Maki、ヤングスキニー、This is LAS
Tが競演  『PATE PATE NIGHT prese
nted by isai』レポート

PATE PATE NIGHT presented by isai

2023.6.12 LIQUIDROOM
映像制作などを行うプロデュースカンパニー「イサイ」が主催するライブイベント『PATE PATE NIGHT』。Maki、ヤングスキニー、そしてThis is LASTという彼らにゆかりのあるバンド3組が集った一夜は、最初から最後まで三者三様の輝きを放ちながら、リキッドルームを熱く揺らした。ここではそのイベントの模様をレポートする。

■Maki
Maki
トップバッターとして登場したのは名古屋発の3ピース、Maki。ライブを観るたびにその存在感と求心力が増し続けていることに驚かされるが、この日もいきなり場の空気をグッと引き締め、かつ一気にハイボルテージに持っていく圧巻のパフォーマンスを見せてくれた。「ライブハウス、全員で楽しもうぜ!」という山本響(Ba/Vo)の一言を合図に「ストレンジ」でスタートすると、フロアは瞬時に沸騰状態に。そのままの勢いで「シモツキ」を繰り出すと、響が宣言する。「俺たちMakiはヤングスキニーとはちょっと違う。This is LASTともちょっと違う。強くて優しいバンド、Makiです」。対バン相手も含めてイベント丸ごと高みに引っ張り上げるようなその言葉に、ロックバンドとしての強い意思が宿っている。
Maki
Maki
「ライブハウスはみんなで楽しく遊ぶ場所だってことを教えたいから」と「斜陽」を2回繰り返すと、2回目ではフロア一面のジャンプやシンガロングが発生。このお客さんの掴み方、知っている人も知らない人もまとめて巻き込んでいくライブ猛者ぶりこそMakiだ。5月にリリースした新曲「pulse」のゴリっとしたビートでオーディエンスを踊らせると、ライブは怒涛の勢いで後半戦に突入。エモーショナルなメロディに「オーオー」とお客さんの歌声も広がった「虎」、幾本もの手が揺れた「Lucky」……1曲ごとに多彩な表情を見せながら、お客さんと一緒になって誰よりもMakiの3人がライブを楽しんでいることが伝わってくる。佳大(Gt)がイベントの名前の由来(主催者のお子さんが「走れ」を「パテ」と言うことからだそう)を明かし、響は「走ることもすげえ大事だと思うけど、世の中で一番大事なことって寄り道だと思う。夢に向かって走っている中で、寄り道の時間を、ライブハウスにいて楽しむ時間を、一生大事にしてほしい」と叫ぶ。「平凡の愛し方」でライブハウスで音を鳴らし続けるロックバンドとしての矜持を掲げると、ラストは「憧憬へ」。最後の大合唱を巻き起こし、熱い余韻を残して3人はステージを降りていった。
Maki

■ヤングスキニー
ヤングスキニー
続いてステージに立ったのはヤングスキニーだ。SEにのってメンバーが順番に登場し、最後にかやゆー(Vo/Gt)が姿を表すとひときわ大きな歓声と拍手が起こる。今の彼らに注がれる期待感がよくわかる。そしてかき鳴らされるギターと力いっぱい打ち鳴らされるドラム。1曲目は「ヒモと愛」だ。とたんにフロアからは「待ってました」とばかりに大音量の手拍子。前のめりな演奏とどこか切ないかやゆーの歌声が、問答無用に感情をかき立てていく。しおん(Dr)が「調子どうですか、リキッド!」と挨拶をして突入したのは新曲「愛の乾燥機」。ゴンザレス(Gt)の弾くリフが不安定な心を鼓舞し、りょうと(Ba)のベースラインが曲を前へ前へと押し進める。ちょっと不安定で、でも鋭い、ヤングスキニーのバンドサウンドはやっぱり独特で、どうしようもなく心を揺さぶる。手拍子に後押しされて「ゴミ人間、俺」を披露すると、ギターを置いたかやゆーがアカペラで歌い始める。そこにシンセのリフが入ってきて、グルーヴィなサウンドが展開していく。「コインランドリー」だ。絶妙な韻を踏んだ歌詞を呟くように歌うかやゆー。さっきまでテンション高く盛り上がっていたオーディエンスもじっくりと聴き入っている。
ヤングスキニー
ヤングスキニー
しおんのドラムソロを挟んで「美談」で沸々と溢れ出るような思いを表現すると、ここでしおんが改めて自己紹介。「せっかくこういう対バンイベントでなかなか出会えないバンドを観れるから、いろんなライブの楽しみ方を知ってもらいたい。僕たちは僕たちなりの音楽を伝えられたらいいなって思ってライブしてます」とメッセージを伝えると、ワン・ツー!のカウントから「本当はね、」に入っていく。優しいメロディとリズムを受けて穏やかな手拍子がフロアに広がる。確かに先ほどのMakiとはまったく違うが、確かにヤングスキニーらしいやり方で、いつの間にか会場にいる全員を巻き込んでいる。拳を突き上げジャンプする「らしく」でさらに一体感を高めると、「最後に僕たちなりの応援ソングを」というかやユーの言葉とともに名曲「憂鬱とバイト」。かやゆーがマイクをフロアに向けると、堰を切ったように大合唱が生み出される。世代を代表しシーンの先頭を走るバンドにふさわしい鮮烈なライブだった。
ヤングスキニー

■This is LAST
This is LAST
そしてイベントのトリを務めるThis is LASTの出番だ。SEが鳴り出した瞬間の拍手と歓声が、今彼らに注がれる熱視線の証。その熱を受け止めるように菊池陽報(Vo/Gt)は「よろしくね」と短く挨拶し、いきなり「もういいの?」を投下する。小気味いいリズムとギターリフに手拍子で応えるオーディエンス。フロアからの合いの手もバッチリ決まった「恋愛凡人は踊らない」を経てさらにポップな「カスミソウ」に突入する頃には、リキッドルームは完全に彼らの土俵になっていた。最後はドラムの鹿又輝直のもとに集まってキメると、ここでリリースされたばかりの新曲「おやすみ」が披露される。突き抜けるようなギターのサウンドが強烈に耳に残るイントロから歌に入った瞬間にバンドの背中を押すような手拍子がリキッドルームを包み込む。ぐいぐいと前進するバンドサウンドのパワー、そしてそれをさらに引っ張る陽報の歌。This is LASTというバンドの今の強靭な「等身大」が、この曲には詰まっていると思う。
This is LAST
「最高にかっこいい日にしたいと思います」。そんな決意表明から演奏されたのは「#情とは」。じんわりと心の隅々にまで届くような大きさをもったメロディとさまざまな感情を豊かに表現するボーカルがどうしようもなく涙腺を刺激する。楽しいだけじゃない、激しいだけじゃない、泣けるだけでもない、全方位で進化し続けるThis is LASTだが、やはりこの切ない情感こそが彼らの真骨頂だ。MVやバンドロゴのデザインなどを一緒に作ってきたイサイに対する感謝を口にしつつ「最高のライブします」と宣言すると、ライブはいよいよクライマックスに突入。遠くへ遠くへと音と声を投げかけるような「ディアマイ」で一気に風景を押し広げてみせると、力強いリフから「病んでるくらいがちょうどいいね」でフロアはさらなる熱狂を生み出していく。「いこうか!」とダンスビートが炸裂するサビを繰り出せば完全に最高潮だ。
This is LAST
そのムードのままキラーチューン「オムライス」へ。軽快なビートとキャッチーなギター、そしてとてもリアルな歌詞が瞬く間にオーディエンスを巻き込み、〈「君が作ったオムライスかな」〉の叫び声をリキッドルーム中に鳴り響かせる。「最高の夜をありがとうございます!」。陽報は最後にそう語りかけたが、まさにその言葉どおりの一夜を、This is LASTが鮮やかに締めくくった。
This is LAST

取材・文=小川智宏 撮影=Tatsuya Kawasaki

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