ゴロウ・デラックスと貧乏の話:枡野
浩一連載23

枡野浩一の「今夜も仲なおり」

第23回「ゴロウ・デラックスと貧乏の話

 私の短歌集『歌』(雷鳥社、写真=杉田協士)(
 )を、TBSの『ゴロウ・デラックス』(
)で紹介していただきました。東京では放映済みで(これから放映される地域もあります)、一晩でツイッターフォロワーが千人ほど増えました。
 テレビに出たら必ずフォロワーが増える、というわけでは全然ありません。いつもの私はテレビに出ると賛否両論が巻き起こるというか、悪口もたくさん言われてしまいがちなのですが、今回はほとんどまったく批判を目にしませんでした。ツイッターの感想を見るだけで、あの番組を率いている稲垣吾郎さんの魅力と、彼を支持している方々の人柄が伝わってきます。
 下半身の話ばかりが印象に残る番組構成で、芸人活動の話は放映されなかったのですが、「今までのテレビ出演で一番よかった」と言う旧友もいました。ありがとうございました。

 さて今回は、テレビに出ても貧乏は変わらないという話を駆け足でします。なぜ駆け足なのかというと本日は予定が詰まり過ぎていて時間がないからです。これだけ予定が詰まっていたら、もう少しお金持ちになってもよさそうなのに、そうはいかないのはなぜか。
 たとえば私はよく、妹に58万円借りている話をするのですが、その金額はもう何年も変わっていません。返済できていないからです。サラ金に借金があったりはしませんから、売れない芸人の中では比較的お金に困っていないほうなのだとは思いますが、吉祥寺に住んでいた時代(数年前です)の、武蔵野市の国民健康保険料をいまだに分割払いしています。小説が漫画化されて一年だけ年収が高かった年があり、その年の国民健康保険料が史上最高の額だったのですが、それが払い終わらない程度の収入をずっとキープしているのです。
 テレビに出ているのだからもっとお金があるはずと、武蔵野市役所に呼び出されたこともあるのですが、物書きとしてのテレビ出演料は「文化人枠」といって、ささやかなものなのです。テレビに出るくらいなら原稿を書いていたほうがお金になるから、テレビには出ません、という物書きは少なくありません。
 そもそもテレビに出ると、顔がどうの、服装がどうの、年齢がどうのと、顔も知らない大勢の方々に、あることないこと言われます。出版という、小さな規模でお金が動いている世界で成功している人にとっては、テレビに出ることがむしろマイナスに作用することが珍しくありません。「テレビに出ていたころは本が売れませんでした」と打ち明けてくれる物書きの人と時々会います。ものすごく大量にテレビに出ていたら話が別なのかもしれませんが、中途半端なテレビ露出はイメージダウンを招きがちだし、その物書きの本を読まなくても「なんとなく読んだような気持ち」になる視聴者が大多数であるらしく、「顔や名前は知られているけれど本は売れない」という皮肉な状況に陥ってしまうみたいです。
 かく言う私は、歌人としては名前が比較的知られていますが、とても狭い世界での知名度です。『ゴロウ・デラックス』だけでなく『アウト×デラックス』(フジ)にも出たことがあり、明石家さんまさんの番組『踊る!さんま御殿!!』(日テレ)で「踊る!ヒット賞」をいただいたこともあるし(プロの歌人になってから賞と名のつくものとは「踊る!ヒット賞」しか貰ってません)、あの『5時に夢中!』(MX)の代打MCを二年連続で担当したことまであるんですが、この程度の露出だと「有名貧乏文化人」の典型例になってしまうわけです。
 まあほかにも貧乏な理由は色々あるのですが、きょうはこのへんで。もう46歳なのだし、お笑い芸人としてこれから売れるよりも、もっと本を書いたほうがお金になるのではないかと皆様は思っているかもしれません。私もそう思います。でも芸人として売れたいのです。
 稲垣吾郎ファンの方が、書店に並んでいない私の短歌集を注文して買ってくださった旨をツイートしているのを見つけ、感涙にむせびました。が、こわがられてしまうので、その方のツイートに☆をつけたりすることはできず、そっと覗くだけにとどめました。深謝!!!

(今回の冒頭の写真は、昔出たテレビ番組の収録直前の私。黒板に書いた短歌は放映ではカットされました)

 あす土曜日の深夜は、しりあがり寿さんの会社が主催する「さるフェス2015」( 
 )に、トリオ「詩人歌人と植田マコト」として出ます。  詩人歌人と植田マコトの単独ライブ( 
 )は3/23(月)です。毎日のようにどこかのライブに出ていますので(
 )、タイミングが合うときお目にかかれると光栄です。

【短歌】
殺さずに生きてこられてよかったな だれかのことも 自分のことも (枡野浩一)
【枡野浩一:プロフィール】
ますの・こういち
歌人。2013年春、まさかの芸人宣言。2013年秋、詩人の本田まさゆきと、お笑い芸人コンビ「詩人歌人」を結成。2014年秋、事務所SMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)の先輩芸人・植田マコト(元「うえはまだ」ツッコミ)をむかえ、トリオ「詩人歌人と植田マコト」を結成。

【オススメ書籍】かんたん短歌の作り方(ちくま文庫)
枡野さんの、よくわかる短歌入門書。 絶賛発売中!

【オススメ書籍】ショートソング(集英社文庫)
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