CHiCO

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【CHiCO インタビュー】
名刺代わりになる作品をと考えた時、
真っ先に“ポートレート”と浮かんだ

全曲粒立って聴かせたいから
曲順はかなり迷った

1から10を察してくださる方なんでしょうね。そんなCHiCOさん自身のパーソナリティーにど直球に迫った2曲に対し、熊谷和海さんが作られた「イバラヒメ」は変化球すぎて衝撃でした。

私も熊谷さんの世界観の引き出しの広さに驚きました! 以前、BURNOUT SYNDROMESさんのアルバム『TOKYO』でコラボさせてもらった時は、男女の失恋を描いたバラード楽曲だったので、今回はバンドサウンド系を予想していたんです。そうしたら““CHiCOがアイドルだったら”という世界観で書きました”と最初に文章でいただいたので、“可愛い楽曲なのかな?”と思ってデータを開いたら、こんなダークファンタジーな楽曲で! 私の中ではアイドルというより、中世ヨーロッパ系のステージで歌う歌姫というイメージでした。後日、SNSでEP発売決定のポストを引用して“CHiCOは空間を支配するような魅力的な歌声を持っている”とも言ってくださっていたので、そういったところでイバラヒメの世界観と重ねてくださっているのがすごく嬉しかったです。

もともとアイドルって“偶像”という意味ですから、そこをフィーチャーした内容になっていますよね。望んで飛び込んだ“薔薇色の世界”だけれど、誰も本当の自分を見てくれず、周りの期待に応えることを永遠にやめられない…という。

歌詞に出てくる《最前列の少女》に、たぶん自分の過去を照らし合わせているんですよね。いろんな解釈ができる歌詞なので、私も早く熊谷さんに詳しいストーリーを訊きたいんですけど(笑)、歴代のスターたちも操られている前提で書いているあたり、行くところまでメンタルが行っちゃっているんです。いっそのこと殺してほしいのに終わらせてくれる人もいなくて、そもそも願ったのは自分だし…っていう無限ループな感じをどうやって歌おうかと悩みました。熊谷さんからは、声を張らずに、歌い上げないでほしいとか、高いところは裏声でやってほしいというディレクションもあって。私はいままでこういう楽曲で声を張らないことってなかったんです。なので、サビの最後のロングトーンとかも、自分の中で耐えながら歌うのが結構難しかったです。

いや、この曲はヴォーカルがとてもテクニカルで、きっと大変だったんだろうなと。

大変でした! 歌い方としては海外のアーティストさんの張らない感じで、それプラス、参考楽曲としてオペラ『魔笛』の「夜の女王のアリア」をいただいたんです。サビの《キミはキミのままで》の最後のところは、それを意識して歌っています、今からライヴが心配ですね(苦笑)。

そのぶん、観るほうは楽しみです(笑)。そんな“CHiCO”を感じさせる曲の中に「駅」みたいな切ないラヴソングがあると、“もしや実体験!?”と訊きたくなってしまうのですが。

違います(笑)。この楽曲は諌山さんにお願いをするタイミングで、本来なら楽曲の方向性などを伝えなければいけないところ、ただただオタクのファンレターを送ってしまったんです。“子供の頃から「月のワルツ」が大好きで、諌山さんの歌声は本当にリスペクトしていて大好きです! お忙しいとは思いますが、よろしくお願いします!”って(笑)。そこで「月のワルツ」の他に好きな曲として挙げていた楽曲がバラードだったのと、「月のワルツ」もテンポの速い楽曲ではなかったので、意図を汲んでくださって。さらにいろんな味が足されて壮大なバラードになりました。

では、歌詞のほうでも特にリクエストはせず?

そうですね。私は諌山さんが大好きだから、歌詞も諌山さんの世界観をそのまま書いてほしかったですし、“それを私が歌いたい!”っていう気持ちが強かったんです。そうしたら、本音が言えないふたりをモチーフにした歌詞が届いてすごく共感しました。寂しいと素直に言えない彼女と、距離を縮めるためのあと一歩が言えない自分っていう、もう“その距離感、分かる! 好きだ!”って(笑)。“自分が伝えることでマイナスな方向に向いてしまったらどうしよう?”と悪いほうに考えがちなタイプだから、やっぱり本音を言うのを躊躇してしまうんです。だから、言いたいんだけど言えないっていう、この距離感がすごく素敵だと思って、レコーディングでも静かにしゃべるような感じで歌いました。最初は諌山さんの歌い方に寄っていたんですけど、ここは世界観にマッチする歌い方を優先させたかったんです。

きっと諌山さんはCHiCOさんのメッセージから本当に自分の音楽を愛してくれていることを察して、変に寄せずに心のままに作ればいいと気づいてくださったんでしょうね。そもそもCHiCOさんの感性に響くものを作っていたから、諌山さんに惹かれたわけで、諌山さんが素直に書かれた曲に共感するのも当然の結果ですし、例えばライヴでは一緒に歌いたいとか?

(食い気味に)いや、そんな! 恐れ多すぎます!!

答えが早い(笑)。そして、最後の「Prelude Romance」はブラスの音色がハッピーに響く華やかな楽曲で、本作では唯一となるCHiCOさんの作詞楽曲です。

ただ、私の中で一回方向性が変わって、歌詞を書くのにすごく時間をいただいてしまいました。最初は“相手の気持ちなんて分かんないよね”みたいな方向性だったんですけど、作曲作業が進んで楽器の音が足されていくにつれて、めちゃくちゃ豪華で煌びやかな曲に変身した時に“もっと濃く書かなきゃ歌詞の世界観が掻き消される!”と思ったんです。むしろ、シンデレラが踊るような舞踏会の煌びやかさが合うと感じて、“じゃあ、シンデレラをモチーフにしたような恋愛の曲を書きたいな。でも、恋愛の引き出しがめちゃくちゃ少ないな、自分…”となって『シンデレラ』の映画を3作観ました!

それで“時計”や“Let‘s Dance!”といった歌詞が入っているんですね。

そういったシンデレラっぽいワードも入れつつ、私が憧れる恋愛のスタイルというか。ずっと受け身だった女の子がひと目惚れをして、これが本当に恋なのか、人を愛するという感情につながるのかを確かめようと自分から動いていく、そんな曲を書こうと決めたんです。それで、いつもお世話になっている作詞家の真崎エリカさんにご相談したところ“自分が変わる瞬間や受け身じゃないということを示せるワードがあったら、きれいにまとまるよ”とアドバイスをもらって、2番のサビ前に《待つだけじゃない 私に変わる》と入れたんです。『シンデレラ』の中に“放っておいてロマンスが生まれるものか”という王様の台詞があって、“確かに! 王様、カッコ良い!!”と思ったんです。そこから思いついたフレーズを入れたらうまくハマったので、自分の人生を豊かにするためにも変わらなきゃっていう歌詞になりました。いろんな意味合いでみんなの背中を押せたらいいなと思っています。

おかげで《ハッピーエンドは自分で掴まなくちゃ》というサビの歌詞にも説得力が出ますよね。直前の4曲目が「たがため」なので、そこで《誰のための わたしなんだろう》と呟いていた子が、ここで一気に変わって自分から動き出していく爽快感もありますし、繰り返しになりますが、これだけ色の違う5曲がよくぞ一枚に集まったなと。

曲順はかなり迷いました。全曲粒立って聴かせたいから、落ち着いた曲調の「駅」と「たがため」が消えない構成って何だろうと、チームのみんなで曲順を出し合い、マスタリングの時に何回か組み替えて聴いた結果、満足した曲順を見つけられて良かったです。

さて、本作を引っ提げて、2月には大阪と横浜でZeppワンマン『LAWSON presents CHiCO 1st Zepp Live 2024 “PORTRAiT”』も開催されますが、どんなライヴにしたいと考えていますか?

CHiCOのソロ楽曲をどう届けるかだったり、ステージのパフォーマンスの仕方は悩みどころですね。CHiCO with HoneyWorksではチコハニバンドが一緒にステージを盛り上げてくれていたけれど、ソロだとステージに立って動くのは私がメインになるので、それが寂しいとも思いつつ、できることが増える可能性もあるので、どちらかというと期待のほうが大きいです。特にKT Zepp Yokohamaは初めて立つ会場なので、どんな雰囲気なのか楽しみです。あっ! でも、楽屋が寂しいかも(笑)。チコハニ(CHiCO with HoneyWorksの略称)の時はバンドの楽屋にお邪魔して、一緒にごはんを食べたりしていたんです。人見知りだからソロではまだできないかも(苦笑)。本当にまだ第一歩なので、いろいろと自分のやりたいことをたくさん実現できたらいいなと思っています。

取材:清水素子

EP『PORTRAiT』2024年2月7日発売 MusicRay’n
    • 【完全生産限定盤】(CD+グッズ)
    • SMCL-863~4
    • ¥3,300(税込)
    • グッズ:オリジナルウォッシュタオル
    • 【通常盤】(CD)
    • SMCL-865
    • ¥2,200(税込)

ライヴ情報

『LAWSON presents CHiCO1st ZeppLive 2024 “PORTRAiT”』
2/18(日) 大阪・Zepp Osaka Bayside
開場:17:00 開演:18:00
2/23(金・祝) 神奈川・KT Zepp Yokohama
開場:17:00 開演:18:00

CHiCO プロフィール

チコ:大人気クリエイターチーム・HoneyWorksとのコラボユニット・CHiCO with HoneyWorksとして「世界は恋に落ちている」で2014年にメジャーデビュー。『アオハライド』『まじっく快斗1412』『銀魂』シリーズ、『ハイキュー!! TO THE TOP』『BORUTO-ボルト-NARUTO NEXT GENERATIONS』など数々の大人気アニメの主題歌を担当。全国の10代から20代女性を中心に絶大な支持を受けている。23年4月8日のZeppツアーファイナルをもって、CHiCO with HoneyWorksの一時活動休止を発表した。同年、7月にリリースした1stデジタルシングル「光のありか」をもってソロ活動を始動し、2ndデジタルシングル「TRUE BLUE SKY」を続けてリリースした。11月には待望のCDシングル「エース」を発表。24年1月に1st EP『PORTRAiT』を発売後、2月にソロ初となるZeppツアー『LAWSON presents CHiCO 1st Zepp Live 2024 “PORTRAiT”』を開催する。今まではライヴでしか見られなかったビジュアルも公開し、新たな表現にも挑戦中。等身大の想いや気持ちを歌うシンガーとして活躍している。CHiCO オフィシャルHP

OKMusic編集部

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