マンガ家が描く垂涎の食の世界！マン
ガ家さんの食べ物エッセイ5選

食に関する本はただでさえ食欲を掻き立てられるものだが、そこに美味しそうなイラストが加われば、まさに鬼に金棒。ヨーロッパの料理事情から、締切直前・修羅場中のご飯まで、読むだけでヨダレが止まらない、マンガ家が描く食の名エッセイをご紹介！　

イタリアに留学し、イタリア人の夫を持つヤマザキマリが、現地の食を描くコミックエッセイ。留学時代の極貧生活を乗り越えた激安コスパメニューから、クリスマスやお正月に食べられる家庭のお祝いメニューまで、様々な料理が簡単なレシピ付きで紹介されている。ポピュラーなティラミスやパニーノのほか、パンの冷製サラダ「パンツァネッラ」やアレンテージョ風豚肉など、現地ならではのレシピも試してみたくなるものばかり。料理だけでなく、ヨーロッパで手に入る食材で日本食を食べる涙ぐましい工夫や、姑との高級オリーブオイルをめぐる争い、舅の「チーズは女性と同じである」説など、異文化の食をめぐるストーリーも楽しい一冊だ。

秀良子といえば、何気ない日常や心の揺れを丁寧に描く作風に固定ファンが多いが、本作では不規則な生活に悩む自称「食生活底辺のマンガ家」秀良子が、あこがれの朝食を求めて”自腹で”素敵な朝食を食べに行くことに。「ビッグコミックスピリッツ」のWeb版「やわらかスピリッツ」で連載された旅グルメエッセイをまとめた一冊。パリのカフェや築地の食堂など、国内外を問わず様々な朝食を紹介してくれている。第一回目から朝食を食べるためだけにパリに自腹で行かされるという展開には驚かされるが、元々食に詳しいわけではない作者が美味しいものに出会い満たされる様子がほんわかと描かれていて、見ているこちらまで幸せを感じてしまう。

「西洋骨董洋菓子店」や「きのう何食べた？」　など、食にまつわる作品に定評があるよしながふみが、おすすめの店を紹介するコミックエッセイ。たんなる飲食店紹介にとどまらず、誰とどんなシチュエーションで食べるかを重視する作者らしいエピソードもコミカルに描かれている。一品一品を幸せそうに食べる作者と友人たちを見ていると、とたんにお腹が空いてくる。ふとした時にシリアスな面をのぞかせるよしなが節はエッセイでも健在で、同居人S原との友人以上パートナー未満の絶妙な関係や、作者の恋愛遍歴も織り交ぜられ、30代独身女性の物語としても秀逸な作品となっている。

とにかくパンが大好きという山本ありが、おいしいパンを求めて北欧まで行ってしまうというグルメ旅ならぬパン旅エッセイ。ライ麦が中心のフィンランドのパンとデンマークのデニッシュを求めて親友と二人で北欧旅行に出た作者が、移動中も街中でも観光地でも、食事からおやつ、夜食まで、とにかくパンを食べまくる！　さすがにパン好きの作者だけあってパンの描写がこまかく、見ているだけで美味しさが伝わってくる。観光地や風景もきちんと描かれていて、一緒に北欧を巡った気分になれる一冊だ。

「ゴルゴ13」のさいとう・たかをや、「ベルサイユのばら」の池田理代子、「超時空要塞マクロス」のキャラクターデザインをつとめた美樹本晴彦など、13名のまんが家を相手に、新人漫画家・奥原まむが実際に取材して書き上げた豪華な一冊。まんが家たちが修羅場にかきこむご飯メニューや、仕事の合間に作る料理レシピなどのほか、制作秘話や締め切り間際の修羅場エピソードなども紹介されており、それぞれのファンにも嬉しい内容になっている。白菜鍋「ピェンロー」やサバ缶の炊き込みご飯など、紹介されるレシピは簡単なものがほとんどなので、まんが家になった気分で試してみるのもいいだろう。

美味しそうなイラストが魅力のマンガ家エッセイだが、それぞれに視点がユニークで、飽きずに繰り返し読み返してしまうものばかり。美味しさを感じる本当の秘密は、マンガ家が日頃培っている細かな観察眼の賜物なのかもしれない。ぜひ手にとってお気に入りの一冊を見つけてみてほしい。ただし、空腹時やダイエット中の方はご注意を！