福士誠治、田中俊介、新原泰佑ら出演
NYゲイコミュニティの人々の愛と自
由を求める物語『インヘリタンス-継
承-』を前後篇6時間半で上演
病気やマイノリティに対する差別や偏見を乗り越えて力強く生きる人々を描く本作は、上演権獲得を巡りコンセプト・プレゼンとなったが、熊林が勝ち抜き、作者ロペスより日本初演の演出を託された。前後篇6時間半にわたる超大作。熊林はそこに、いま語られなくてはならない物語を見出す。
30代の青年エリック(福士誠治)と劇作家のトビー(田中俊介)、60代の不動産王ヘンリー(山路和弘)とそのパートナーのウォルター(篠井英介)の2組のカップルを中心に物語は展開する。ウォルターは「田舎の家をエリックに託す」と遺言して病死する。トビーの自伝的小説がヒットしてブロードウェイで上演されることになるが、その主役に抜擢された青年アダム(新原泰佑)の出現により、エリックとトビーの仲は破たんする。リベラルと保守の両極のようなエリックとヘンリーが、ふとしたことから心通わせて結婚することになるが、その選択により、エリックとジャスパー(柾木玲弥)ら古い友人たちとの間に溝ができる。ウォルターの遺言の「田舎の家」が、エイズで死期の近い男たちの看取りの家となっていることが分かる。トビーはやがてアダムにふられ、彼にそっくりの男娼レオ(新原泰佑 二役)を恋人にするが、レオはヘンリーとも関わりがあった…。トビーに捨てられHIVに感染し行き場をなくしていたレオをアダムとエリックが救う。彼を「田舎の家」に連れて行くと、そこには男たちに寄り添い続けたマーガレット(麻実れい)がいて、 この家で起こったことを語り始める……。
熊林弘高 メッセージ
”過去は死なない 過ぎ去りさえしない”ーW・フォークナー
「私とは何者なのか」-人は何らか自分自身を演出しています。が、自分の本質を理解しない限り、本当の意味で人と人は結びつくことは出来ないと思います。
『インヘリタンス-継承-』に「癒すか、燃やすか」というセリフが出てきます。自分を成り立たせているもの、つまり自分の過去に(たとえ痛みが伴おうとも)向き合うこと。そうしなければ次の一歩に踏み出せない、人と人が互いに理解しあうことは出来ない……
『インヘリタンス-継承-』の最後で語られる「過去、現在、未来が一つに繋がる」という大きなテーマにつながる一言です。
もうひとつの魅力は一義的な視点ではなく、多様な視点で語られていることです。
『インヘリタンス-継承-』で描かれている沢山の会話は、加害者や被害者、白人や黒人、リベラルと保守、さまざまな背景をもつ人々の言葉で紡がれます。次の世代に「継承」されるものも「正」とされることだけではありません。
“良い芸術作品は、質問を与えるだけだ”というピーター・ブルックの言葉があります。古びない作品は質問を投げかけるだけで、答えを与えてくれるものではない。この作品でも様々な視点を投げかけてくれる。それがすごく面白いと思います。
そして、俳優の皆さんにはこの作品を選択してくれた勇気に感謝しています。
初めましての方もお久しぶりの方もいますが、題材も6時間半という長さも相当な覚悟がいる作品です。
これから始まる創作が楽しみでなりません。(談)
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