「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シ
ネマシーズン2023/24」バレエのオー
プニングを飾る『ドン・キホーテ』は
情熱的溢れるラブコメディ

英国はロンドンのコヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)で上演された、ロイヤル・オペラ、ロイヤル・バレエ団による世界最高峰のオペラとバレエを、特別映像を交えてスクリーンで体験できる人気シリーズ「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」。ライブでの観劇の魅力とは一味違う、映画館の大スクリーンと迫力ある音響で、日本にいながらにして最高峰のオペラとバレエの公演を堪能できる、至福のひとときが味わえる。今シーズンは「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24」として、全8作品<バレエ4作品/オペラ4作品>が届けられる。
そのバレエのオープニングを飾るのが、バレエ初心者でも楽しめる、生き生きとした情熱に溢れるラブコメディ、ロイヤル・バレエの『ドン・キホーテ』だ。チャールズ英国王夫妻が臨席したことも大きな話題となった本作の見どころを、舞踏評論家・森菜穂美氏の解説とともに紹介しよう。
【動画】The Royal Ballet: Don Quixote cinema trailer

『ドン・キホーテ』はあらゆるクラシック・バレエ作品の中でも最も明るく楽しいラブコメディで、華やかな超絶技巧もふんだんに盛り込み、スペインの生き生きと情熱的なパワーにあふれている。バレエ初心者でも、そのパワフルさと華麗な魅力に思わず引き込まれてしまう傑作だ。
バルセロナの街角を舞台にした本作は、『白鳥の湖』他で知られる巨匠マリウス・プティパが20代の頃、マドリッド王立劇場と契約し、スペインで過ごして闘牛やキャラクターダンスに夢中になった体験が生かされている。街の踊り子、闘牛士、ファンダンゴ、ロマの踊りなど多彩なキャラクターやエキゾチックな踊りが、作品に生き生きとした魅力的な味わいを加えている。
Matthew Ball as Basilio in Don Quixote (c)2019 ROH. Photographed by Andrej Uspenski
なお、今回上映される本作は元プリンシパルで世界的なスターのカルロス・アコスタ(現バーミンガム・ロイヤル・バレエ芸術監督)が2013年に振付けを担当している。劇中では登場人物たちが台詞を叫ぶ場面や、ダンサーたちが床の上だけでなく、テーブルやワゴンの上でも踊るといった演出も取り入れられた。彼の振付について森氏は「彼にとって重要なのは登場人物たちの個性であり、バレエのステロタイプに囚われず一人一人が生身の血の通った人間として描かれている」と説明している。
Mayara Magri as Kitri in Don Quixote (c)2019 ROH. Photographed by Andrej Uspenski
ヒロインの町娘キトリを演じるのは、2011年にローザンヌ国際バレエコンクールで優勝したマヤラ・マグリ。ブラジル出身ならではの天性の明るさと安定した技巧がこの役にぴったり。森氏は「夢の場面での、一転してエレガントで軽やかなドルシネア姫との演じ分けにもぜひ注目していただきたい」と注目ポイントについてコメントしている。

Mayara Magri as Kitri in Don Quixote (c)2019 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

キトリの恋人、床屋のバジル役を演じたのは、人気の高い英国出身のマシュー・ボール。端正な容姿で、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』では男性の白鳥を演じるなど様々な舞台にチャレンジしてきた。ボールは、私生活ではマグリとカップルで、二人の息はぴったり。コミカルな掛け合いが自然で、片手リフトなどのパートナーリングも見事に決まり、最後のグラン・パ・ド・ドゥではダイナミックな跳躍を見せている。

Matthew Ball as Basilio in Don Quixote (c)2019 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

また人気上昇中の若手ファースト・ソリストのカルヴィン・リチャードソン(闘牛士エスパーダ役)をはじめとする、伸び盛りの若手ダンサーを発見できるのも、シネマシーズンならではのお楽しみのひとつ。そしてこれら若手ダンサーの活躍と共に、作品を引き締めるのは、タイトルロールのドン・キホーテ役を演じるバレエ団を代表する名役者ギャリー・エイヴィス。森氏は「エイヴィスの気品あふれる演技によって、高潔な人格を持つロマンティックな老紳士としてのキホーテのキャラクターが立ち上ってきます」と舞台上で強烈な存在感を放つエイヴィスの演技に賞賛を送っている。
Gary Avis as Don Quixote (c) ROH 2023 Photographed by Andrej Uspenski
今回のシネマで上映された公演には、英国王チャールズ3世とカミラ王妃も臨席し、彼らが客席から拍手で迎えられる場面もおさめられている。尚、シネマシーズンで中継された公演に英国王が臨席するのは初めて。
Mayara Magri as Kitri in Don Quixote (c)2019 ROH. Photographed by Andrej Uspenski
※森奈穂美氏(舞踏評論家)による『ドン・キホーテ』解説全文は下記URLにて閲覧可能です。

アーティスト

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着