児玉隼人インタビュー 大注目の若手
トランペット奏者の今、これからに迫

トランペット奏者・児玉隼人。弱冠14歳ながら、第30回日本クラシック音楽コンクール第1位や、第23回大阪国際音楽コンクールでは全部門の最優秀者に与えられる文部科学大臣賞を受賞するなど、10歳以降で出場したコンクールでは全て1位を獲得している。

類まれな美しいトランペットの音色と共に、InstagramやYouTubeといったSNSでの活発な発信や、ジャンルや楽器を問わず自由な構成で開催するリサイタルなど、中学2年性ながら積極的な演奏活動を続けている。
児玉は、2023年9月18日(月・祝)、東京・第一生命ホールで開催される『難病 筋痛性脳脊髄炎 患者応援 タクティカートオーケストラ 名曲チャリティコンサート』に出演する。演奏するのはハイドンのトランペット協奏曲 変イ長調。トランペット奏者にとっては『名刺代わり』とも言える曲だが、今回が初の演奏となるという。
出演にあたり、演奏するハイドンへの思いなどとともに、トランペットや演奏活動への想い、今後の目標などを聞いた。
ーートランペットを始めたきっかけは何ですか?
5歳のクリスマスの時、朝起きたらコルネットが置いてあったんです。父も楽器を演奏するので、父の楽器を吹いてみたりしたことはあったんですが、このコルネットが初めての自分の楽器でした。
楽器を始めて半年くらい経った頃、釧路にたまたま来ていたトランペット奏者のアンドレ・アンリのコンサートを聴いたのですが、そこで衝撃を受けました。「この人と同じ職業につきたい」と思うようになって、そこから今まで、トランペット奏者が夢になっています。
ーー毎日更新されていたInstagramや、YouTubeなどのSNSの活動も沢山されていますね。
動画をアップし始める1年前、「毎日トランペットを吹く」と1年の目標を固めて、10月くらいまで毎日吹いていたんですけど、1日だけ、友達と遊び疲れて寝てしまった日があって、サボってしまったんです。それが悔しくて、次の年も同じ目標を立てたんですが、「毎日Instagramに投稿して全世界に発信して見られることで休めなくなるんじゃないか」と思って動画のアップを始めました。
でもやっていると、思ったより多くの人に見てもらえるようになって、その人たちのために続けようと思ったんです。小学校のころはまだ忙しく無かったのもあって、1年間が終わった後も毎日続けました。そうして喜んでいただく人がいると、演奏の依頼を受けることも増えました。自分で発信することで聞いてもらえて、それを認めてもらえると仕事に繋がったり、といいことばかりでした。
でもやっぱり生演奏で聞いてもらいたいですし、Instagramを通して「生で聴きたい」と思わせられたら、コンサートにも来てもらえると思ってます。中学校に入ってから忙しくなって投稿頻度は減りましたが、生演奏を聞いてもらうために、定期的にアップロードするのを心がけています。
ーー人に聞いていただく生演奏、という意味では、リサイタルも定期的に開催されていますね。
僕は先生についていないこともあって、練習する曲は自分がやりたい曲なんですが、そのためにコンサートで演奏したい曲が沢山増えていて、年に何回か、やりたい曲を全部詰め込んだリサイタルをやっています。
トランペットに編曲されていないものでも、ピアノの譜面さえあればC管で演奏できますし、持ち替えも、リサイタルの練習としてプログラムを通して練習はしますが、苦手ではありません。
曲は全部自分で決めていて、それが楽しいです。また、自分の好きな曲を人に聞いてもらうのも好きなんです。
ーー今年の4月より、北海道から関東へ出てこられたと伺いました。生活で変わった部分はありますか?
演奏の依頼を受けられる機会が多くなりました。これまでは北海道だったので、遠い場所は行くことが難しかったんですけど、関東に来てから色々なところに行けるようになって、演奏の機会が劇的に増えてます。
あとは、関東で出来ることも沢山しています。
行きたい演奏会にも行っていて、関東でも色々聞いてますが、金沢までラインハルト・フリードリヒの演奏会を聞きに行ったこともあります。近い訳ではないですけど、こちらに来たのもあってそういう演奏会へも行きやすくなったと思います。
レッスンも受けていますが、やっている曲によって、習いたい先生のところへ受けに行ったりしています。まだ中学生だから許されるのかもしれないですけど。
【リサイタル2023より】Rhapsody in Blue / George Gershwin / Trumpet:Hayato Kodama
ーー児玉さんが思う、トランペットの魅力とはなんですか?
オーケストラだと花形として、一番目立つ楽器でクライマックスを任せられることも多いですが、ソロだと、ピッコロ・トランペットやEs管、B管、C管など様々な種類の楽器があって、いろいろな音色を出せるのが魅力だと思いますし、自分も一番好きなところです。
ーー児玉さんが演奏される上で一番大事にしていることはなんですか?
音を一番大事にしています。音楽はどんなものでも良いかもしれないけれど、嫌な音・悪い音で演奏すると、聞いてる側にも入っていかないので、ロングトーンなど毎日の練習から、自分が出せる一番いい音を更新していくつもりで音を出しています。
ーー児玉さんが一番尊敬している奏者は誰ですか?
モーリス・アンドレです。好きな奏者という意味では、ゾンマーハウダー、ベルワルツ、フリードリヒなども好きですが、尊敬という意味ではアンドレですね。
アンドレの演奏は、トランペットじゃないような音が出るんです。演奏する側としては、真似したら潰れてしまうような、なんでこんな音が出せるのかわからないような音が聞こえてきます。
やっている曲もオーボエのための曲だったりと、高い音が必要な曲もありますが、信じられない音の高さまで余裕で、いい音で演奏するんです。全部の音がツボのど真ん中にいるというか、不安定なところが全くないんです。
児玉隼人
ーー今やってみたいことはなんですか?
クラシックももちろん好きなんですけど、J-POPのミュージシャンの方と一緒にやってみたいです。普段移動中は、クラシック音楽と同じくらい、あいみょんさんやRADWIMPSさんを聞くんですけど、そういった方々と演奏もしてみたいです。
クラシックだと、ソロもですが、オーケストラで吹いてみたいと思っています。
前はオーケストラ・スタディもさらっていて、オーケストラのパートを音源に合わせて吹いたりもしてます。今度チャイコフスキーの交響曲第5番を聴きに行くんですが、それまでに曲のトランペットパートは全てさらって行こうかなと思ったりしてます。
ーートランペットのソロに限らず色々な音楽を聞かれるんですね。
そうですね。作曲家だとチャイコフスキーや、ジョン・ウィリアムズが好きで、オーケストラもよく聴きに行っています。
色々なアイディアを取り入れていかないと、と思うところもあります。ちょっと前までは音源を真似したりしてたんですけど、最近は何も聞かないでも、どこからも盗まないでも、自分のやりたいことが出てきて演奏できるようになったんですけど、まだまだ引き出しが少ないと思うので、トランペットだけじゃなくて、色々な楽器の演奏を聞いたりして自分の幅を広げたく思っています。
ーー将来の夢を教えてください。
ソリストとしても吹きたいですが、オーケストラの奏者としても演奏したいと思っています。
何年かしたら海外に拠点を移して活動しようと思っていて、目標としてはそのまま、海外のオーケストラに入りたいです。両方やりたいからこそ、先にオーケストラをやっておくべきかな、と思っているところもありますが、弦楽器と一緒に演奏するのも楽しそうですし、やっぱり名曲が多いので、そういう曲を一緒に作る、その中で吹く、ということもしてみたいです。
その後、ソリストとして活動をしていって、世界的に活躍する奏者になりたいです。
『難病 筋痛性脳脊髄炎 患者応援 第2回名曲チャリティコンサート』
ーー今回演奏される、ハイドンのトランペット協奏曲の聴きどころや印象を教えてください。
ハイドンのトランペット協奏曲は、ファンファーレのような形しか演奏できなかった信号ラッパから、半音階が演奏可能なキートランペットが発明された時代に、発明した人がハイドンに頼んで書いてもらった、キートランペットの協奏曲としては初めて書かれた曲です。
またマスタークラスを聴講した時、その先生から聞いたのですが、キートランペット のための曲なのに、信号ラッパのファンファーレの形も入っていて、ハイドンのジョークもある曲です。
そういう古典的なものや、形式的なものは大事にしてあまり歌い過ぎないようにしながら、その中でもいい音を意識して音楽を作って行こうかな、と思っています。
実はハイドンを演奏するのは、ピアノ伴奏を入れても今回が初めてです。きっとこれからトランペット奏者として沢山ハイドンを演奏していくと思うんですが、その最初がオーケストラと一緒だということもなかなかないことだと思うので、すごい緊張しています。
でもそれと同時に、やっと出来る、という楽しみな気持ちで一杯です。
ーータクティカートオーケストラの印象はいかがですか?
若い方ばかりの、生き生きした演奏をされるオーケストラだと思いました。今まで、若い方ばかりの環境で演奏することが無かったので、同世代までは行かないとしても、近い年代の方とやる初めての機会なので楽しみです。
ーー最後に公演への意気込みをお聞かせください。
僕が持っている最大限のアイディアと音楽を詰め込んでハイドンを演奏したいと思っています。お客様にも、自分の魅力や、ハイドンの魅力、そしてトランペットの魅力をいっぱい聞いて楽しんでもらいたいです。

児玉隼人<プロフィール>
2009年、北海道釧路市生まれ。
5歳のクリスマスプレゼントにもらったコルネットをおもちゃ代わりに吹き始める。
8歳の頃から本格的にトランペットをはじめ、
これまでに、日本ジュニア管打楽器コンクール、日本クラシック音楽コンクール、下田国際音楽コンクール、大阪国際音楽コンクール、全てにおいて第1位及び大賞、グランプリを受賞。また小学6年生で開催した銀座ヤマハホールでのソロデビューリサイタルは大きな注目を集め様々なメディアでも取り上げられた。群馬交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、東京佼成ウインドオーケストラと共演。
これまでに元札幌交響楽団で現在札幌大谷大学客員教授の松田次史氏に師事。
2023年春からは拠点を関東に移し活躍の場を拡げている。神奈川県在住。

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