ソロアイドル武藤彩未、激動の2014年
を締めくくる『OWARI WA HAJIMARI』

 2014年は4月のソロデビューから、TSUTAYA O-EASTでの派手なセットを従えたバースデーライブや6月のアコーステイックライブ、更には夏フェス・ROCK IN JAPAN FES 2014への出演など、彼女を取り巻く状況が一変した年であった。

 本公演は、この1年の集大成ともなるライブだ。この日は小柄な武藤のためにステージ中央には大きめのお立ち台が用意され、バックには沢山の傘が開いたまま吊るされている。「気持ちの上では全国ツアーをまわってきたかのように、仕上がっております!」というバンドメンバーからのアナウンスに観客から歓声があがる。

 ライブ本編は『A.Y.M』からスタート。レーザービームを派手に操り、妖艶に歌い踊る。ここは、本当にライブハウスなのだろうか? 赤坂ブリッツは筆者も何度となく足を運んできた会場であったが、ここまでの照明と演出のライブは初めてだ。生バンドと特効を味方につけた圧倒的なパフォーマンス。バンドの音圧に、武藤の歌も負けていない。それどころか、後押しされるように魅力をグンと増している。

 2曲目は「今日は最初から飛ばしていきたいと思います!」といきなり衣装を早着替えして『Seventeen』へ繋ぐ。先程まで纏っていた空気とは全く違う、可愛らしいポップなアイドルソングを、弾ける笑顔で披露する。一体、彼女はいくつの顔をみせてくれるのだろう? とこちらも序盤からワクワクが止まらない。

「今日は1年間のいいとこ取りライブですから! 生演奏、凄くない? 皆さんも声出して、身体動かして、遠慮無しでいきましょう!」と観客に優しく微笑みかけると「3曲目なんですけど、もう新曲いって良いですか?」と、今年8月に渋谷クアトロでの単独公演でデモヴァージョンを披露していた『Doki Doki』の完全版を歌いだす。

 ループ感のあるロックだが、どこかレトロな空気も残しており、1度聴いただけで口ずさめてしまうようなキャッチーさだ。『桜 ロマンス』はキーボードの旋律が美しく儚いミドルバラード。『宙』ではミラーボールがキラキラと周り、その通り武藤が銀河を操っているようだ。ステージ上の立ち位置は変えないまま、その小さい身体を全力で伸ばしながら透明感のある澄んだ歌声で会場を包み込む。『とうめいしょうじょ』ではその振り付けも相まって、会場にいる一人一人の心をステージに手繰り寄せているようにも見えた。 ライブ前の囲み取材で「小さい身体で、それを感じさせないパフォーマンスをしたいと思います」 と話していた彼女。その気迫は二階席にまで充分に伝わってきた。後ろまで、彼女の心は真っすぐに届いている。

 セットに組み込まれていた傘に、万華鏡のようなプロジェクション・マッピングが映し出されると、新曲『ミラクリエイション』へ。エレクトリカルパレードを彷彿とさせるようなイントロが印象的で、ここから何が始まるのかワクワクしていると、虹色に広がるドレスに着替えた武藤が登場する。nishi-kenによるキラキラしたアレンジの中に、どこか切なさが残るナンバー。Perfumeの振り付けでも知られる、MIKIKO監修のダンスも可愛らしい。 明けのMCでは「学校も授業が全部終わって、ちょっとヤンキーになりました!」と笑いながら当日のヘアスタイルを紹介。明るめミルキーカラーのショートボブはウィッグだとのことで、アクセサリーのように新しい自分を見せて行きたいという想いから着用したという。このパートでは高校生活最後のテスト結果も発表。公民81点、国語表現85点、歴史87点、英語88点、家庭科91点、ライティング92点……という優等生っぷりを観客に知らしめた。客席からの拍手にご機嫌の武藤は「このテンションで、もう1曲新曲行っても良いですか?」と『パラレルワールド』を披露。高揚感と、洋楽ポップっぽさもあるナンバーだ。

「この曲達、これから皆さんと一緒に育てて行きたいと思います!」と笑った後は、定番ナンバー『RUN RUN RUN』『交信曲第1番変ロ長調』『彩りの夏』を続けて披露し、会場を一体化させた。「今年1番のライブになったんじゃない?」と自信たっぷりの笑顔を見せてくれた後は、「デビュー時に思ったソロで一番を目指すっていうのは、もっともっと強くなっています。2015年は、もっともっと私の歌を沢山の方に聴いてもらいたいと思います!」とソロアイドルとしての決意を表明。ラストは『明日の風』で締めくくった。

 アンコールではライブTをリメイクした衣装で現れた。「年末なので、特別なお知らせ持ってきました!」と、来年2015年2月25日に2ndアルバム『I-POP』をリリースすることが告知された。「"愛"されるように」、「I am POP」、「Identity」、「IDOL」……とタイトルのIに込められた想いが語られると、更なる重大発表が続く。 4月29日、19歳の誕生日当日に東京 渋谷公会堂にてバースデーライブ『BIRTH』を実施することが彼女の口から告げられると、会場からは大きな拍手があがる。10代最後の記念すべき日に沢山の人へ歌を届けたい、という想いを抱き、自身最大規模となるホール公演に挑む。チケットは19歳価格ということでなんと1900円だ。(太っ腹!)

「このままだと正直、埋まるかどうかわかりません。笑い事じゃないです。今から5ヶ月間、私も頑張ります! 新曲、もう1曲いっちゃっていいですか?」と、『OWARI HA HAJIMARI』を披露。今回サポートとして初参加のSHINJI OHMURAのギターが唸る、ロックなナンバーだ。『永遠と瞬間』『女神のサジェスチョン』を歌い切ると、「みなさん、良いお年を!」と、生声でファンに呼びかけて消えて行った。

 アンコール後も「A.Y.M」コールは鳴り止まない。するともう一度バンドメンバーも登場し、「やっぱり、今日覚えて帰って欲しいのでもう1度やります!」と『OWARI WA HAJIMARI』をパフォーマンス。興奮したnishi-kenがキーボードを倒してしまうというハプニングが発生する程のパワフルなステージで2014年の武藤彩未を締めくくった。

「また皆さんに会える日を楽しみにしています! それまで、私ももっともっと自分磨きを頑張って行きます!」とステージを去って行く彼女の瞳に、迷いは無かった。

「私、アイドルですから!」。ソロアイドルとして頂点を目指し、10代のうちに武道館に立つという大きな夢を背負う彼女はこの日のMCで言い切った。さまざまなテイストの楽曲を歌いこなす姿は、何通りもの役を演じ分ける女優にも見える。来年、また1つ年を重ねる彼女が見せてくれる顔が楽しみだ。



セットリスト
1 A.Y.M
2 Seventeen
3 Doki Doki
4 桜 ロマンス
5 宙
6 とうめいしょうじょ
7 ミラクリエイション
8 パラレルワールド
9 RUN RUN RUN
10 交信曲第1番変ロ長調
11 彩りの夏
12 明日の風

アンコール
1 OWARI WA HAJIMARI
2 永遠と瞬間
3 女神のサジェスチョン
ダブルアンコール
1  OWARI WA HAJIMARI



achico 寝ても覚めてもアイドルポップ!なOL / フリーライター。東京生まれH!P POP育ち。日々、アイドルに踊らされています。

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