望海風斗インタビュー~宝塚歌劇団退
団後初コンサート『SPERO』をCSホー
ムドラマチャンネルで放送

元宝塚歌劇団雪組トップスターとして人気を博し、現在も数々の舞台作品で話題を集め、本年(2023年)は菊田一夫演劇賞や読売演劇大賞優秀女優賞も受賞した望海風斗。その彼女が宝塚歌劇団退団後の2021年に初めて開催した「望海風斗コンサート『SPERO』」がホームドラマチャンネルで放送される。男役のイメージから新たな一面をのぞかせ、ファンの間でも今なお語り継がれるこの公演の裏側、そして当時の思い出を御本人に振り返ってもらった。
望海風斗セレクション 30秒放送予告

私とファンの皆さんが一緒に未来に向かって進んでいくような、“新たな一歩”を表現できたコンサートでした
ーー 2021年に開催された「望海風斗コンサート『SPERO』」をあらためて振り返っていただくと、ご自身にとってどのようなコンサートだったと感じていますか?
やはり“はじめの一歩”という印象が強いですね。宝塚歌劇団を退団して最初のコンサートでしたから、“私に何ができるのか?”ということを模索しつつ、その結果として、いろんな扉を開くきっかけになった公演だったように感じます。
ーー 構成・演出・振付は旧知の仲である川崎悦子さんでした。当時はコンサートに向けて、どのようなお話をされたのでしょう?
悦子先生が作る世界観は少し大人な趣きがあり、それが私自身にはまったらいいなというお話をさせていただいたのを覚えています。また、そもそもの経緯として、仮に初めてお仕事をさせていただく演出家さんとステージを作るとなると、全く違う自分になってしまうのではないかという懸念もありまして。ですから、宝塚歌劇団のことをよくご存知で、かつ、反対に外の世界を知らない私に厳しく(笑)、いろいろと教えてくださる悦子先生にお願いするのが一番なのではと思ったんです。
ーー 当時は女性の曲を歌う望海さんの姿を見られるのは貴重でしたし、お客さんの期待値も高かったと思います。
そうなんです。言い換えると、私にとっても、ファンの皆さんにとっても、ある意味で未知の世界でした(笑)。でも、それこそがこのコンサートのテーマでもあったんです。タイトルにもなっている「SPERO」はイタリア語で“希望”を表す言葉ですし、私が新たな一歩を踏み出し、それをご覧になる皆さんも私と一緒に未来に向かって進んでいきたいと思ってもらえるようなものにしたいなって思っていたんです。
ーー コンサートの構成も《Cinema》、《Jazz》、《Musical》、《Japan》(※J-POP)と4つのテーマで魅せていく演出がとても素敵でした。
ありがとうございます。これも、“いろいろな面を見せていきたい”というアイデアから生まれたものでした。
ーー また、楽曲に合わせて、男役の俳優が出番を終えて一人の女性と変わっていくというストーリー仕立ての展開もドラマチックでした。
まずは宝塚時代を彷彿とさせる私を見せ、そこから徐々に違う面を表現していくような物語を感じていただきたいなと思ったんです。ですから、衣装も最初は皆さんが見慣れた服装にし、ちょっとずつ変化を出していくようにしました。ただ、このコンサートではまだスカートを履いていないんですよね。無理しているように思われちゃうかなという懸念もあり(苦笑)、多少は露出の多い衣装ではあるものの、自分にとっても違和感のないデザインの服を用意していただきました。楽しくもあり、大変だったのはお芝居のほうです。どうしても全部が男役っぽい動きになってしまって(笑)。ただ、そこは徹底的に悦子先生に演技指導をしていただき、そのおかげで、コンサートを作っているはずが結果的にお芝居も成長させることができましたね。
ーー では、セットリストのこだわりについてもお聞かせいただけますか?
今お話しした経緯もあり、最初の《Cinema》のコーナーでは男役時代の曲も入れるようにしました。退団したからといって封印するのも違うなと思いましたし、何より私自身が男役時代の曲が大好きなんです。とはいえ、やはり“新たな一歩”がコンサートのテーマとしてあり、今までとは違う私の一面もお見せしたかったので、その点では選曲のバランスをすごく考えていきましたね。
ーー 確かに序盤は懐かしさなどがありつつも、後半には新しさを見せていくという流れになっていますね。
《Musical》のコーナーは特にそうですね。例えば、「そばにいて」は以前、『タカラヅカ プレイズ ディズニー』というカバーアルバムで歌わせていただいた曲なので、お客様にとっても馴染みのある歌なんです。ただ、当時は男役として歌ったので、それを今の自分が表現したらどうなるんだろうという思いがありました。それ以外は私にとってチャレンジであり、夢をえた曲ばかりですね。『ジキル&ハイド』の「あんな人が」や、『ドリームガールズ』の表題曲、それに『モーツァルト!』の「星から降る金」はいつか歌ってみたいとずっと思っていたんです。
ーー 一方、《Japan》のコーナーで披露したJ-POPの曲ではいろんな側面が見られて新鮮でした。なかでも「LA・LA・LA LOVE SONG」は女性ボーカルで聞くことで、よりラブソングとしてのテーマ性が強く表現されていたように感じました。
そう言っていただけると嬉しいです。最初はどうしても歌声が男性っぽく聞こえてしまっていたので、悦子先生にたくさんご指導いただきました(笑)。また、「月光」は歌だけでなく、G-Rocketsさんによるエアリアルのパフォーマンスも入っていたりと、楽曲の世界観を視覚的にも表現できたのですごくお気に入りの演出になっていますね。「始まりのバラード」は、実は存じ上げない曲だったんです。でも、とっても素敵で、初めてのコンサートで歌う曲としてピッタリだなと思い、本編の最後に披露させていただきました。
ーー そしてアンコールでは「SUPER VOYAGER!-希望の海へ-」と新曲の「SPERO」を披露!
私自身、やはり宝塚歌劇団のショーが大好きでしたので、最後にショーを感じさせる「SUPER VOYAGER!」で皆さんと一緒に盛り上がりたかったんです。また、「SUPER VOYAGER!」のタイトルにある《希望》や《航海》になぞらえ、新たな希望に満ちた冒険を表現した曲として、最後に「SPERO」をお届けしました。
ーー 『SPERO』の制作に関してはどのようなリクエストをされたのでしょう?
“希望”であったり、“前に向かって進んでいく”というキーワードだけをお伝えし、あとはお任せでした。作曲の長谷川雅大先生は宝塚時代から大変お世話になっている方で、退団前に開催したコンサート『NOW! ZOOM ME!!』でも曲を作っていただいていたんです。そのときは男役として作曲してくださっていたこともあり、今回の『SPERO』を聞いたときはまるで異なる世界観に驚きつつ、なんて優しさのある曲なんだろうと感動しました。ファンの方に向けたメッセージも込められていますし、この曲を歌うことで私も皆さんと一緒に前に進んでいけると強く思える。本当に素敵な曲をご提供くださり、感謝の気持ちでいっぱいです。
ーー こうしてアンコールも含めて全体を振り返ると、当時の望海さんのすべてが詰まったコンサートだったなと感じます。
私もそう思います。きっとファンの方も最初は、“どんなコンサートになるんだろう?”と予想できなかったと思うんです。でも、公演を終えたあとにいただいたお手紙などを拝読すると、“これからもついていきたいと思いました”という感想がとても多くて。こちらの想いが伝わっていたんだなと嬉しく思いました。また、この公演にはゲストとして素晴らしいお三方が出てくださり(※ラミン・カリムルー/2021年8月9日〜11日、井上芳雄/10月2・3日、海宝直人/10月4・5日に出演)、今思えば本当に恐ろしいほど怖いもの知らずだったなと感じるほどなんですが(笑)、でもそのゲストをきっかけに私のコンサートを観にきてくださった方もいらっしゃったようで。その意味では、多くの新たな出会いや素敵な関係が作れたステージだったなと感じますね。そして、何よりコンサートを無事に成功させられたのはミュージシャンやスペシャルダンサーの皆さんのお力があってのこと。皆さんのパフォーマンスは映像で見るとより細かく堪能することができますので、ぜひこの放送で卓越した技術を楽しんでいただければと思います。
取材・文:倉田モトキ
撮影:宮田浩史
【プロフィール】望海風斗 Futo Nozomi:神奈川県出身。女優・歌手。宝塚歌劇団入団後、2003年に月組公演『花の宝塚風土記/シニョール ドン・ファン』で初舞台を踏む。2017年、雪組トップスターに就任。2021年の退団後は舞台を中心に幅広く活躍。主な出演作に『ガイズ&ドールズ』『DREAMGIRLS』『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』など。2024年には『イザボー』、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』(再演)の出演が控えている。

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