サカリ・オラモが東響定期に初登場。
「鳥」でつながる大自然の調べ
優秀な指揮者を数多く輩出していることで知られるフィンランドを代表するマエストロの一人。サイモン・ラトルの後継者としてバーミンガム市響の音楽監督を務め、フィンランド放送交響楽団、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を歴任、現在はBBC交響楽団の首席指揮者を務めている。
オラモは、シベリウスやニールセン、マーラー、エルガーなどを主要レパートリーにしつつ、あまり演奏されないものの、魅力にあふれた作品を積極的に取り上げてきた。なかでも、ヨーナス・コッコネンやマグヌス・リンドベルイなどの北欧の作品。とくに、ルーズ・ランゴーの交響曲をベルリン・フィル、ペア・ノアゴーの交響曲をウィーン・フィルと録音、その水際立った演奏により、作品のすばらしさを広めた功績は大きい。
また、グラジナ・バツェヴィチ、エセル・スマイスなどの女性作曲家の管弦楽曲も精力的にレコーディングしている。2018年にロイヤル・ストックホルム・フィルを率いて来日したときは、スウェーデン人女性作曲家ヘレーナ・ムンクテルの「砕ける波」をプログラムに載せていた。
今回のプログラムにも、そんなオラモの持ち味が存分に生かされている。
アヌ・コムシは、この歌曲の初演者でもあった。彼女は、文学や哲学からインスピレーションを得た作品によるリサイタルを開いてきた。この曲もその一つとして、コムシが作曲家に提案することで生まれたという(最初はソプラノとピアノによる歌曲として書かれたが、アンドレアス・ネルソンスとゲヴァントハウス管弦楽団およびボストン交響楽団の委嘱によってオーケストラ版も作られた)。ここでサーリアホが目指したのは、声をオーケストラのなかに引き入れ、溶け込ませること。まさにコムシの表現力があってこその音楽なのだ。
その歌詞はフィンランドの英雄叙事詩「カレワラ」の冒頭による。創世記的な内容をもち、鳥(カモメ)が重要な役割を果たしている。つまり、これまでの3曲からは、鳥を介して、自然と人間との関わりという共通のテーマも浮かび上がってくるわけだ。じつに練り上げられたプログラムではないか。
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