【鈴木このみ インタビュー】
11年目以降を
考えた作品になったと思っている
“やればできるよ! 頑張れ!”
みたいな感じにはしたくなかった
サウンド面に話を移すと、バンドサウンドにストリングスが加わっているのでかなり厚みがある印象です。
“贅沢だなぁ”って(笑)。バンドだけでも成り立つサウンド感ではあると思うんですけど、ストリングスが加わることで、より感動できるようになったんじゃないかと思います。
ストリングスもいいんですけど、おっしゃられたとおり、バンドサウンドがめちゃくちゃいいですね。特にベースと鍵盤。ベースはとにかく動き回っているし、間奏での跳ねた感じの鍵盤はとてもいいです。
確かに。インストで聴いてもめっちゃ気持ち良い音楽だと思います。
バンドサウンドがより強固になってるのは、本当によく分かります。それでいてストリングスも重ねていますから、確かに贅沢な作りなんですよね。
そうですね。でも、歌の音域もしっかり残してくれていて、歌が真ん中にいて、バンドがサポーターじゃないですけど、それをより強固にしてくれている感じが自分はしました。そういう意味でも、リッチな感じになっていると思いますね。『ブルバスター』のちょっと実写っぽいところが音楽にも入っているような気がします。アニソンだけど、少しJ-POPっぽい流れもあるような、『ブルバスター』に本当にぴったりのサウンド感だと個人的には思っています。
あと、ちょっと補足になりますけど、「頑張れと叫ぶたび」は力強いことは間違いないんですが、冷静な感じもあるとは個人的に思うんですよね。それは主に歌詞によるところかなとは思いますが。
やっぱりそれは自分じゃない人のことを歌っているところがそうさせている気がしますね。
先ほどおっしゃった“頑張れと応援する側の人の歌”というところですね。
はい。やっぱり私もアツくなりがちで(笑)、作詞は1週間毎に締め切りがあったんですけど、第1稿、第2稿ではちょっと自分の影を感じるみたいなことを言われていて、“あぁ、なるほど”と思って、“頑張れ!”って言うことで自分自身も力をもらっているということを伝える方向に変わっていったんですけど、もしかしたらそれが冷静さにつながっているのかもしれないです。
“無謀な前向きさではない”という言い方でいいのか分かりませんけどが、歌詞にはそういうところが随所にあります。《どれだけの汗を流しても信じていられない》《「どこまでいけばいいんだ」》《身勝手に膨らむ期待も》などがそうだと思いますが、これらからは““頑張れ!”って言うのは簡単だけど、言われる側としては…”みたいな感じがありますよね。
そうですね。自分も“頑張れ!”っていう言葉を使うべきか悩みました。“だって、もう頑張ってるのに…”と思ったりする日もあると思うので。頑張っていない人っていないと思うんですよ。頑張っていないように見えても頑張ろうとしているってことは、結局頑張っているってことじゃないですか。そう考えると“頑張れ!”って結構難しい言葉だなってずっと思っていて。でも、“頑張れ!”っていう言葉で背中を押される時がたくさんあることを自分も感じていたし、“その言葉が必要な時もあるだろうな”とも思っていたので、“どう伝えればいいんだろう?”とバランスを見ながら考えました。
TVアニメ『ブルバスター』の制作サイドの意向に沿わなければならない中で、“それじゃあ、“頑張れ!”ってどういうことなんだろう?”とかなり推敲を重ねたということですね。
無暗に“やればできるよ! 頑張れ!”みたいな感じにはしたくなくて。それは『ブルバスター』の登場人物が大人だからこそ、作品のテーマのひとつが社会人であるからこそ、自分自身も年代的にそう思えてきたからこそ、そういうふうになったと思うんです。なので、“あっけらかんとしていない”って言っていただけたのはすごく嬉しいです。