬する人物の名にありそうだ。

名門ジャズレーベル

 このアルバムは松田が「SEIKO MATSUDA」名義で、ジャズのスタンダードナンバーをカバーした作品。構想に6年かけ、初めて挑戦したジャズアルバムだ。全10曲が収録されている。3月29日に日本で発売された本作は、iTunesジャズアルバムチャートで1位を獲得した。また、ジャケットは人気ジャズ漫画『BLUE GIANT SUPREME』の原作者・石塚真一氏が描き下ろした。

 本作のプロデューサーは音楽家の川島重行、アレンジャーには米ジャズバンド「マンハッタン・ジャズ・クインテット」のデビッド・マシューズ氏がそれぞれ起用されている。川島氏は、自身がプロデュースしたギル・エヴァンス・オーケストラの『Bud & Bird』で1989年、グラミー賞を獲得している(同年、坂本龍一氏は『The Last Emperor』で最優秀オリジナル映画音楽・アルバム賞を受賞した)。デビッド氏は、ギタリスト・ジョージ・ベンソンの「Good King Bad」などでグラミー賞を受賞している。2氏と松田は旧知の仲だったそうだ。

 松田は3月30日放送の『SONGS』(NHK総合)で、「私は今年でデビュー37年目になりますが、その中で素晴らしいジャズに触れる機会も沢山あって、いつの間にジャズに魅了されていたという気持ちです。いつか私も機会があったらジャズの歌を歌わせて頂きたいと思っていて、それが今回実現しました」と、この作品に至った経緯を説明している。

 つまり、自らがジャズを愛し、能動的にジャズに挑戦したという。番組中には、デビッド氏と英語で流暢に話す場面もあった。プロデュースをまかせるだけでなく、意思疎通をとって積極的に作品に取り組む松田の姿がそこにあった。時満ちてジャズに取り組んだ、ということともいえる。

ジャンルを超えて

 さらに同番組で、松田は尊敬する米女優で歌手のバーブラ・ストライサンドについても触れている。「本当に素晴らしい歌手。どんなジャンルの曲でもバーブラさんのものになっていて、女優さんをやられても素晴らしいですし、憧れです。私も彼女のようにジャンルを超えて、音楽を楽しんでいけたらいいなと思います」。

 松田が契約したヴァーヴ・レコーズは、1965年にノーマン・グランツ氏によって創設された、ジャズレーベルの名門。女性歌手では、20世紀の女性トップ・ジャズ・ボーカリストの一人と讃えられる、エラ・フィッツジェラルド、そして、女性ジャズ・ボーカリストの御三家の一人に数えられるビリー・ホリデイなどが在籍していた。

 現在はユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)の一部で、代表を務めるのは、ダニー・ベネット氏。彼が作品を絶賛した事から今回の全米リリースに繋がった。

 しかし、松田はこのレーベル内のアーティストについては言及せず、女優や歌手、作曲家としても活躍しているマルチタレント、バーブラの名前を挙げた。この事からわかるのは、彼女があくまでもエンターテインメント、またはポップスとしてのジャズや、自己表現を捉えているという事ではないだろうか。

 生粋のジャズシンガーがバーバラの名を挙げる点については聞き覚えがない。アイドルから出発して、ジャズにたどり着いた松田ならではだといえそうだ。これが聖子流のジャズなのだろう。「ジャズと自由は手をつないで行く」という米ジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクさんの名言があるが、色々な解釈が許されるのがジャズだ。

 なお、全米リリースに関して松田は「とても幸せに思うと共に、デビュー37年目にして、またあらたなスタートラインに立ち、背筋が伸びる思いです」と述べ、更に「私を、ここまで応援して支えてくださった皆様への感謝の気持を持って、これから先も、一歩一歩たくさん勉強をしながら頑張って進んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします」と研鑚を重ねていくとも語っている。(文・小池直也)

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