L→R 中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)、菅原卓郎(Vo&Gu)、滝 善充(Gu)

L→R 中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)、菅原卓郎(Vo&Gu)、滝 善充(Gu)

【9mm Parabellum Bullet
インタビュー】
バンドが経験したあれこれを
素直に書いても大丈夫だと思った

特徴的なキメが2カ所あって、
その数を9回にした

デザイナーの河島遼太郎さんによる、ひまわりをあしらったジャケット写真も目を引きますね。

実際に「Brand New Day」を聴いてもらった上で考えていただきました。9mmで花をジャケットにするのは河島さんにとっても冒険だったらしいんですけど、8月のリリースにも映えるし、ひまわりが太陽を追っかける性質と曲の主人公が明るい場所に向かっていくさまを重ねたこのデザインは素敵ですよね。僕ららしさを出すために、屈折した波ガラスを組み合わせた感じも。

深い青色もバンドのイメージに合っています。『DEEP BLUE』(2019年9月発表のアルバム)、『カモメ e.p.』(2011年9月発表のEP)、『The World e.p.』(2007年5月発表のEP)といった過去作のジャケを彷彿させるところがあって。

あー、確かにそうですね。河島さんには冒険してもらえて、このポエティックなデザインになって良かったです。まさに“Brand New”(真新しい)なアプローチだと思う。

さっき触れた歌詞の《したたか雨》という言葉にも詩的な味わいがあったりと、今作はMVやアートワークとのマッチングもこれまで以上に光っている印象です。

9mm、デザイナーの河島さん、MVとアーティスト写真を撮っていただいた西槇太一さんのコンビネーションに今すごくぶれがなくて、表現する際にバンドの意志をしっかり汲み取ってもらえていますね。《したたか雨》の部分はメロディーのイントネーションに乗るワードにしたかったのと、発音していて気持ち良いところから自然に生まれました。井上陽水さん曰く“口に言葉がついている”感覚というのがあるらしくて、それに近い導き出し方なんじゃないかなと。忌野清志郎さんも似たようなことをおっしゃっていて、歌いたい言葉がイントネーションに合わなかったらメロディーを変えていたそうです。僕らの曲は母音もだいたい見えるくらいメロディーが強いので、歌詞をフィットさせるほうが多いんですけど。

《したたか雨》には造語っぽさと響きの良さがあって。それこそ井上陽水さんの「少年時代」で歌われている《風あざみ》《夏模様》《夢花火》の感じを思い出しました。

陽水さんにはすごく影響を受けているんです。この世にない言い回しが閃いたとしても、そうなっちゃったらそれでいいと思っていたりもするので。手順としては、Aメロ、Bメロ、サビのシーンを頭の中でざっくり描いてから具体的な歌詞を考えていくんですよ。「Brand New Day」だったら、最初は走っていて、雨が降って、明るく開ける…みたいなイメージ。そのあとにイントネーションに合う表現を探るんですけど、《したたか雨》のような言葉が浮かんだ時は本当にラッキーというか、プレゼントをもらった感じですね。

そういった味わい深さの一方、サビの《Gimme a brand new day》《僕にもひとつください》には肩肘を張らない感じも出ています。敬語だけど、どことなく“ちょうだい”とねだっているようなトーンじゃないですか?

ありますよね、その感じ(笑)。こうやって敬語に変えるの好きなんですよ。対人的なニュアンスが出て、誰かに向かって本音を言っている状態になるから。“ひとつ欲しいな”じゃなくて“ひとつください”だと、自分も含めたこの言葉を聴いている人に対しての響きになるでしょ? そうすると我に返って、冷静に気持ちを伝えられるんです。以前「ガラスの街のアリス」(2017年5月発表のアルバム『BABEL』収録曲)で《あの時やわらかく噛んだ唇は 赤い血の味でした》という歌詞を書いたんですけど、あれも急に敬語で歌うことによってすでに切り離した心情が示せていて、強い言葉にも聴こえると思います。

面白いですね。『TIGHTROPE』に収録されていた「One More Time」もそうでしたけど、こういうカジュアルなノリも9mmの魅力だなと感じます。

「One More Time」も自分としてはよくできた歌詞なのに、こういう話ってあまり訊かれないから、意外と聴く側は気づいてなかったりするんでしょうね。もっと注目してくれていいのにって思うんですけど(笑)。

あと、先日の生配信『カオスの百年』vol.24で、卓郎さんが「Brand New Day」に仕掛けをちょこちょこ入れたという話をされていましたよね?

特徴的なキメが2カ所あって、その数を9回にしたんです。“もうひとつ足せば全部で19回になるよ”とか話しながら、サウンドで細かい遊びを入れましたね。間奏ではギョワギョワギョワ〜!みたいな変な音をいっぱい使って、階段を上っているようで下っているような感じのモジュレーションを配置したり。

爽快感、疾走感、轟音感、浮遊感のバランスも絶妙です。

コードだけで言うと、実は「The Revolutionary」(2010年4月発表のアルバム『Revolutionary』表題曲)と出だしがほとんど同じなんですよ。そう気づいた段階で変えたくなるケースもあるんですけど、ちゃんと別の曲に聴こえますから、無理に修正しないでそのまま完成させました。浮遊感に関しては、僕が激しいサウンドに寄せて歌わないことによって生まれるものなのかなと思います。敬語を歌ってOKなのも、きっとこの声が大きいんでしょうね。

サウンド面における最近の好みなどはありますか?

このところマスタリングをイギリスのメトロポリス・スタジオのジョン・デイヴィスっていうエンジニアにお願いしているんですけど、彼が9mmのサウンドにすごく合っていて。激しくラウドな部分と聴きやすさを同時に引き出してくれるんですよね。最初は“ギターがでかすぎるかな?”と思ったりもしつつ、最後には“これがちょうど良かったんだ”と思えるような、派手でエナジーのある音が気に入ってます。

そして、カップリングにはライヴ音源18曲分を1トラックにまとめた「Live Track From“19th Anniversary Tour”23.4.9 At F.A.D YOKOHAMA」が収録されていて。

F.A.D YOKOHAMAは9mmが初めてライヴをやった場所だから、19周年の記念にこうやって音源が入るのもいいんじゃないかと思いました。F.A.Dのスタッフに演奏してほしい曲のリクエストも募ったんですよ。中盤の「荒地」「Vampiregirl」「Sleepwalk」「R.I.N.O.」あたりがそうですね。

この音源にもお客さんの歓声が入っていますけど、声出し解禁となったライヴの感触は?

やっぱり熱量が全然違いますね。F.A.Dのステージは声が聴こえる状況に感激してしまう時期だったけど、近頃はみんなに“歌ってくれ!”と迷わず言えるようになってきて、ちょっとずつライヴが戻ってきているんだなって思います。

F.A.Dでも演奏された「All We Need Is Summer Day」は、あえてコーラスのパートを盛大に入れたりと希望を込めて作られた曲なので、特に感慨深いですよね。

ファンのみんなが“やっと歌えるぞ!”という勢いでシンガロングしてくれるし、改めて作って良かったと感じますね。2023年の夏から、いよいよ真の姿で楽しめるようになったので。「One More Time」のサビとかも、僕が歌わなくていいんじゃないかってほど声を出してもらえるのが嬉しいです。

19周年の今って、どんな感情が一番大きいですか?

9mmでライヴができていて、しかもそれがすごくエネルギーにあふれていて嬉しいっていうのが素直な気持ちですね。困難が多かったコロナ禍を経てライヴができることの幸せを実感したんですけど、その喜びが今もずっと変わっていなくて。“バンドをやっていて楽しい!”みたいな心境が続いています。

9月19日には約9年振りの日本武道館でのライヴも決まっていますけど、“挑む”という感じとはまた違うのかなって。

それよりは“武道館をどうやって楽しもうか?”“どんな景色が見られるかな?”というワクワクのほうが強いです。キャパ的には大きな会場なんですけど、9mmをすごい近くに感じてもらえるようなライヴにしたくて。今いろいろ考えながら準備しているので、僕らの音楽が好きな人はぜひ来てください!

取材:田山雄士

シングル「Brand New Day」2023年8月9日発売 日本コロムビア
    • COCA-18138
    • ¥1,650(税込)

ライヴ情報

『9mm Parabellum Bullet 19th Anniversary』
8/09(水) 【LIVE】19th Anniversary Tour @東京・新代田FEVER
8/19(土) 【ONLINE】YouTube Live『カオスの百年』vol.25
9/09(土) 【LIVE】19th Anniversary Tour @東京・渋谷La.mama
9/19(火) 【LIVE】19th Anniversary Tour @東京・日本武道館
10/09(月) 【LIVE】19th Anniversary Tour @北海道・函館Club COCOA
10/19(木) 【ONLINE】YouTube Live『カオスの百年』vol.26
11/09(木) 【Acoustic LIVE】To be announced.
11/19(日) 【LIVE】19th Anniversary Tour @宮城・多賀城市文化センター 大ホール
12/09(土) 【Acoustic LIVE】To be announced.
12/19(火) 【LIVE】19th Anniversary Tour @東京・東京LIQUIDROOM
※開催終了公演は割愛

『19th Anniversary Tour〜Extra〜』
10/07(土) 北海道・帯広MEGA STONE

9mm Parabellum Bullet プロフィール

キューミリ パラベラム バレット:2004年3月横浜にて結成。2枚のミニアルバムをインディーズレーベルからリリースし、07年にDebut Disc「Discommunication e.p.」でメジャーデビュー。09年9月9日に初の日本武道館公演を開催し、結成10周年を迎えた14年には日本武道館2デイズ公演を成功させた。16年に自主レーベル”Sazanga Records”を立ち上げ、メジャーデビュー10周年を迎えた17年5月に7thアルバム『BABEL』リリース。18年には期間限定無料ダウンロードというバンド初の試みを行なった「キャリーオン」(映画『ニート・ニート・ニート』主題歌)と、9月に開催した『カオスの百年TOUR』会場限定シングルとして「21g/カルマの花環」を発表。バンド結成15thアニバーサリーイヤーとなった19年には、4月に東京・大阪にて野音フリーライヴ開催し、8枚目となるオリジナルアルバム『DEEP BLUE』をリリース。そして、23年に結成19周年イヤーを迎え、『9mm Parabellum Bullet 19th Anniversary』を開催。1月から12月までの9日、もしくは19日と“9”がつく日には、アコースティックライヴの合わせると15公演を実施し、9月19日には9年振りとなる日本武道館公演も開催。9mm Parabellum Bullet オフィシャルHP

「Brand New Day」MV

OKMusic編集部

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